第９０話
建物から出た後、直ぐに家に帰るのではなくガルフさんの工房へ向かった。
工房の前に着き、扉を開け中に入るといつもの様にケートさんが居て「おはよう。クリフ君」と笑顔で挨拶をしてくれた。
「おはようございます。ケートさん」
「クリフ君。後ろの方は、知り合いの方かな？」
「知り合いというより、俺の従魔のドラグノフと言います。今は、人化してますが本当は竜です」
「よろしくな、我はクリフの従魔だから気安くドラグノフと呼んでくれて良いぞ」
とドラグノフが言うとケートさんは「流石、クリフ君だね。ちょっとまってて、ガルフさん奥でちょっと寝てると思うから起こしてくるよ」と言って奥の部屋へと行った。
「なあ、クリフ。何故、我を工房なんかに連れて来たんだ？ 我なら、武具が無くても竜の姿で魔物なんて一瞬だぞ？」
「竜の姿は、外でしか使えないだろ？ 屋内やダンジョンの中で竜になってみろ戦闘どころじゃないだろ」
「……成程、流石クリフ。よく考えておるな」
「ドラグノフが何も考えてないだけだろ」
ドラグノフとそんな会話をしているとケートさんが戻って来て、その後ろからガルフさんが欠伸をしながら出て来た。
「おはようございます。ガルフさん」
「おう、おはよう。クリフ。それと、ドラグノフだったか？ 竜の従魔なんて流石リグル様の孫だな」
ガルフさんはそう言いながら欠伸をし、カウンターの椅子にドカッと座った。
「それで、今日はどうしたんだ？」
「えっと、ドラグノフの装備を作って欲しいんですけど、ドラグノフどんな武器が使いたい？」
「う～む、我の場合適正武器が剣しかないから、攻撃力が高い大剣が欲しいな」
ガルフさんは、それを聞いて「竜が使う大剣か……よし、作ってやろう。クリフの頼みだしな」と言って立ち上がった。
「ちょ、ガルフさん。お金は――」
止めようとしたが、そのまま奥の部屋へと消えた。
「ごめんね。クリフ君、久しぶりにやる気スイッチが入ったみたいでああなると周りの声は一切聞こえないから、今日は前金は良いよ。まあ、あの状態だと完成まで直ぐだろうしいい仕事をしたって言って余り金額も大きくはないと思うから心配しないで今日は帰って良いよ」
「……はい、分かりました。それでは、明日また同じ時間帯に来ますのでガルフさんに値段聞けたら教えて下さい」
「うん、分かったよ。じゃあね、気を付けて帰るんだよ」
ケートさんに見送られながら工房から出た俺とドラグノフは、商業区の表通りを歩き串肉屋の屋台で４本ほど串肉を買い食べながら、もうやる事が無いと言う事で家に帰る事にした。
「……ク、クリフ。あれは、どうなっているんだ？」
「しッ、静かにしておけ、それと父さんと爺ちゃんと目を合わせるな」
家に着き、中に入ると異様な空気を感じ取った俺とドラグノフは、恐る恐るリビングの扉を開けると、そこには先程帰って来たばかりなのか鎧を付けた父さんと昨日から縄で縛られている爺ちゃんが宙吊りにされて母さんと婆ちゃんに睨まれていた。
直ぐに扉を閉めて、自室に帰った俺達は先程の事を忘れる為にリバーシーをやる事にした。
「ッ！ は、初めて、我が勝ったぞッ！」
先程の事を考えながら打っていた俺は、初めてドラグノフに負けてしまい。俺に勝ったドラグノフが部屋の中を笑顔で「やったぞ～」と走り回った。その後、もう一戦する事になったが先程負けた事に少しだけ悔しくなった俺は、考え事をしながらリバーシーの方にもちゃんと頭を使い、ドラグノフは連勝出来なかった。
「さてと、ドラグノフ。どうせ、家の中に居てもずっとリバーシーしてるだけだろうし、庭に出てちょっと相手をしてくれ」
「えっ？ 我は、リバーシーをずっとやってても良いぞ？」
ドラグノフの言葉を無視して、俺は部屋の窓を負けて空歩を使い裏庭に降り立った。ドラグノフは、部屋の外に顔を出し何か言いたそうな顔をして見て来たが直ぐに窓から飛び裏庭に着地した。
「相手って、クリフ何をすればよいのだ？」
「……そうだな、無手でちょっと殴り合いでもしてみるか、これでもステータス的には父さん達には負けるけどそれなりにあるから、徐々に上げて行く感じで最初は緩く体を動かし事から始めよう」
「うむ、分かった。ああ、それというのが忘れておったが人化してたら我の能力少し減少しておるから、本気は最初から出ないぞ」
「そうだったのか？ まあ、いいや。始めるぞドラグノフ」
そう言って、俺はドラグノフへと殴りかかった。
新しくあらすじを考えた物を活動報告にて現在出しています。宜しければ、読者様の意見を教えてください。作者の能力では、アレが限界でした。
