第5話
爺さんはその後「もう、良いのじゃ先にやってしまったのは儂じゃ」と今度は完全に開き直って次の工程に移る事にした。
「うむ、次の工程なんじゃが、【レベル】は向こうの世界で魔物や強敵と戦い、経験値を得て上がって行く物じゃから、今ここで変更する事は出来ないのじゃ」
「そうですか、分かりました。それじゃ、その次の【能力値】振り分けですかね?」
「そうじゃ、と言いたいのじゃが【スキル】か【能力値】かどっちでもよいのじゃよ。【能力値】に多めに振ってしまって【スキル】の方で取りたいスキルが取れないとなるともうどうしようもないしのう」
「成程、なら先に【スキル】を選ぶ事にします」
「うむ、やり方は今までと同じじゃから」
爺さんにそう言われ俺は【スキル】と書かれている所をタップした。すると、今までとは比べ物に成らない程の膨大な数の文字が画面いっぱいに表示されていた。
「うわぁ、絶対今迄の転生者の人は、ここで時間を食ったんだろうな…」
俺はそう愚痴を言いながら【スキル】を選ぶ事にした。まず重要な主軸の【スキル】として【鑑定】と【アイテムボックス】は絶対に必要になるスキルだ。この2つは1つ1000Pと安いのか高いのか…既に麻痺している俺の感覚に少し怖くなりながらも2000Pを支払い、2つのスキルを取る事にした。
次に俺は、耐性系スキルを全て取った。1つ500Pで【麻痺・毒・魅了・混乱・眠り・耐熱・耐寒】の7つの耐性を取ると何故か1つのスキルに変わり、【全状態異常耐性】となった。
先に属性で得ていた【属性魔法】の7つの属性+いま取得したスキル、それと何故かいつの間にかユニークスキルの所に【無詠唱】と【鬼人化】と言うスキルがあって、合計12個スキルをゲットした。ここで俺は1つ疑問に思えた事があった。
「神様、先程選んだ【適正属性】の属性魔法はスキルとして反映されていますが、【適正武器】で選んだ剣術等はスキルに反映され無いんですか?」
「うむ、適正武器でスキルを得るには、一度異世界で手にして扱う必要があるのじゃ。そうしないとスキルには反映されないのじゃ」
「成程、それじゃここで選ばずとも向こうで選べるんですね。分かりました」
俺は1つの疑問が解消され、再びスキル選びに戻った。次にスキルの中で1つ見つけていた【知識の書庫】という項目を見ることにした。そこには、他の世界の知識を得る事も出来【地球】の知識も得ることが出来るようだったが、ポイントの数値が1万Pと、流石に感覚が麻痺している自分でも高いと思ってしまう物があった。
「神様、【知識の書庫】というスキルの事で質問なんですが、何処まで知識として得られるんですか? そして、どのようにして理解するんですか?」
「【知識の書庫】は今現在までの全ての世界の知識を本のような物に詰め込み、いつでも見られるようするスキルじゃよ。そのスキルは固有能力に位置付けられるスキルじゃよ」
「成程、それなら1度見て忘れてしまった事もまた見れると言う訳ですね。ありがとうございます」
俺はそう言って即座に【知識の書庫】のスキルを取り、どの世界の知識を取るかで【地球】を選び、1万P支払った。これによって、残りのポイントは38100Pとなった。そして、言語が分からなかったら大変なので【全言語】というスキルを1000Pで取って、残りポイントは37100Pになる。ここで俺は一旦、スキル選びを終わり、【能力値】の振り分けをしようと考えた。
「神様、スキル選びは終わりましたので、【能力値】の振り方の説明をお願いします」
「分かったのじゃ、能力値は1つのポイントで1上がり、持久力を上げれば疲労が溜りにくくなり、精神を上げれば精神攻撃に強くなり、知能を上げれば魔法制御が上手くなるなど1つ1つ役割があるのじゃ。それと一番気を付けるのがHPとMPじゃ。MPはまだ少なくなったり0になっても目眩や吐き気などで済むが、HPが0になり死んでしまうと、1日以内に聖属性のレベル8以上の回復魔法言わば蘇生魔法を掛けてもらわなければ助からないのじゃ。寿命の場合は名前の横に老衰と書かれておるからその場合は生き返りはしない」
爺さんの説明を受け、俺は取りあえずHPとMPに1000Pずつ振った。そんな死ぬと言われたらこれ位はしておかないといけないと思ってしまった。MPは、まあどうせ赤ん坊の間は部屋にずっと居るだろうから、その間暇にならないための魔法練習する時の為に、一緒にあげておいた。次に持久力、精神、知能には500Pずつ振った。何処までが平均なのか爺さんに聞くと
「普通の成人男性が大体500P~800Pで、冒険者や兵士なんかはそれ以上の者達が居るのう」
と言われた。それなら、もうバンバンやっていこうと思い、全部500Pにしようと考えた。これだったら、貴族の子供だからもし盗賊なんかに襲われたりしても少しは大丈夫だろう。しかし、やはりポイントは全部使いきれなかったな。31100ポイント残ってしまった。
「ふむ、やはり残ってしまったのう」
「はい、【スキル】も他に取りたいと思うのは特にありませんし…あっ、でも神様何故か【運】だけポイント使えないんですけど、どうなってるんですか?」
「それはのう【運】はランダムで決められるものじゃから神でさえ扱う事は出来ないんじゃよ。じゃが、スキルなんかで運を一時的に上げる事は可能じゃよ」
「そうなんですか……それじゃ、この余ったポイントどうしましょう」
「そうじゃのう……ああ、そうじゃった。異世界でも割り振る事が出来るんじゃった」
「そうなんですか? それじゃ、これで異世界に転生します」
「うむ、それじゃ善行ポイントはどちらでも使えるようにしておくぞ。もし他人見られてしまっても儂が隠しておくから心配しなくてよいぞ」
最後の爺さんからのその言葉を聞き、俺はこの何処か日本風の部屋から、徐々に薄れて行くような感じがして消えた。
★☆★
「ふぅ~、今回は凄い転生者がいったのう。士郎君異世界でも頑張るのじゃよ……」
儂は今し方消えて行った士郎君の事を考えながら次は儂の準備じゃのうと「よっこらっせ」と言い立ち上がった。
「エルフと人族のハーフで子爵位か……天使たちよ、今すぐにそれに当てはまる者を探すのじゃ」
儂は天使たち、神である儂たちの忠実なる従者達を呼び命令を出した。その中の1人の天使が儂の前に近寄って来て「全能神様、ここなど丁度良いかと」と言って差し出し書類に目を通した。
そこは、士郎君の転生条件に当てはまり儂達神もよく見ていた者達であった。
「うむ、この子達なら士郎君の事を任せられるのう。士郎君の魂はあの場所へ送るのじゃ」
儂は新たに命令を出し直ぐに天使達は新たな仕事へ飛び散って行った。
「……さてと、勝手に士郎君に加護を与えた者達の所へ行くかのう」