プロローグ~産まれ落ちたその理由~
ゆったりだるだると続けていけたらと思っています。連載ははじめてなので色々勝手がわかってませんが楽しんでいただけたら幸いです。
此処は惑星テラ、テラは人間種をはじめとする多くの種族が暮らす星だった。多くの種族は星の所有権を得るため、日々争い、傷つき、そして死んでいった。そして星歴8000年を迎えた水の月の1日、とある愚者の行動により、悲しい怪物が生まれてしまった。
これは、そんな過去を持つ狐の、終わらない日常譚である。
~S.C.8000 水の月 1日~
妖狐族の長、オロは歓喜に満ち溢れていた。愚かな人族を拉致し、無理矢理種を奪い続けて数年、遂に子を宿すことに成功したからだった。
「くふふふ……これでこの星は妾のものだ……くふふふ……ふははははは‼」
オロもこの星にすむ種族の例に漏れず星を我が物にせんと企む一人であった。
話は過去に遡る。星歴7985年、長となったオロは星の支配者になるために、自分ではなく自分が自由にできる存在を最強に仕立てあげ、その存在を奪うことを考え付いた。そうして実行したのが、蟲毒の呪法である。
あらゆる種族の男を拉致し、殺し合わせ、生き残った一人が息も絶え絶えなところに降り立ち、
「くふふふ……此度の生き残りは貴様か、よく生き残ったの、もうじき死ぬだろうが餞別だ、妾が地獄の快楽を教えてやろう……」
と、その生き残りの種を吸い付くすといったことを孕むまで行ったのだ。
すべては強い子を孕むため、ひいては強い子に成り代わる為に幾千幾万の他種族を殺していったのである。
そうして十数年、時は満ちたとばかりに今、オロは禁忌に手を出した。その禁忌とは反転。祝福を呪いとすることで、その効果を増大させる呪法であり、その対象は自分の胎内にいる、子供であった。
「星の支配者……なんとも胸踊る響きよ、では、早速……禁呪"不滅ナルモノ"!!」
ここでオロは二つの間違いをしていたことに生涯気づくことはなかった。一つは"不滅ナルモノ"の効果である。そしてもう一つは……
「なんだ?胎が急に大きくっ………?!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
"自分"が星の支配者になれると思っていたことである。
母親の胎を引き裂き、産まれてしまった彼女が、自分に名を付けることで、この物語は始まるのであった……。
~同刻、??視点~
此処は何処だろう……?それが私の最初の疑問だった。安心するような、恐ろしいようなあの暗闇にいたときに何かが自分の中に入り込んだことは理解している。
それが入り込んだ瞬間、私はそれを理解できるまでに成長していた。それが本来あり得ないことも、自分が母親を引き裂いて外に出たことも。気づいてしまった。理解してしまった。自身の現状を、そして自身が犯した禁忌を。
┌
―現段階ステータス―
-名前:??- 年齢:無し 種族:妖狐族
保有能力・不滅ナルモノ:死の概念を失う呪い。同時に常に体は最適な状態に保たれる。解呪不可。
・親殺し:親を殺す禁忌を犯した事の証。子を成すことが できなくなる。自分が末代。
・見送ルモノ:看取られる事の無くなる呪い。親殺しの結果。最後は一人。
・自己矛盾:矛盾する概念が対立したとき、自分に有利な概念のみが適応される。生きながら死んでいる―――事の証。
・定メルモノ:一定の空間を自らの理に書き換える事ができる。あり得ない存在である証。
・識ルモノ:あらゆる事柄を理解できる。急激に成長した証。
└
つまり、私は親に呪いを掛けられて、その呪いのお陰で親を殺して外に出たと、その呪いのせいで、私は母親を失い、母親のせいで生を失ったと。そう思うと自然と笑みが漏れてきた。楽しい訳ではない。悲しくて、滑稽で、そう、嗤ってしまうのだった。
とんでもない怪物が産まれちゃいましたね、もうちっとシリアスが続くと思います。次回、「狐の名付け」をお楽しみに!
おまけ
オロ「これで妾の出番終わり?」
作者「終わりです。舞台設定くらいは説明させてあげてもいいですよ」
オロ「世知辛い……」
作者「さて星歴ですがこれは各地にある石碑が星の記憶を読み取って表示しています。つまりテラが出来てからちょうど8000年ということですね。」
オロ「1年は7ヶ月で1ヶ月は45日だな、水の月から始まり金の月、火の月、木の月、土の月、天の月、海の月だ」
作者「では取り敢えず今回はここまでですね。オロの出番は終わりです。」
オロ「そんなー(´・ω・`)」
作者「喜んでくださいオロ、あなたの絵を描いてきましたよ」
オロ「ありがとなのだー!!……大分昔の妾じゃなこれ」