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投薬
それから二日、朱里はその女とすごした。女はときおりうめいて、口からなにか言葉を発することがあった。ほとんどは意味のないうわごとのようだったが、何度か翻訳機が反応した。
熱い、といっているようだった。
水を与えたが、ほとんど飲まなかった。肌がただれたようになって、少しずつ動かなくなっていった。うめき声もしなくなり、わずかに身をふるわせるだけになった。
日に数度、遠吠えのような音を響かせたが、もう立ち上がることはなかった。
そうして、二度目の朝──、
朱里は、鞄から小さな四角いケースを取り出し、二錠ある薬のうちひとつぶを、女の喉におしこんだ。