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異世界八景  作者: 楠羽毛
海の世界
118/206

見知らぬ体

 ふたたび、数日後──、



(ねえ、大丈夫?)

 だれかの声が、ハギアの耳にぐいぐいと染み込んで来る。

 わんわんと反響して、脳にひびく。

(ずっと起きないけど……ていうか、これ、……本当に。)

 女のようだが、知り合いの誰の声にも似ていない。

(……大丈夫、かなあ?)

 声が、どんどん大きくなって、


 暗転。



 ず、ずず、と体から伸びたなにかが、床を覆っている。

 髪だ、と気づくのに、すこし時間がかかった。

 黒髪だ。

 つぎに、黒が視えているのに、気づく。


 明るい。


 こんな強い光は、知らない。ハギアの生まれたところは、いつも闇ばかりで、ボンヤリとしていて、たいまつの光は直視するものではなく、目ではなく耳で、ものをみるのがあたりまえで──、

 がば、と起きる。

 ぱちぱちと、目のあたりが勝手にうごいて、視界が点滅する。つぎつぎに光がさしこんできて、パニックになりかける。目のまえに、なにか膜のようなものがある。

「起きたの?」

 声。

 だれかの。

 もう一度、視界が明滅する。

 知らない動作なのに違和感がない。体の感覚が違う。自分じゃないみたいだ。

「……ねえ、大丈夫?」

 目の前に、誰かがいた。それが、見えた。目で。

 人間。そう思う。確信はない。やけに背が高く、胴は太いわりに足が細くて、目も鼻も、ずいぶんへんな形。耳は丸くて、着ているものも、なんだか──、

「きこえてる?」

 女が、そういった。

 右手を、ハギアの目の前でふらふらと動かしながら。

 ハギアは、反射的に顔をうごかして、頭上を視た。


 空は、青く晴れ渡っていた。

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