未来の食事
夜──、
朱里は、海岸から少し奥にはいったところに、テントをたてて、寝っ転がっていた。
昼間、海に入ったせいか、かすかな波の揺れのようなものを感じる。
腹が減っている。
果実か、食べられそうな草でもないかと探したが、見つからない。いや、その気になれば苔でも食べられるのかもしれないが──、
「うーん」
白い丸薬を、指先でつまんで睨む。
──ただの錠剤に見えるでしょう。
デイジー。ひどく痩せた、背の高い女の声。耳に残っている。
──なんとこれ一個飲み込むと、胃壁にとりついて圧縮栄養をちょっとずつ供給するので、まる一週間は食事不要になるんです。
できれば、飲みたくはない。が、……
(普通の食料もらってくればよかったなぁ)
まあ、いまさら言っても詮ないことだ。
空をみる。テントといっても、地球のそれとはちがう。壁も天井も透明。風もすどおし。いや、そのように感じる。実際には、気温と湿度は厳密に調整されて、快適にすごせるようになっている。
床もそう。地面に直接寝ているようだが、肩や背中は、柔らかいマットレスに包まれたようにリラックスしている。パジャマがわりに着替えたスーツのせいかもしれない。
「なんっか、……気にいらないんだよねえ」
デイジーベルの技術。いや、その使い方、か。
カセイジンは何も言わない。テントの中にはいるはずだが、見えない。
いや、カセイジンは、朱里に見せるためにつくられた立体映像なのだから、見えないということは存在しないということになるのか。
もう一度、ため息。
あした、魚をとろう。どうにかして網をつくるか──何か、方法はあるだろう。
目をとじた。