第59話
俺と爺ちゃんを包んだ光が収まると、そこは今まで居た裏庭ではなく、今までに見たことも無い部屋だった。
「じ、爺ちゃん。ここ、何処?! というか、爺ちゃん転移魔法使えるの?!」
「ここは、儂の隠れ家じゃよ。それと、今のは転移魔法じゃなくてのこの杖の能力なんじゃ」
爺ちゃんはそう言いながら、いつも使っている杖を俺の前に差し出し、「今、偽装は解いておるから鑑定で見てみるんじゃ」と言われたので俺は杖を鑑定した。
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名前:レドルの杖
作者:ダンジョン
能力:1つの魔玉を登録でき、その場へ転移できる。※登録限界:3(3)
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「登録限界が3(3)って事は、もう3か所に全部登録したの?」
「うむ、まず1つがこの部屋、そして次に王都のクリムの家の地下室、そして最後の場所は……うむ、秘密じゃ」
最後だけ、少し考えて爺ちゃんは言った。特に俺は気にせず何でこんな所に連れて来たのか、爺ちゃんに聞いた。
「うむ、それはのう。クリフに役立つ物がここならあるからじゃよ。ついてきなさい」
そう言って、部屋の扉を開けると部屋の外にはいくつも扉があった。そして、その中の一番奥に歩いて行き中に入った。その中には、5m位ある天井までの高さまである本棚にズラーッと本が並んでいる部屋だった。
「こっちじゃよ。クリフ」
「う、うん」
少しこの部屋に入って来て驚いていた俺は、爺ちゃんに呼ばれた方に急いで行った。爺ちゃんは、部屋の中を移動し、奥へと進みある1つの本棚の一番上の本を数冊持って下に降りて来て更に奥に行って、また本棚の上にある本を数冊取ってまた奥に行き、テーブルと椅子がある所に着くと「クリフ。座ってよいぞ」と言った。
「爺ちゃん、その本の山は何?」
爺ちゃんは、このテーブルまで着くまでに数十冊以上の本を持って来ていた。
「うむ、これはのう。儂が長年、スキルに着いて研究した研究書類じゃよ。儂自身が自分で取って調べたり、知り合いが持っておるスキルを研究したりして約数百年掛けて研究している最中なんじゃ」
「……もしかして、これ全部読めって言うの?」
「そうじゃよ? 当り前じゃ、何クリフには、固有能力【記憶の書庫】があるじゃろ? 研究していたスキルの中にそれもあった。内容は、記憶した物をいつでも見ることが出来るんじゃろ? なら、一度この書類を全部目に通しておいた方がよい。それに、まだまだ沢山あるからの、これから先は寝る前と朝起きてこの書類を読むんじゃよ」
爺ちゃんはそう言って、「何処にしまったか、忘れてしまったからちょっと探してくるからのう」と言って本棚の方へと歩いて行った。
「折角、爺ちゃんが俺の為に力を貸してくれたんだ。ちゃんと、やるか……」
俺はそう意気込んで、一冊目の本に手を伸ばし、読み始めた。
本を読み始めて俺は、直ぐに本の中身に没頭した。それは、今まで自分でスキルを一度鑑定をし、見ているよりずっと分かりやすく、またどんな効果があったのか、レベルが上がるとどの様な工夫が出来るのか、繊細に書かれていた。まさか、戦闘狂の爺ちゃんにこんな一面があったとは、驚きつつ本を読み進めて行った。
気が付くと、横に爺ちゃんが立って居て「そろそろ、帰らないとリサラ達が心配するじゃろう。その書類は、全部コピーした物じゃからクリフに渡しておくから、いつでも読める様に【アイテムボックス】の中に入れておくんじゃ」と言われた。
「ありがとう。爺ちゃん」
「よいよい、孫の為じゃ爺ちゃんが力になれることがあったら、いつでも言うんじゃよ」
そう言って、爺ちゃんは杖を取り出し掲げ俺と爺ちゃんを光が包み込み目を瞑り、光が収まり目を開けると余り行かないが見覚えがあった王都の家の地下室だった。
その後、地下室からリビングに行くと窓の外が既に日が落ち暗くなっていて母さんと父さんから「何処に行ってんだ?!」と怒られた。俺は、本当の事を言っても良かったが父さんに自分が特訓している事を言うのも何か嫌だったから「ちょっと、散歩に行ってたんだ。遅くなってごめんなさい」と言って、家のメイドさんが夕食をテーブルに並べていたので俺達は席に着き、夕食を食べた。
夕食を食べた後、俺は直ぐに風呂に入り事実に戻りベッドの上に寝転がり光魔法で光球を頭上に出現させ、持っている本を照らしながら爺ちゃんの隠れ家で読んでいた本の続きを読み始めた。
何とか、毎日更新は続けれました。




