短命種
「……フグスはね、ばかなの」
「え?」
「あたしより、ちっちゃいくせに。……ちょっと、はやく生まれたからってさ」
ふたたび、林のなか。
ぶつくさと、大股にあるきながら、ハギアは早口で。
ぐるぐると、右手でつまんだ髪のひと房を、軽く振り回しながら。
「……あの人、年上なの?」
ハギアのいうとおり、適応役を飲む前のハギアよりも、体は小さいようだったが。男女差があるのかもしれない。
「三か月! たったみつきで! 大人、だなんて」
「ふうん」
朱里は、ずんずん歩いていくハギアの後ろを、軽く息を切らしながらついていく。
「ねえ、……何歳、なの?」
「え?」
「だから。……ええと、生まれて、どれだけたつの? ふたりとも」
「28か月! 私!」
ああ、と朱里は眉をしかめた。そういえば、そうだった。
つい、忘れかけてしまう。
あまりに、……人間らしいから。
「だからさあ、……お祭りに、まぜてもらえなかったんだよね」
「おまつり?」
小走りでハギアに並んで、横から顔を見上げる。異種族の表情はよくわからない。ただ、決然と前を睨んでいる、ようだ。
「うん。あなたのところには、ないの?」
「あるけど……」
どうも、話がかみ合わない。朱里はかるくハギアの背中をたたいて、足を止めた。
「ねえ、」
目の前にあった太い樹に背中をあずけて、大きな声で。
「ちょっと休もうよ! ゆっくり話そう」
ハギアは立ち止まって、ようやく、こちらをみた。
ぴんと張っていた髪の毛が、少しゆるむ。
「うん、」
ハギアは、朱里の前にぺたんと座りこんだ。
そうして、ふたりは話し始めた。




