第55話
朝食を食べ終わった後、家を出てギルドへと向かった。待ち合わせをしているいつものギルドの前には誰も居なかったので、俺が一番最初に来た様だ。アリス達が来るまで何しようかなと考えていると見覚えのある人がギルドの中に入って行った。
「今のって、アリスの父さんじゃね? アリスの父さん今日は、冒険者の仕事をするのかな?」
アリスの父さんは、Sランクの冒険者と言う事もあり国からの依頼で城の警備等もしたりしている。また、アリスの父さんは【狂戦士】という2つ名が付けられているが武と魔法、両方優れているから学園で先生をしたりしている。
アリスの父さんがギルドの中に入ってから少し時間が経ち、アリスが到着し、直ぐ後にミケも待ち合わせ場所に到着した。俺は2人に「おはよう」というと2人から「おはよう。クリフ君」と返って来て、俺達はギルドの中に入った。
ギルドの中に入ると、流石に朝が早すぎて冒険者の人達も起きて来ていない様で居る人がいつもより少なかった。それに、見た事が無い冒険者の人も居たりしてあんな人が居たんだなと思いながら、レインさんの受付に近づいた。
「おはようございます。クリフ様、アリス様、ミケ様。」
「おはようございます。レインさん」
レインさんは俺達3人に挨拶をし、俺が挨拶を返すと続けてアリスとミケも挨拶を返した。そして、早速、昇級試験の話になった。
「え~、本日はクリフ様方の昇級試験になります。万全の準備をしてきましたか?」
「はい、大丈夫です」
「僕も、問題ないよ」
「私も、大丈夫です」
レインさんの言葉に俺達は3人はそう返すとレインさんは「大丈夫そうですね。それでは、早速試験会場の方へ移動しましょう」と言い受付の奥に行き前に通った部屋を使って俺達の所へ出て来たレインさんは、「着いて来て下さい」と言い。俺達を試験会場に案内してくれた。
試験会場は、ギルドの地下にあり上の受付なんかがある場所とは違って何もなく、ただ真ん中に広いスペースがある場所だった。
「ここが試験会場となります。もう少ししますと、今回の試験相手の冒険者の方が来てくださいます。私は、別の仕事がありますのでここでお別れになります。試験頑張って下さい」
レインさんはそう言って、俺達が通って来た道を戻って行った。レインさんが帰って1,2分が経つと反対側の入口から人影が3つ見えた。入って来た人達は、中央に居る俺達の所へと近づいて来た。
「んっ?……な、何で父さんが居るんだ?!」
「えっ? 僕のお父さんも居るよ?!」
近づいてきた人影の人物を見ると、3つの内2つは、何と俺とアリスの父親だった。父親たちは、俺達の方を見るとニカッと笑った。そして、もう1人の人物は、獣人の猫族の人だったので、もしかしてと思いミケに尋ねた。
「もう1人居るみたいだけど、もしかしてミケの?」
「は、はい。私のパパです」
どうやら、思っていた事は正解な様で入って来た人達は全員俺達の父親だった。
「ねえ、父さん。父さんが俺達の試験相手なの?」
「うん、そうだよ。クリフの成長した力、私も試してみたいと思ってね。ギルドにもしクリフの昇級試験の時は呼んでくれって頼んでいたんだ。まあ、まさか【狂戦士】さんと【旋風】さんと一緒だとは思わなかったけどね」
「俺は何となくわかっていたがな、しかし【深紅の戦士】のクリムさんと共闘できるとは、楽しくなってきたな、それにまさかアリスのパーティーメンバーの子の父親に【旋風】が居るとはな驚いたぜ」
「ハハハ、私も驚いておりますよ。まさか、娘の友達の父親がこんな有名な人達だとは、いや~娘がお世話になっております。そうだ今度、父親だけで何処か狩りにでもいきませんか?」
「おお、いいなそれ」
「いいですね。最近は王都での仕事しかしていませんから、体が鈍っているかもしれませんが、一緒に行きましょう」
俺達の父親たちは、何故か3人仲良くそんな話をし始めた。俺達は、ただ目の前で楽しく話をしている3人に対し呆然とし何も言葉を発せなかった。そんな中、俺達の後ろから人の声がした。
「すみません。クリム様、アルティマ様、シルバー様。予定の待ち合わせのお話は、試験が終わってからお願いします」
「あっ、すみませんね。ギルド長」
「すまんすまん、まさかこんな楽しい奴等と戦えるとは思っていなかったからよ」
「すみません。ギルド長」
後ろから現れたのは、このギルドの長のノーマンさんだった。ギルド長に対し、3人の父親は謝った。
「遅れてしまい。すみません。少し資料仕事が長引いてしまいました。クリフ君、アリスさん、ミケさん。今回の昇級試験は、私が審査員として参加させてもらいます。そして、対戦相手の方はクリフ君の父でありSランク冒険者【深紅の戦士】クリム様、アリスさんのであり父Sランク冒険者【狂戦士】アルティマ様、ミケさんの父でありSランク冒険者【旋風】シルバー様になります」
「あの、ギルド長1つ聞いても良いですか?」
「はい、何でしょう。クリフ君?」
「どうみても、実力的に差があると思うんですが、この試験合格ラインはどの様になってるんですか?」
「はい、今回の昇級試験の合格ラインは……」
ギルド長は、何故かそこで黙り「そうですね。合格ラインは、秘密です」と言った。流石にSランク冒険者相手に勝てる自身も無い俺は、ギルド長に「何故ですか?」と聞いた。
「まあまあ、クリフ。いいじゃないか、別に合格ライン何て聞かなくても」
「いやいや、父さん。実力差を考えてよ。俺達は、数日前に冒険者に成った新人だよ? その新人の昇級試験の相手がSランク冒険者3人とか、黙って「はい、そうですか」ってならないよ」
「クリフ坊、別にいいじゃねえか! 戦えばいいんだよ」
俺が父さんに文句を言っていると横から豪快に笑いながらアルティマさんがそう言った。それを聞いて横に居るアリスは、「ああ、クリフ君駄目だ。父さんの目が早く戦いたいっていう目になってるから、もう逃げられないよ」と言われ、俺はあきらめた。
「それでは、両者準備に取り掛かって下さい。」
ギルド長にそう言われた俺達は、両者数mの距離を開け武器を出し戦闘開始の合図を待った。
ミケちゃんのお父さんもSランクでした。パチパチ~……いや、はい。すみません。何も考えずにSランクの父達というのを思いつき、そのまま書きました。




