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異世界八景  作者: 楠羽毛
海の世界
107/206

未来の食事

 夜──、


 朱里は、海岸から少し奥にはいったところに、テントをたてて、寝っ転がっていた。

 昼間、海に入ったせいか、かすかな波の揺れのようなものを感じる。

 腹が減っている。

 果実か、食べられそうな草でもないかと探したが、見つからない。いや、その気になれば苔でも食べられるのかもしれないが──、

「うーん」

 白い丸薬を、指先でつまんで睨む。

 

 ──ただの錠剤に見えるでしょう。


 デイジー。ひどく痩せた、背の高い女の声。耳に残っている。


 ──なんとこれ一個飲み込むと、胃壁にとりついて圧縮栄養をちょっとずつ供給するので、まる一週間は食事不要になるんです。


 できれば、飲みたくはない。が、……

(普通の食料もらってくればよかったなぁ)

 まあ、いまさら言っても詮ないことだ。

 空をみる。テントといっても、地球のそれとはちがう。壁も天井も透明。風もすどおし。いや、そのように感じる。実際には、気温と湿度は厳密に調整されて、快適にすごせるようになっている。

 床もそう。地面に直接寝ているようだが、肩や背中は、柔らかいマットレスに包まれたようにリラックスしている。パジャマがわりに着替えたスーツのせいかもしれない。

「なんっか、……気にいらないんだよねえ」

 デイジーベルの技術。いや、その使い方、か。

 カセイジンは何も言わない。テントの中にはいるはずだが、見えない。

 いや、カセイジンは、朱里に見せるためにつくられた立体映像なのだから、見えないということは存在しないということになるのか。

 もう一度、ため息。

  

 あした、魚をとろう。どうにかして網をつくるか──何か、方法はあるだろう。


 目をとじた。

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