第79話
目的地のガルフさんの工房前に着き、ドアをノックすると中からケートさんが出て来て「いらっしゃい。クリフ君」と中に案内してくれた。中に入ると、ケートさんが「ガルフさ~ん、クリフ君が来ましたよ~」とガルフさんを呼んでくれた。
「んっ? 坊主、今日は1人なのか?」
「はい。アリスもミケもちょっとの間里帰りしてて、今は一人です」
「そうなのか」
ガルフさんはその後、「それで、今日はどうするんだ?」と頭に付けていた布を取り汗を拭きながら言ってきた。
「冒険者に成る前に買った剣が、この間のダンジョンでの戦闘中に使い物にならなくなったので、新しく剣を買おうと思ってきました」
「そうか、武器の種類は何にする?」
「そうですね。一応、全武器の適正はあるんですけが一番スキルレベルが高いのが、剣術ですので剣でお願いします」
「形はどうする?」
「使いやすい片手剣でお願いします」
武器の種類や形状を言うと、「分かった。しかし、今回は新しく作るから数日の間まってくれ」と言われ、具体的にどのくらいかと聞くと「3日あれば」と言われたので「分かりました」と答えた。
「それで、代金の方は」
「そうだな、武器に今どのくらい投資できる?」
「えっと……」
俺は、ガルフさんに質問され【記憶の書庫】を使い今、自分が持っているお金を思い出し、その中から必要最低限の金を計算し、「銀貨20枚なら、いけます」と言うと、「前金に5銀貨、出来た時に残りを払ってくれ」と言われた。
その後、ガルフさんは早速武器の作成の為に奥へと入って行った。
「あの、ケートさん。ガルフさん、何かあったんですか?」
「あはは、やっぱ分かったかい? ガルフさん、今日ここに来る前に娘さんから「お父さん、クサイ」って言われて元気が無いんだよ」
「えっ?! ガルフさん、結婚してたんですか?」
ガルフさんが落ち込んでいる理由よりガルフさんが結婚して子供がいる事に驚いてしまった。その後、奥から「ケート!」と怒気を含んだガルフさんの声が聞こえ「これ以上、喋ったら殺されるから」と言われたので、ケートさんに銀貨を渡して工房から出て行った。
「さてと、用事は終わったけど姉さん達との約束の時間まで時間があるな……」
工房から出て裏路地を歩き、表通りに戻ってきた俺は何をしようか考えていると、ふと視線の先に父さんとヴェルトさんが居た。
「父さん、ヴェルトさん。何してるの?」
「お久しぶりでございます。クリフ坊ちゃん、出掛けていたのですね。おはようございます」
「うん、久しぶりヴェルトさん。おはよう」
久しぶりに会ったヴェルトさんと軽く挨拶を交わし、父さんの方を向いた。
「そうか、クリフ。今日はガルフさんの所に行ってくるって言ってたね。もう、用事は終わったのかい?」
「うん、もう作成は頼んできたよ。出来上がるのに数日かかるから、これからどうしようかなって思ってたら、父さん達を見つけたんだよ。それで、父さん達はなにしてたの?」
「ちょっとな、領地の方に戻る事になったから商業ギルドの方に食料品やらを注文しにいく所なんだよ」
父さんはそう言いながら、「クリフも来るか?」と聞かれたので午後まで時間があるしと思い。着いて行くことにした。
「それで父さん。何で、領地に行く事になったの?」
「ああ、その話はギルドに着いたらでいいかい? ここじゃ、ちょっと話せない内容だからさ」
「……うん、分かったよ。あっ、そう言えばヴェルトさん、ルトア君元気にしてますか?」
「はい、今は騎士団で毎日しごかれていて「キツイ、けど楽しい!」と食事時に言ってますよ」
ルトア君とは、ヴェルトさんの子供で長男のウェル君とは歳も違って余り喋った事は無いけど、ルトア君は俺と同い歳と言う事で学園でも偶に喋っていた友達、今じゃクールベルト家の騎士団に新兵として入団している。
まあ、性格的に兄のウェル君は勉強好きなのだが、ルトア君は勉強は余り得意じゃない代わりに父や兄とは違い活発で体術や剣術といった授業では結構点数が良かった。
「それじゃ、今度会いに行くって伝えて貰えますか? 久しぶりにルトア君と組み手したいので」
「はい、ルトアもクリフ様と会えると知ったら喜びます。伝えておきますね」
ヴェルトさんとそう話をして道を歩いて行き、未だ一度も入った事が無いギルド、【商業ギルド】の建物の中に父さん達の後に続いて入って行った。
建物の中に入ると、父さんは受付に行き「アイザックを呼んでくれるかい」と言うと受付の方から別室でお待ちくださいと言われ、端にある階段を上り2階にある個室の中に入った。
新展開まで道のりが長いです。
2017/12/10:「5日あれば」の所を「3日」に変更しました。