第35話
王都での生活も大分慣れて来て、王族からバレる危険性も考えて行動していたが母さんから「一緒に、お出かけに行こう」という、お願いに俺は断り切れずに「うん、行こう!」と答えてしまい、現在馬車にて王都の街を移動している。今日、お出かけするメンバーは、俺と母さん、そしてテーラさんだ。姉さん達も着いて行くと言っていたが、姉さん達は今年から学園に編入する事になったらしいのでそれの手続きの為一緒に来れなかった。
そして、家から出発して移動し向かっている場所は、王都内の東地区にある。商業区みたいだった。ここには、他の地区の所より多くの店が立ち並んでいて、俺が母さん達のプレゼントを選んだ店があるのもこの地区の通りにある。
「クリフ。着いたわ、1人で降りれるかしら?」
「大丈夫だよ。母さん」
目的の場所に到着し、先に降りた母さんから馬車から降りる補助を断り、馬車から出た。そして、目的の場所は、この通りによく馴染んでいる普通の雑貨屋さんみたいな店だった。看板には【アイリの魔具店】と書かれていて、母さんはその店の扉を開けて中に入った。俺も母さんの後に付いて行くよう、中に入った。
「いらっしゃいませ~、ってリサラッ?! 久しぶり!」
中に入ると、棚整理をしていた店員さんが挨拶をしながら、こちらを振り向くと母さんの名前を呼び驚いていた。
「久しぶりね。アイリ、元気そうね」
「ええ、私はいつでも元気よ。それにしても、リサラ本当に久しぶり。何年振りかしら?」
「そうね。前に来た時以来だから3年位かしら?」
母さんがそう言うと、「3年も経ってたのね~」と言い、母さんの後ろに立って居る俺に気づいたようで「あれ? その子は?」と聞かれた。
「ふふふ、私の自慢の息子のクリフよ!」
「……えっ? リ、リサラに子供?! う、嘘でしょ?」
「本当よ。ほら、クリフの耳見たらわかると思うけど、エルフの耳の形に似てるでしょ」
母さんは、俺を抱っこし自慢げに店員さん(アイリさんと母さんが言ってた人)に俺の耳を見せた。
「ほ、本当だわ。それに、この顔の形昔のリサラの面影もあるし、本当に子供が出来たのね。……お、おめでとう。リサラ」
「ええ、ありがとう。でも、ごめんね。報告がこんなに遅れて、暫くの間、別荘に居てこっちに来る機会が無かったから」
「い、良いわよ。……それにしても、まさか本当に子供が出来るなんてね。この耳の形的に完全なエルフじゃない事は分かるし、リサラがクリムさん以外の男と仲いい所なんて見た事も聞いたことも無いから、この子はリサラとクリムさんの子供で間違いないのよね」
アイリさんが、戸惑いながらそう言うと、母さんが「失礼ね。私は、クリム以外ありえないわよ」と言って、俺を抱き締めた。
「ってことは、人間とのハーフエルフなのよね? 私も、長く王都で仕事してるけど人間とエルフのハーフエルフなんて見たことも無かったから、驚いたわ」
「そうね。私も、最初クリフがお腹に出来た時は、自分の体を疑ったわ」
「……ちょっと、ごめん。少し、情報過多で目眩して来たから、奥に移動しましょう」
アイリさんは、そう言いながら店の扉の所の〖開店中〗という看板を反対にし〖閉店中〗にして、奥の部屋へと俺達を先導して歩いて行った。
店の奥の部屋に入り、奥側のソファにアイリさんがドンッと座り、俺と母さんはその向かい側にあるソファに座った。
「まさか、里を出る時は、確かに男を連れてるリサラのが一歩前進してたけど、子供まで先を越されるなんて思いもしていなかったわ」
「アイリ、そう言えば、3年前居た彼氏は何処に居るの?」
「……1年前に、ある冒険者の女と仲良くなった、って言って出て行ったわ、私が貸していた魔道具と一緒に」
「それは、その……」
まさかの返答に、母さんはアイリさんに何て言って良いのか分からないと言った目をして戸惑っていた。アイリさんは「良いのよ、私が、男を見る目が無いのは里に居た時から、そうだったし! それに、子供がいる場所で話す内容でもないし、他の話をしましょう」と無理矢理話を切り替えられ、話は俺の事になった。
「へえ、クリフ君は、光属性の魔力が強いのね」
「はい、今はお婆ちゃんに回復魔法を習ったり、お爺ちゃんに普通の魔法を習ったりしてます」
「わあ、ちゃんと育てられてる! リサラの子供の時より、凄い子ね」
「クリフは凄いのよ。この歳で、既に本も沢山読んでるし、魔法だって普通の子供の並み以上は扱えるのよ」
少し興奮している母さんは、俺を抱き締めながらアイリさんに俺の事を自慢した。
「その歳で魔法ね。確かに、ハーフと言えどエルフの血は流れているから魔法の才は、普通の子供よりあるのかしら?」
アイリさんは、俺の事をジッと見つめるようしてそう言ってきた。そして、何か魔法を感じ、偽装が発動しその魔法を弾いた。アイリさんは、それに対し「ありゃ?」と声を出し驚いていた。
遅刻の遅刻、大遅刻をしてしまい申し訳ありません。