第53話
森の中を進み少し開けた場所にゴブリンを見つけた。俺達は、一度その場に止まり他のゴブリンが何体居るのか確認した。最初に見つけたゴブリンの横に1匹、その後ろに2匹ゴブリンが居て、前方の2匹は棍棒を後ろの2匹は弓と杖を持っていた。
事前にこの世界の魔物の事を勉強していたので予習済みなのだが、人型の魔物である。ゴブリンやオーク、オーガ等は持っている武器で近接系・遠距離系・魔法系が分かる種族だ。
「前2体は棍棒持ちゴブリン、その後ろに弓持ちゴブリン1体と魔法系ゴブリン1体。属性は、分からないが俺が後ろの2体を対処するからアリス達は前のゴブリンを頼む」
「分かった。クリフ君」
「はい、分かりました」
俺の指示に2人は返事をし、その場で二手に分かれた。俺は、このまま森の中を後ろのゴブリンの所へと近づいた。そして、俺が事前に合図として教えていた聖属性で光球を作り前方のゴブリンの目の前に出現させ視覚を奪った。
合図と共にアリス達は、森からバッと飛び手て来てアリスはそのままゴブリンの頭を片手剣で吹っ飛ばし、ミケは細剣での連続攻撃でゴブリンの息の根を止めた。
「ガッ、ガギュ!」
「カギュ……」
俺もまた、自分の合図と共に後方に居た2体のゴブリンの首を剣で斬り飛ばした。実際、前衛後衛と決めていたが結局こんな戦いをしてしまった。次回からは、ちゃんと前衛・後衛の役割を果たすような戦いをしようと一人で考えていた。
「初めての魔物狩りだったけど、上手くいって良かったな」
「そうだね。って、この中で魔物倒したこと無いのクリフ君だけだったけどね」
「えっ?! そうなの?」
ゴブリンの討伐部位である耳を取り、アイテムボックスに入れながら話題を振ると俺に取って驚くような返しが来た。
「アリスとミケは、魔物倒したことあったの?」
「うん。僕は、お父さんと小さい時に一緒に倒したよ」
「私も、両親と狩りをしてる時に何回か倒したことがあるよ」
「マジか、始めては俺だけだったのか……」
と俺以外の2人は既に魔物を倒していたことに少し落ち込みはしたが、まあ俺も3歳の時実質は俺が一発当てた矢を魔物が怒って爺ちゃんが倒してたから、俺も倒したことがあるって言っていい気もする。よし、そう考えよう。(結果的にただ矢を当てただけ、だったから経験値は入ってないから倒したうちに入らないけど……)
その後も、森の中を探索してゴブリンを見つけては、周りの索敵を重視し先に相手の数を確認しながら戦っていった。
「ガ、ガキャ……」
「ふぅ~、薬草集めとは違った疲れが出るな」
「そうだね。魔物退治は、緊張感があるから薬草採取より疲れる速さが違うね」
今、討伐したゴブリンの耳を剥ぎ取りアイテムボックスに入れ残ったゴブリンの体もアイテムボックスの中に入れた。何か役に立つかも知れないかと思い始めてから数体倒した後から入れる様にしておいた。そして、今倒したゴブリンで丁度60体となった。
「さてと、それじゃそろそろ王都に帰るとするか」
「うん。それに、明日試験受けて合格したらDランクになれるかもしれないしね!」
「数日前に登録したのにもう試験受けれる何てビックリだけど、明日が楽しみだな」
そんな話をしながら、俺達は来た道を歩きながら森を出て行った。そして、王都に到着する前に少しでも服に付いた汚れを水魔法で洗い流し風魔法で服を乾かして王都に帰還した。
帰還した俺達は、そのままギルドへと直行し、レインさんの受付へと向かった。
「おかえりなさいです。クリフ様、アリス様、ミケ様。どうでしたか、初めての討伐依頼は?」
「はい、なんとか無事に終わる事が出来ました。ゴブリンの耳の提出ですが、ここでですか?」
「いえ、薬草と同じくあちらの受付で行います」
そう言って、いつもの薬草を受け取っていて受付に移動した俺達、レインさんは奥からおなじみの木箱を持って受付へと戻って来た。
「こちらに、ゴブリンの耳を提出してください」
「はい」
俺は、レインさんの指示通りアイテムボックスの中に入っているゴブリンの右耳を取り出し、木箱の中に入れた。
「……それでは、数を数えてきますので少々お待ちください」
「はい、お願いします」
そしてその後、数分経ち奥からレインさんが小袋を持って帰って来た。
「ゴブリン系60体でしたので、報酬は銅貨36枚になります」
「はい、ありがとうございます」
レインさんから小袋を受け取った俺は、一度アイテムボックスの中にいれ数が合ってるのを確認し、後で三等分して分けるね。とアリス達に言った。
「それと、今回の討伐依頼の成功によりクリフ様、アリス様、ミケ様はDランクへの昇級試験に挑むことが出来ます」
「あの、昇級試験とは、どのような事をするんですか?」
「簡単です。Cランク以上の冒険者の人との1対1、もしくはパーティー同士で戦い。戦闘がどの程度出来るか見定めるのです。その結果で、昇級させるか又はEランクにそのままにするか決めるのです」
レインさんがそう言うと、ギルドに帰ってきている周りにいた冒険者の人が少し慌ただしくなってきた。
「分かりました。昇級試験の事は、パーティーで少し話し合いをして決めてもいいですか?」
「はい、構いませんよ」
レインさんの許可を取り、少し受付から離れた俺達は話し合いをした。パーティーで受けるか個別で受けるか、俺はパーティーでと言ったのだが、アリスとミケが「1対1で行く」と言ったので個別試験にして貰う事にした。
「話し合いの結果、個別で試験を受ける事にしました」
「はい、畏まりました。既に、昇級試験の相手は決まっています。日時は、どうしますか?」
レインさんの言葉に後ろにいる2人に聞くと、明日と返って来たのでそのままレインさんに伝えた。
「明日ですね。分かりました。それでは明日、ギルドで待って居ますので万全の準備をして来て下さい」
「はい、分かりました。ありがとうございました」
そう言って、アリス達も「ありがとうございました」と言い。俺達は、受付から離れギルドから出て行った。
★☆★
クリフ達が出て行ったギルド内では、レインの受付に冒険者が集まっていた。
「レ、レインさん。あの子達の相手って結局誰がするんですか?」
「それは、教えれませんよ。ギルド長から「これを喋ったら、減給するよ」って脅されてるんですから」
「まさか、俺達じゃないですよね?」
「昇級相手には、事前に通達が行くでしょう。今来てないって事は、貴方方ではないですよ。まあ、泊まっている宿に手紙が行ってるかもしれませんが……」
レインがそう言うと、受付に集まっていた冒険者とそれを見ていた冒険者が慌ててギルドから出て行った。そして、それを見ていたレインは、小さくため息を吐いた。
「流石の私でも、この話はお喋りで言いふらせないわよ……」
と呟き、ギルドから冒険者が消え仕事が当分来ないなと思ったレインは、他の受付とお喋りをする事にした。
まあ、苦戦はしないですよね。逆にこのステータスで苦戦するようなゴブリンが居たら大変ですからね。