第82話
母さんの説得に成功した後、アイザックさん達が待つ場所に戻ってきた俺達は、そのまま手続きを済ませ門の外に出て目的の領地に向かった。今回向かう場所は、俺が幼少期過ごした別荘の近くと言う事で久しぶりに別荘の人達に会えると聞いて楽しみが増えた。
「クリフ。お願いだから、もし危ない竜だったら絶対に一人ででもいいから逃げてよね?」
「分かったって、それに母さんに危なかったって伝えなかったら分からないんだから」
「……騎士の中にリサラのファンが沢山居るんだよ。だから、もしクリフが危険な目にあったのを目にした人が居たらすぐにリサラの所に報告が行くんだよ」
ここの騎士団の人達、そう言えば前に母さんと一緒に騎士団の人達の訓練を見に行った時、父さんと一緒に見に行った時よりやけに声を上げたり、素振りも前の時より音が大きく聞こえていて、母さんのファンと聞いて「なるほど」と思ってしまった。
「まあ、本当に危なくなったら全力で逃げるよ」
「頼むよ……」
馬車に揺られ数時間が経ち、昼食の時間になった。しかし、移動を優先しているので今回は揺られながら食べる事になり父さん達は携帯食をバッグから取り出し食べていた。
「クリフは、自分の無いなら父さんのをあげようか?」
「いや、大丈夫だよ。前にダンジョン行く時に多く作っててまだ残ってるのがあるから」
そう言って、アイテムボックスから余っていたスープとサンドイッチを取り出し、スープはこのまま置いてたらこぼれるかもしれないのでコップに注いでアイテムボックスに入れなおした。
「……そう言えば、クリフは料理も出来たんだったね。調理スキルは、もう取ってるのかい?」
「うん、この間取ったけどこれは取る前に作った物だからスキルの力は使って無いよ。父さん飲んでみる?」
「いいのかい?」
「うん、まだ余ってるしね」
そう言って、アイテムボックスからスープが入った鍋を取り出しコップに注いで父さんに渡した。父さんは、まだ湯気が出ているスープ入りのコップを口元に持って行き、フーフーと冷まして一口飲んだ。
「ッ! す、凄いね。普通に美味しいよ。これで、調理スキルは使ってないんだよね?」
父さんは、一口飲んだ後感想を言ってまたズズズとスープを飲み干し「は~、美味しかった」と言って残った携帯食を食べ始めた。
「そう言えば、父さん。最近、爺ちゃん何処に行ってるか知ってる?」
「いや、父さんも知らないんだよね。でも、毎日帰って来てるからそんな遠くには行ってないと思うけど……まあ、王都の近くで魔物狩りでもしてるんじゃないかな? 義父さん、ジッとしておくのって苦手だし」
その後、サンドイッチを食べ終わった俺は、馬車の中でジッとしているのが退屈になり空歩を使い他の馬車の騎士の人達と喋ったりして時間を潰した。
そして、一日目の野営地に着き騎士達の人達がテントを次々建てていた。
「よう、クリフ。久しぶりだな! って、そうかクリフの事、様って言わないといけないか」
「ルトア、久しぶりだね。いや、別に今のままで良いよ。友達に「様」とか言われても嫌だしね」
「そうか、ならこのままで良いか」
久しぶりに会ったルトアは、学園に居た時の様に話しかけて来てくれた。今は、クールベルト家の騎士団に所属して今回は新兵として初仕事として来ているらしい。「新兵で来たの俺ともう1人だけなんだぜ!」と自慢して来たルトアに俺は「期待されてるみたいだね。頑張って」と労いの言葉を掛けた。
「そう言えば、クリフ。Dランク冒険者になったんだろ? 凄いな、まだ一カ月も経って無いだろ?」
「良いパーティーメンバーに恵まれたおかげだよ。アリスも居たしね」
「ああ、アリスちゃん。結局、一度も剣術勝負で勝てなかったな……また、戦いたいな」
「一カ月、里帰りで居ないけど帰ってきたら頼んでみるよ」
「本当か?! 頼むぜ」
ルトアがそう言うと、ルトアの後ろから隊長が来て「すみません、クリフ様。ルトア、借りますね」と言われ「それじゃ、またな」と言って走り去っていった。
ルトアと別れた後、自分のテントに戻った。その後夕食は、騎士の人達の中で調理スキル持ちの人達と一緒に俺も一緒に料理を作って「クリフ様の料理、めっちゃ美味しいです!」と騎士達の人達から言われ凄く気持ちが良かった。
また、ルトアから「クリフ。顔も頭も良くて、剣術や体術、魔術も得意更に料理も出来るって完璧すぎるだろ!」と言われた。
……主人公たちに負けない様に作者自身、料理を出来る様に頑張ります。