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第29話


 大きく看板に書かれた文字を見て、俺は爺ちゃん達を呼び止めた。


「どうしたんじゃ、クリフ?」


「ここ、入ってみたい!」


「んっ? ギルドか? 良いぞ、クリムも良いじゃろう?」


「ええ、クリフの行きたい所に連れて行きましょう」


 2人の了承を得た俺は、その建物に着けられている押して開けるタイプのドアを押して中に入った。

 ギルドの中には、色々な武器を装備し、耐久度がありそうな鎧を着た人や、軽装で身軽な動きが出来そうな恰好をした人が沢山居た。ギルドの中に入ってから、周りをはしゃぎながら見ていると、1人の白髪の男性が近づいてきた。


「おや、クリム様にリグル殿ではないですか、今日はどういった用件で来たのですか?」


「おお、ノーマン久しいの、いや今日は孫がギルドを見てみたいと言ってのう。おっと、先に紹介しておくよ。この子は、儂の孫のクリフじゃ」


「お~、それはそれは、クリフ君。私は、この王都の冒険者ギルドの長を任されているノーマン・アディリだよ。よろしくね」


「よ、よろしくです」


 まさかの、爺ちゃんと話をしていたのは、このギルドのトップのギルド長だった。見た目通り、優しいお爺さんという感じだった。


「あっ、そうじゃ! ノーマン、クリフのギルドカードを作ってくれないか?」


「えっ? クリフ君、見た所まだ5歳にもなってない気がするのですが……」


「んっ? ギルドカードには、年齢制限は無かったと覚えておるのじゃが、変わったのか?」


「いえ、ただ幼い子がギルドカードを作って、何人も魔物に殺されてると…。他の支部のギルド長達と話し合い、、成人前の希望者には今までより少し厳しい試練を乗り越えないとカードを作れ無くしたのです」


 ギルド長がそう言うと、爺ちゃんは「確かに、子供の死骸を見た事は結構あるが、そこまで多発してたのか」と言った。


「はい、今までは、ある程度の戦闘能力があればカードを作成していたのですが、幼い子供達には集団で襲い掛かって来る魔物や、凶悪な盗賊に殺されたりと色々とありまして、規約を変更したのです」


「ふ~む、そうか、どうするクリフ?」


「いや、爺ちゃん。僕は、別にカードを作りたくてギルドに来たんじゃないよ? ただ、見てみたかっただけだよ。それに、僕まだ3歳なんだから」


「ぁ……そうだったのか? すまん、ちと早とちりをしてしまったのう」


「義父さん、クリフはまだ3歳なんですから、カードを作っても魔物と戦闘なんて出来ませんよ」


 と爺ちゃんに父さんが言っていた。まあ、今の俺は『何処にでも居る、普通の子供』と言う設定なので、父さんのアシストのおかげで設定を忘れていた爺ちゃんはこの場面を切り抜けることに成功した。


「それじゃ、また数年後にクリフが来た時は、よろしく頼む」


「はい、お任せください。それでは、また今度はゆっくりお茶でもしながらお話を出来る事を待って居ます」


「うむ、それではのう。ノーマン」


 そうして、俺達はギルドの中から出て少し歩き人が少ない場所に移動した。


「……爺ちゃん、設定忘れないでよね」


「す、すまん。クリフの強さを見て、早くカードを作らせてAランク以上でしか入れないダンジョンに連れて行こうと思って……」


「義父さん、今は我慢しましょう。それに、クリフとダンジョンに行けるのはまだまだ先ですよ。クリフは、学園にも通うのですから危険なダンジョンには、初等部と高等部合わせて、後8年間は待たないと行く事は禁じられてますから」


「こんなに、数年が長いと感じるとは……奴等の気持ちが少し分かったわい」


 爺ちゃんは父さんに言われ、自分の召喚獣達の気持ちが分かり切なそうにしていた。しかし、俺はそこである点に反論をした。


「父さん、俺、高等部には行かないよ?」


「えっ?」


「だって、早く冒険者で成り上がりたいし」


 確か、初等部は丁度、1年後の4歳から通いだし3年間の生活を送り、7歳で卒業できる。その後、高等部に行くか行かないか決められる。まあ、大体高等部に行くのは、貴族を継ぐ人間や、王宮に仕えたいと思っている人達である。俺の場合、冒険者に成りたいから初等部だけ行けばいいだけだ。


「クリフはクールベルト家を継ぐきないの?」


 反論を聞いた父さんは、少し慌てながらそう言った。


「いやいや、兄さん達が居るじゃん、別に貴族に拘ってないし。それに、俺が一番下じゃん」


「そうだけどさ……」


「それに、貴族だと色々と制限させられるじゃん? なら、早くに冒険者として活躍しておいて、家から出る準備をしておきたいし」


「クリフ、家を出て行くのかい?!」


 父さんは、大きな声をだし驚いた。横で聞いていた爺ちゃんは、少しニコニコと笑っている。


「三男がずっと家に居る方がおかしい気がするよ。まあ、まだ先の話だし、初等部は通うんだからいいでしょ。はい、この話はおしまい。街の探索を再開しよう!」


 そう言って、無理矢理話を終わらせて、人通りがある方へと歩き出した。後ろでは、父さんは頭を抱え「リサラに、何て言おう……」と悩んでいて、爺ちゃんは「数年早くなっただけ、嬉しいわい」と喜んでいた。

 

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