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理想の殺人鬼  作者: バケガドウ
第一章「歴史的殺人鬼」
4/18

part2

同日 東京・千代田区 


歴史的殺人鬼の情報が錯綜する渦中、あるビルでも混乱が生じていた。

「IKのホームページにまだ犯行声明が出ていないのか!」

大音量の怒声がビル内に響き渡る。人々は忙しなく走り回っていた。「廊下を走るな」と学校で叱られそうなまでに全力疾走だ。

ここは二〇〇五年に建造されたビル。そして、こんな早朝から騒がしいビルに入っている組織の名前は、日本超能力監視局だ。


超能力が当たり前になったこの世界でも、超能力者に警戒心を抱く者がいる。超能力を保持していない市民らだ。彼らは、超能力者が自分らに危害を加えるのではないか、と不安がっているのだ。

そんな一般市民の為、超能力者が利己的に超能力を使用しないよう監視する組織・「超能力監視局」が、「超能力宣言」の翌年の二〇〇二年に発足された。

そして二〇〇五年には、日本にも支部が置かれ、日本超能力監視局が設立された。

超能力者の暴走抑制をスローガンに掲げている監視局にとって、最も警戒している対象がIKであることは、自然な成り行きであろう。

その要注意人物が、今年五回目の犯行を起こしたのだ。局内の空気は全てスタッフの溜息ではないのかと思われるほど、ピリピリした雰囲気が漂っている。


張り詰めたビル内に、山となって積み上げられた書類の前で、頭を抱える若い女性がいた。

「松本。会見用の書類は仕上がってないのか」

「まだ…です。すぐに終わらせます…」

「チッ。さっさとしろ」

上司の叱責を受け、女性はさらに肩を落とした。

本名、松本志月。来月の十三日に二十三歳になる彼女は、去年の四月から監視局の広報課に加わった新米局員だ。

志月自身超能力を持っていないが、日本一偏差値が高い大学・東郡大学を卒業した、頭の切れる女性だ。大学では超能力学を専攻し、優秀な成績を収めた。その才が認められ、日本屈指の監視局に採用されたのだ。

しかし、志月が超能力の世界に踏み込んだのには、「ただ興味があったから」以外に他に理由がある。それも、十年以上の因縁が。

そのためにも、たとえ過酷な仕事にも耐えなければいけない。

とはいえ、なんとも仕事熱心なIKの今年五回目の殺人により緊急出勤が命じられ、それでいて早朝に怒鳴りつけられる始末だ。志月の精神はあと数秒で崩れ落ちそうになる。

「くぅぅぅ。これ絶対残業だ……」

志月は弱音を吐きながら、自分の業務に戻った。

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