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異世界八景  作者: 楠羽毛
海の世界
126/206

表情

「炉にね、樹を投げ込むの」

「樹を?」

「そう。なんでかは知らない。昔から、そうなってるんだってさ」

「昔って……、」

「知らない!」

 ハギアは落ち着かなげに指を動かした。それから、ぱっと立ち上がる。

「ねえ、フグスが、夜になったらまた来てってさ。一緒にくる?」

「いいけど……、ねえ」

 朱里は、ちょっと目を伏せて、それからぎゅっと眉を寄せて顔をあげた。

「あの人と、……地下に帰るの? だったら……」

「絶対やだ!」

 ハギアは明確にこたえて、ぎゅっと歯を噛みしめるようなしぐさをした。

 髪がぴんと張る。それから、唇が動くにつれゆるんでいく。手もちぶさたになったのか、右手で樹の幹をさわりながら。

「わたし、ぜったい戻らない。どっか行く」

「どっかって?」

「知らない! どっか!」

 右手の指が、しだいに強くなって、ぐしゃりと緑の葉をつぶす。

「ねえ、……わたし、さ」

 また、歯を噛みしめるようなしぐさ。

 笑っているのかもしれない。

「……朱里には、感謝してるの。ほんとうに。」

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