第94話
召喚魔法の練習を始めて結構時間が経った。やり始める時は、夕食の後で【18:00】だったが、現在の時刻は【20:30】になっている。別に明日は、一日中家に居るつもりだからもう少しだけ練習する事にした。
「大分、この感覚にも慣れて来たぞ」
「俺の方も、結構感覚掴めてきたがするよ。これ上手く使えば戦闘の時とかに楽になるかも知れないな」
「そうだな……まあ、外での戦闘だったら我が竜の姿で蹴散らせば一瞬だろうがな!」
確かに今は人の姿をしているドラグノフだが、竜の姿になれば小国であれで一瞬にして火の海に沈めれるだろう。まあ、国を相手にする気は今の所無いけど
「さてと、大体感覚も掴めたし一回だけドラグノフの事を考えずに召喚魔法を使ってみてみるか」
「おお、それは面白そうだな」
ドラグノフが俺の後ろの移動したのを確認した俺は、何も考えずに召喚魔法を使った。すると、いきなり大量のMPを持って行かれた。ドラグノフを召喚する時は、少しの量大体50程度だったのが、いま減ったのは1000も行き成り減ってしまった。
「おぉっ、行き成りMPが1000も減ったけど何が出てくるんだ?」
「我の20倍もMPを消費されるとは、どんな者が出てくるのか楽しみだな」
俺とドラグノフは、召喚陣から何が出てくるのか一緒に見ていると急に光が強くなった。そして、その光が収まって行くと小さな影が現れた。
「じゃじゃ~ん、呼ばれ出て来たのはアーリンちゃんで~す!」
何と、召喚陣から出て来たのは妖精の王様である。アーリン様が出て来た。
「えっと、アーリン様。そんな、感じの人でしたっけ?」
「……久しぶりにクリフ君に会うから、ちょっとだけてんしテンション高かっただけよ。それよりも、ドラグノフ。何で一人だけクリフ君と楽しくしてるのよ!」
「何だアーリンか、お主も来たのか?」
「来たのか? じゃないわよ。他の神も怒ってたわよ。抜け駆けしたドラグノフに制裁を加える会ってのも出来てるし」
……なんだよ。その変な名前の会、というか他の神様達って今加護を授けてくれてる神様の他にも居るのかな?
「別に我は、抜け駆けなどしておらんぞ? 抜け駆けというなら、アーリンこそ一番最初にクリフと会ってるではないか、それに他の神達もクリフに加護を授けているようだしな」
「それとこれとは別よ。私なんて、時間が限られていたから少し会って直ぐに別れたのよ。それなのに貴方はずっと一緒に居て一緒にゲームなんかりしてるじゃない。それに、クリフ君の手料理も食べてるし!」
「ああ、クリフの料理は上手かったぞ、あの小さい粒をあんなに美味しく出来るとは我知らなかったしな」
「当然よ。クリフ君は、前世の全ての知識を持ってるのよ? 料理が不味いわけないわよ!」
その後、言い合いが続きヒートアップして行くのを何とか止めた俺は、未だ怒っているアーリン様に「そう言えば、ここに居ても良いんですか?」と聞いた。
「ええ、もう殆どの事をルシアちゃんに任せたから私が居なくても妖精の国は安全、だから私もあそこから出て来ても良くなったの」
「そうなんですか、ってそう言えば召喚に応じてくれたって事は俺と契約してくれるんですか?」
「勿論よ。ドラグノフだけが良い思いさせられないじゃない、それにクリフ君と生活するのは楽しそうだしね」
「そうですか、それじゃ契約魔法使いますね」
そう聞くと「分かったわ」とアーリン様が返事を返してくれたので契約魔法でアーリン様の希望通り、俺の従者という立場で契約した。
「ふふ~ん、これで私はドラグノフより上の存在になったわよ」
「ぬっ? どういうことだ?」
「だって、私はクリフ君の【従者】でドラグノフは【従魔】でしょ? 私は、人として契約して貴方は魔物として契約してる。と言う事は、私のが上よ。いや~、クリフ君凄いね。この世で従者に【妖精王】を仕えさせて、従魔に【竜王】を使役してるなんて」
そう言ったアーリン様の横で「従者も従魔も変わらんであろうがッ!」とドラグノフが怒っていた。
「えっ? ドラグノフ、竜王だったの?」
「ん? 言ってなかったか、我は最古の竜【古竜】であり竜の中でも最上位の竜王、【時の竜王】である。世界が出来た時から同じく生きて来た凄い竜であるぞ」
それを聞いた俺は、そんな凄い竜だとは思えずアーリン様の方を見ると「こんな竜だけど、本当よ。あっ、でも私はそんな長生きしてないからね?」と言われた。
「何か俺の周りって凄い人? が沢山居るな~」
そんな小さな呟きをした俺に対し、ドラグノフが「我は、凄い竜なんだぞ!」と誇らしげに胸を張って言い、その横でアーリン様が「そんな、凄い竜なのにゲームで全てをクリフ君に取られてるなんて馬鹿よね」と馬鹿にし、またドラグノフと喧嘩を再開した。
アーリン様、参戦!
※ルシアちゃんがあの部屋に入った瞬間から既に仕事を押し付ける事を計画していたアーリン様でした。