第24話
爺ちゃん達の説教が終わり、昨日食事をとったリビングへと来た。そう言えば、ここが何処なのか知らない事を思い出し、横に座っている爺ちゃんに聞いた。
「爺ちゃん、ここって何処なの? お屋敷みたいだけど」
「ん? ああ、そうじゃったクリフには伝えて無かったのう。ここは、クリムの家じゃよ王都のな、流石に倒れたクリフを遠い別荘まで運ぶのもと思っての」
爺ちゃんは最後に小さな声で「まあ、他にも理由はあるんじゃが……」と言った。最後の言葉の意味は、良く分からなかったが、ここが何処なのか分かったので取りあえず、朝食を食べた。
朝食を食べ終わると、今度はこの家のメイドさんに連れられ別室に連れて行かれた。連れて行かれた先は、この家の風呂場で俺はメイドさん2人に体を洗われた。自分で洗えると抗議したけど「旦那様の命令ですので、無理です」と断られた。
その後、風呂から出た俺はメイドさん達に体を拭かれ、新しい服、普段着とは少し違った上質な服に着替えさせられていた。
「あ、あのう。何で、こんな事してるの?」
「はい、旦那様からクリフ様を王宮に連れて行かれると伝えられましたのでその準備をさせて貰っています」
「えっ?」
今初めて聞かされた事、「王宮に」という所で俺は驚いてしまった。何で、俺が王族が居る王宮に行かないといけないんだ?!
「な、何で――」
「すみません、クリフ様乱れてしまいますのでお話は後でお願いします」
「ちょ、ちょっ――」
その後、俺は何も言う事は出来ずメイドさん達に服を、綺麗に着させられた俺は次に髪もセットさせていき、メイドさんが「完璧です」と言って、リビングへと連れて行かれた。
「わ~、クリフ君カッコいいよ~」
「うんうん、クリフカッコいい」
「あ、ありがとう。エレミア姉さん、アリエス姉さん」
リビングに入って直ぐに姉さん達に出迎えられ、褒められた俺は一応礼を言って父さん達の所に近づいた。
「父さん、何で僕王宮に行かないといけないの?」
「今回の事で子供でも一応、関わっていたクリフを王宮に連れて来いと手紙が届いてね。まだ、疲労が残っているだろうけど起きたらすぐに連れて参れって書かれていたから、ごめんね。クリフ」
謝った父さんの後に続いて爺ちゃんが「大方、レグルスが呼んだんじゃろうな、王座の間で話したりはしないだろうから気は楽にしておくと良いぞ」と言われた。
「さてと、それじゃリサラ、行ってくるよ」
「……私も行きたいけど、無理なのよね」
「ごめんね。今回は、私と義父さんとクリフだけが呼ばれてるからそれ以外の人は連れて行けないんだ」
父さんがそう言うと、母さんは俺の頬を撫で、「クリフ、行ってらっしゃい」と言って俺達は屋敷から出て、既に王宮からの迎えの馬車が屋敷の前に準備されていたので、それに乗り王宮へと向かった。
「……義父さん、もしクリフに王族が何かしてくる可能性はありますか」
「どうじゃろうな、クリフの凄さはレグルスやアーサー殿下が見ておるからのう。何か、してくる可能性は大じゃのう」
「そうですよね。【悪魔】も対処できる力を持ってますからね……」
父さん達は、馬車に乗ってそんな話をしていた。確かに、俺の力は、この国の前国王であるレグルス王とこの国の王子であるアーサー殿下に見られてる。
「まあ、もしクリフを捕まえようと考えておるんじゃったら儂を敵に回すんじゃからそれ相応の覚悟をしてもらうがのう」
「私も、まだこんな幼いクリフを取られるのであれば、リサラと共に戦いますよ」
「ちょ、ちょっと父さん、爺ちゃん何物騒な事言ってるの?!」
危ない事を言っている父さん達にそう言うと、爺ちゃんが「当り前じゃ、こんなかわいい孫を国に利用されるのじゃったら、儂は全力で潰す」と本気の目をしてそう言った。父さんも、その後に「義父さんと同意見です」と言った。
そんな、物騒な事を言っている2人と共に馬車に揺られる事、数十分馬車が止まり御者の人が馬車の扉を開け、俺達は外に出た。
「うわ、でっけ~」
外に出て、目の前に巨大な城が立っていて俺は素で驚いてしまった。
「クールベルト家のクリム様、クリフ様、そしてリグル様ですね。お待ちしておりました。王は既に部屋で待って居ますので案内します」
馬車を降りると、突然目の前に執事服を着た男性が現れ俺達の名前を言って、王宮の門を開けた。爺ちゃん達は驚きもせず、その男性の後に付いて行き遅れた俺の名前を呼んだ。慌てて、俺は爺ちゃん達の後に付いて行きながら城の中に入った。
(天井たっけぇ~、うわっめっちゃキラッキラッしてるよ。目がいてぇ~)
城の中に入り、俺は周りをキョロキョロとみて驚いていると爺ちゃんに「クリフ、驚くのも分かるが迷子になるぞ」と言われ爺ちゃんに手を握られた。
そして、男性の案内で廊下を歩いて行くと1つの大きな扉の前で止まり、男性が扉をノックすると「着いたか、入ってよいぞ」と聞き覚えのある声が聞こえると男性が扉を開け、中に入った。部屋の中には、レグルス前国王、アーサー殿下、そして父さんと年齢が余り変わらない位の男性がソファに座っていた。
「リグル達、よく来てくれた。今回は、正式な会談で呼んだわけじゃないから楽にしてくれ」
「レグルス、もう少し時間をおいてくれても良かったじゃろうが、クリフはまだ目が覚めて1日しか経っておらんのじゃぞ」
「しかし、話し合いは早くにした方が良いと思ってな」
「良いと思ったじゃと? 儂の孫が疲れているのに、話し合いのが大事なのか?」
部屋の中に入って早々、爺ちゃんはレグルス前国王に向かって殺気だだ漏れで文句を言いだした。
「すみません、リグル様、今回王家が何もできずクールベルト家を苦しませてしまった事を先に詫びさせてください。本当に申し訳なかった」
アーサー殿下とレグルス前国王の間に座っていた男性が立ち上がり、頭を下げ爺ちゃんと父さんに向かって謝った。
「……国王が、一般人に頭など簡単に下げるのはよすのじゃ、それにお主が今回の事を寝ずに調べていた事も知っておるからのう。それに、儂が怒っているのはレグルスだけじゃからの、後でレグルスを貸してくれるのじゃったら怒りは収まる」
「はい、分かりました。父上、そう言う事なので生贄としてリグル様の所へ後で行ってきたください」
「おいッ! 仮にも前国王を売るとはどういうことだ! それに、儂はお主の父だぞ!」
「その父で一国より怖いリグル様の怒りを鎮めれるのであれば、私は売ります」
何故か、目の前では前国王と現王様が言い争いを始め、その2人を宥める様にアーサー殿下が「落ち着いてください、父上、お爺様」と慌てていて、それを見ていた爺ちゃんは笑っていた。父さんは、アーサー殿下と同様慌てていて、爺ちゃんに何かを言っていたが、爺ちゃんは聞いていなかった。
(なにこの、カオスな空間……)
この場で、落ち着いていたのは、俺と執事さんだけであった。