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異世界八景  作者: 楠羽毛
幕間
104/206

デイジーの並行冒険ガイド③ 箱舟の世界

 報告です。報告です。

 こちらはデイジー。船長代理。


 知的生物の存在する平行世界について、報告します。

 探査地点の中心は、現地で二番目に大きな大陸の南西部にある盆地です。盆地の中心を南北に通る大河は、現地人たちに「べレオ」と呼ばれています。

 この盆地には、時期によって変態して水中生活に適応する、べレオ人という知的生物がいます。べレオ人は、もともとは樹上で生活する哺乳類だったようですが、定期的な氾濫する河のほとりで生活するうちに、水中生活の能力を身につけたようです。

 さて、進化上、べレオ人の先祖に近いと思われるのが、猿人とよばれる人種です。猿人は森の中に集落をつくり、独自の文明を築いています。猿人は長らく、蜘蛛人と呼ばれる巨大な体をした人種と争ってきましたが、近年は猿人が優勢であり、蜘蛛人たちはべレオ周辺から駆逐されています。

 大陸の北方には、巨大な森林地帯があり、およそ一万年ほど前の文明のあとが遺っています。この文明は、べレオ人と猿人の共通の祖先が築いたもので、蜘蛛人に滅ぼされるまでは、大陸の支配的地位にあったと思われます。

 さて、べレオ周辺では猿人にその地位をゆずった蜘蛛人ですが、東方では、いまだに健在です。リ=リリとよばれる広大な首都に、およそ2,000人ほどの蜘蛛人と、その家畜が住んでいます。

 蜘蛛人は建築術にすぐれ、リ=リリにも、地上100メートルをこえる巨大な建造物が多数あります。リ=リリの中心部には、何十世代にもわたって増築を続けてきた大きなドーム状の建物があります。行政府と、それに関わる蜘蛛人たちの生活の場であり、一生ドームから出ずに生活する蜘蛛人も多いようです。

 リ=リリとべレオのあいだには巨大な峡谷があり、ここには蜘蛛人の要塞があります。指揮官である蜘蛛人と、戦士階級である蜂人が、ここで長いあいだ猿人との戦いを続けています。

 猿人はおもに森林地帯で生活していますが、近年は、地下に街を築くことも多いようです。もともと、猿人の集落には、ほかの集落へとつながる地下通路がつくられることがありましたが、蜘蛛人との戦いのなかで地下施設を拡張するうち、地上の集落群と地下のトンネル網の二重構造が形成されていきました。

 猿人の文明は、もともと、いくつもの集落が互いにゆるいつながりをもって存在しており、蜘蛛人のように巨大な国家を形成することはなかったのですが、近年、多くの集落がトンネルでつながるにつれ、社会構造が変化し、組織化されてきているようです。現在、リーダーとなっているのはジュジュという女性の猿人で、蜘蛛人との戦争の総指揮は彼女がとっています。

 さて、べレオの源流は、大陸の中心部にある山脈地帯で、ここからは三本の大河が流れ出しています。

 なかでも最も大きいのが、猿人がジャルバナと呼ぶ川です。猿人のあいだでは、べレオ周辺文明はジャルバナのほとりで生まれたとされており、聖地のように扱われていますが、自然環境のきびしさから、実際に訪れる猿人はほとんどおらず、現在の世代ではジュジュが唯一、ジャルバナにたどりついたと言われています。

 べレオからジャルバナに向かう道には、独自の進化をとげた植物類が多数生息する湿地帯や、幼少期以外のほとんどの期間を砂中で生活する特殊な鳥類など、興味深いものが色々あるのですが、それはまたの機会にいたしましょう。


 いつか、ご自身の足で、この道を歩む日がこられますように。

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