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2052/02/23 日本
「おはようございます。二月二十三日、朝のニュースをお伝えします。
昨夜未明、ロシアのシベリアのダニール民間軍事施設が襲撃を受け、取締役のダニール氏が殺害されました。ロシア政府の声明によりますと、国際指名手配されているIKの犯行が高いとのことです。IKの犠牲者は今年で早くも五人目となり、国内でも犯行が行われるかと懸念されています。新しい情報が入り次第、お伝えします」
某公共放送局の朝の物騒なトップニュースが、日本全土のテレビ画面を独占した。また、SNS上にも多くの書き込みが殺到していた。
「また、IKかよ。怖っ」
「どうせIKは目立ちたがり屋の年寄りだろwww」
「殺されたダニールって、生物兵器に関わってたって本当?」
「デマ乙。信者は早く氏ね」
「IK早く捕まってほしい」
「IK、害悪」
「IKって、何者(笑)???」
西暦二〇五二年。世界では科学の発達と共に、超能力の存在も認められている。
二〇世紀まで、超能力はフィクションでしかなかった。だが二十一世紀が近づくにつれて、超能力が次第に認知されてゆき、二〇〇一年、ついに国連が超能力の存在を公式に認めた。後に、「超能力宣言」と呼ばれる出来事である。
その際、超能力と同じく存在が認められたのが、「電人」という人種だ。
「電人」とは、身体の特定の部位に膨大な電気を流し込むことで、電気エネルギーを生命エネルギーとして体内に貯蔵し、特異な長寿を得た者のことである。その上、戦闘能力も高く、常人と比べようがない。
科学技術が発達した現在でも、「電人」について分かっていないことが多々存在する。というより、ほとんどが謎だ。そもそも、「電人」の生まれ方すら漠然としている。
電人は現在、世界中に十五人。その中でも、どんな辺境で暮らしている人でも知っている、有名な電人がいる。その者の名はIK。最も長く生きている電人であり、世界的な殺人鬼だ。
ニューヨークに拠点を持つ、民間の超能力格付け会社「アビリティ」は、毎年四月に世界各地の超能力者をランク付けし、五百位までを「超能力ランキング」として公開している。
今までの戦績を基に超能力者を査定していて、現在最も信憑性のある超能力者の戦闘力の判断材料になっている。
今年五十周年を記念するこの「超能力ランキング」で、IKは一位の座に居座り続けている。
IKは、自身をそう名乗り始めた14~15世紀から数多の人間を殺してきた。インターネットが普及してからさらに動きを活発化させ、自身のホームページ上で、いつ誰を殺したのかなどという「犯行声明」を上げている。
IKの犠牲者のほとんどが、政治家、石油王、軍幹部といった世界トップクラスの権力者だ。そのためIKが犯行に及ぶと、その度に大々的に報道される。
加えて、数々の戦争にも関与してきたとも言われている。先の世界大戦でも、某国家の指導者を殺し混乱へと導いた戦犯として憎まれている。
それゆえ、世界各国がIKを危険視して、ただ今、億単位の懸賞金が懸けられてる国際指名手配犯と成り果ててしまった。
国際的なネガティブキャンペーンの甲斐もあってか、世論はIK反対派が優勢だ。だが一方で、IKの行動を褒め称える者もちらほら存在する。
明白な根拠がある訳ではないのだが、IKが殺害した権力者はいずれも汚職の噂が囁かれている人物だ。
また、IKは殺害犯行時、標的以外の取り巻きの兵士を絶対に殺すことはない。
「無用な殺生を行わず、悪を裁く」
巷では、IKを「救世主」と信仰する「IK信者」も現れ、IKの行動の正当性を訴えている。勿論、政府は聞く耳なんて持ち合わせていない。
そんな信者らは、IKに敬意を払って、Ideal Killer・「理想の殺人鬼」と呼んでいる。