第85話
目の前で起こっている光景に俺、父さん、アイザックさんは言葉を失い。ただ、呆然とその戦闘を見ていた。紅い竜が放つ、異様なまでの威圧、それを平気な様子で次々に竜へ魔法を放つ魔法使い。
「グルォォォォッ!!」
紅い竜は、魔法使いの放つ魔法を食らいながらもその巨躯に見合った大きな口を大きく開け竜が使うと言われている。ブレスを魔法使いに放った。
「ッ!」
魔法使いは、そのブレスに向け防御に徹するかと思いきやローブで顔全体は見えないが辛うじて見える口元がニヤりとし、魔法使いは魔法を数十個一気に展開し竜へ向けて放った。
竜のブレス、魔法使いの数十の魔法、その2つがぶつかり合い又、地鳴りが響いた。両者の攻撃は、凄まじく俺の魔法では圧倒的にレベルが違うと見せつけられた。そして、2つの魔法がぶつかった結果その場所には土煙が舞い視界が悪くなった。
その視界が悪くなった処から話し声が聞こえた。
「……ふぅ、そろそろやめるかのう」
「なんだ? もう、疲れたんか?」
その話し声、1人の方の話し声にピンッと来た俺は、視界が悪い中【鷹の目】を使い話し声がした方を見た。そこには、先程の爆風によって顔をスッポリと隠していたローブが取れ、素顔が出ている魔法使いが居た。
「爺ちゃんッ!」
「んっ? クリフかっ?! 何でこんな所に居るんじゃ?」
先程まで巨大な竜と戦っていた魔法使いは、俺が良く知る戦闘狂の爺ちゃんだった。
「ッ? 義父さんだったんですか?!」
「なんじゃ、クリムも来ておるのか? それにもう1人は、商会のアイザックじゃないか?」
「あっ、お久しぶりです。リグル様、いや~リグル様こんな所に居るなんてビックリしましたよ」
土煙を風魔法を使い払いのけた爺ちゃんは、俺達の下に歩きながら父さんとアイザックさんに話しかけた。
「ああ、そうか最近クリムが何か慌ただしいと思って居ったらこれの事じゃったんじゃな」
「義父さんは、竜の事知ってたんですか?」
「知ってるも何も故奴、数年? 数十年位前からここに住まわせておるのは儂じゃしな」
「……はあッ?!」
その後、父さんは爺ちゃんに「どういう事なんですか?」と問い詰めた。
結果、昔里から少し出ている時に今回の騒動の原因になった竜と数年ぶりに再開した爺ちゃんは、暮らす場所を貸してくれと竜から言われこの山なら良いだろうと麓の村には「竜住んでるけど、危害加えないし何なら奴が居れば魔物も減るから徳じゃよ」と言い父さんの許可を取らずに竜を山に住まわせていたらしい。
「義父さん、帰ったら義母さんとリサラに報告しますね」
「ッ! ま、待つんじゃ儂じゃって報告しようと思ったぞ? じゃが、ちょっと聞くの忘れてたら数十年経ってただけで……クリフ。助けてくれ」
「……無理」
母さんと婆ちゃんに報告すると言われた爺ちゃんは、急にオロオロとしだし俺に助けを求めて来たが、今回はどう見ても爺ちゃんが悪いから助けを断った。
「なあ、リグル。そろそろ、我の説明してほしいんじゃが? それにその子がクリフなんだろ?」
「……何じゃ、まだ居たのかクリフ。この竜の名前は、え~と何じゃったかのう。まあ、好きな様に呼べばよい」
「やい、リグル。その説明の雑さは何だ。我に負けたのが悔しいのか?」
「負けてないわい。ただ、儂はこれからお主より怖い者達に怒られるからそれに対して気が落ち込んでるだけじゃ」
爺ちゃんと竜のそんな会話を聞いていた俺達は、目線を合わせ「どうするの?」と反応に困っていた。
その後、今回の騒動について両者の知っている事を交えて話し合いをすると、今回の一件は単純に竜、名前を改めて名乗られ【ドラグノフ】が俺当てに書いた手紙だったらしい。
それを聞いた父さんは、爺ちゃんの方を見て魔力が父さんと爺ちゃんを行き来した瞬間、「……そうだったんですね。安心しました。それでは、私は至急報告に帰らないといけませんので」と言って立ち上がりアイザックさんだけを連れて帰ろうとした。
「ちょっと待て、父さんよ。何故、俺を置いて行く?」
「大丈夫、義父さんも居るし、何よりドラグノフさんがクリフに用事があるんじゃないか? 先に村に戻ってるから、それじゃ」
「おいおい、良いのかクリム? 確かにリグル様が居ると言っても竜の近くにクリフおいて行くのか?」
「アイザック。良いから良いから、さっ私達は早く帰ろう」
そう言って、逃げて行くように山を下りて行った。
「それで、あの何で俺当てに手紙書いたんですか?」
「うむ、それはの主に我と戦って欲しいんだ」
「……爺ちゃん。ちょっと、翻訳してくれない? さっきまで普通に聞こえてたんだけどなんだが幻聴が聞こえてさ」
「クリフ。心配せんでよい。何もこやつはさっきみたいな戦闘で戦いたいとは言っておらん」
そう言って、爺ちゃんは自分のアイテムボックスから1つの木箱を取り出した。それを地面に置き、中身を取り出した物を俺は見て驚いた「リバーシーが何でそんな厳重に保管されてるの?」そう言った俺に目の前の巨大な竜は「の、のう。これのルールは知っておるか?」と聞かれ、「はい、知ってますよ」と言うと、上空に向かって先程の戦闘の時より大きくそして迫力のあるブレスを放った。
「……もしかして、その相手をしてほしいんですか?」
「うむ、頼めるか? リグルにも相手になってもらった事があるのだが奴は魔法と戦闘以外は苦手て相手にならんかったのだ」
「ドラグノフ。儂の悪口を言うんじゃったら、クリフを連れて帰るのぞ?」
「フッ、やってみるがよい。既にこの者には、我の加護を授けたからの何処にいるか分かるぞ」
そう言ったドラグノフさんに爺ちゃんは、「ちっ、既に手を打っておったか」と舌打ちをしながら言った。
「リグルは放っておいて、早速やるぞ」
「あの、やるのは良いんですけど。そのままでやるんですか?」
「んっ? おぉ、嬉しさのあまり忘れておった。ちょっと、待っておれ」
ドラグノフさんはそう言うと、自分の体を魔力で覆いつくし巨大な竜の陰がみるみる小さくなっていき最後には1人の人間位の大きさになった。
「これでなら、いけるだろう! さぁ、やるぞ!」
「は、はい」
ドラグノフさんは、取り出したリバーシーをササッと並べ最初の真ん中に4つの白黒の石を置き、「先行は、クリフでよいぞ」と言い何故か俺は、竜に会ったと思ったらその竜とリバーシーをする事になった。
さあ、竜と対決!
2017/12/19:ボードゲームの表記をリバーシーに変更しました。