第87話
ドラグノフの背中に乗り体内時計で出発時の時から数えると、4時間が経ち、現在王都近くの森の中を俺とドラグノフは歩いていた。
「何で、森の中を歩くんだ? 我に乗ったまま王都に行った方が早いだろう?」
「ドラグノフみたいな巨大な竜が王都に現れたら大騒ぎになるだろ? それに思ってたよりドラグノフが早かったから歩いていてもちゃんと王都に着くから、ちゃんと約束通り帰ったらリバーシーをやるからそんなソワソワしなくて良いぞ」
「そ、そうか……って、我はソワソワ何てしてないぞッ!」
「はいはい」
森の中に入り歩いている途中ずっと俺の方をチラチラと見ていたドラグノフは、俺にそう言われて大声で反論してきた。
「なあ、ドラグノフ。さっきから思ってたんだが、何でこんなに魔物が寄ってこないんだ?」
「んっ? ああ、それは我が先程から魔力を出してそれに気づいた魔物達が隠れているんだろう。これでも我は最強種の竜だからな、クリフ忘れてないだろうな?」
「成程、まあでもその最強種の竜が今ではたった1人の人間に掛けで負けて自分の身までも手放してるんだから笑える話だよな」
ドラグノフと山でリバーシーをしている時、勝ち越していく俺にドラグノフが再戦を申し込む度に色々な物を賭けて来た。勿論俺は、その再戦を受け徹底的にドラグノフも持ち物を全て奪って行った。金、魔具、スキル書、そして最後にドラグノフが「さ、最後はわ、我自身賭けるッ!」と言い結果、俺は最強種の竜をゲームで手に入れた。
「ああ、それとドラグノフ。結局、王都に着いて来たから言うけどギルドに行って従魔の首輪着けさせるからな」
「なッ! 我に従魔などと一緒の首輪をつけさせるのか?! せめて契約魔法での従魔契約にしてくれッ!」
そう懇願してきたドラグノフに「いや、賭けで勝ったの俺だし、それにドラグノフの為に契約魔法をポイントで買うの勿体ないから無理」と言い、王都に着くまでの間ずっと横から「頼みますよ。クリフ様~」と気持ち悪い言い方をずっとして来たので「4回に減らす」と言うと黙って後ろをトボトボと歩き出した。
「次の者……って、あれ? クリフ君じゃないか、行く時はクリム様と行ってなかったかい?」
「はい、途中で別れて一人で帰って来たんです。あっ、後ろに居るのは従魔のドラグノフです。この後、ギルドに行って従魔の首輪を買う予定なんですが、通っても良いですか?」
「うん、いいよ。でも後ろのって人化が出来る従魔だなんてクリフ君、流石だね」
「ありがとうございます。それでは」
そう言って、終始無言なドラグノフと一緒に王都の中に入った。そして、家に向かわず冒険者ギルドに向かい、ギルドの建物が見えるとドラグノフの足が止まった。
「ク、クリフ。本当にお願いします。3回に減らしてでも良いので、首輪だけはやめてください……」
「……ドラグノフ」
ガチで涙を目に溜めながらドラグノフは俺にそう言ってきた。俺は、一旦路地裏に行きステータスを開きスキル欄で【契約魔法】を探すと600ポイントで取れる事を確認した。
「仕方ない。今回は、俺が折れてあげるよ」
「本当にありがとうございます」
と会った時は、あんなに迫力あった竜が今目の前で綺麗に腰を曲げ俺に感謝を述べていた。
その後、【契約魔法】を600スキルポイントで購入した俺は、ドラグノフに契約魔法を掛けスキル欄の契約魔法の所に【従魔:ドラグノフ】の欄が追加された。
「ふぅ、これで首輪着けなくてよくなった」
「……やっぱ、嘘泣きだったか」
「いや、あれはガチだ。我は竜の中でも上位の存在だと言っているだろう? そんな我がもし従魔の首輪を着け、リグルなんかに会ったら大笑いして我の事を知ってる者達に言い触らし笑い者にされてしまう所だった」
真剣な顔でそう言ったドラグノフを見て、「まあ、今回だけしか使えないような魔法じゃないし、【悪魔祓い】よりマシだし良いか」と呟き路地から出て行き、母さん達が待つ家に向かった。
負け続けているのに賭けをし続けたドラグノフの言い訳:「次勝てば、今までの全部取り返せると思って賭け続けていたら、いつの間にか最後に我自身賭けて全てを失っていた」