第21話
ドラゴンの背中の人影は、そのまま背中の上に立ち飛び降りた。飛び降りた人は、俺達の目の前にシュタッと上空から落ちてきたはずなのに大きな音を起てずに現れた。
「義父さん、何故ここにクリフが居るのですか?!」
「んっ? ああ、クリムか、いやクリフには倒れた兵士の回復役を頼んでいたんじゃよ。この子、お主は知らないと思うが中々魔法の腕が良くてのう。儂が教えた事は、直ぐに取り込んでしまうんじゃよ」
「クリフが魔法を?! まだ、クリフは3歳ですよ?!」
現れたのは、俺の父さんだった。父さんが乗って居たドラゴンは爺ちゃんの召喚獣が戻る時と同じような光り方をしていたので、あのドラゴンは父さんの召喚獣なんだろう。
そんな事を考えていると、爺ちゃんと父さんが言い合いをしていた。まあ、言い合いの内容は俺の事なんだけど、父さんは「まだ、小さい子供を戦場に……」と言い、爺ちゃんは「クリフは、回復も使えるし身の回りも儂が教えたから大丈夫……」と言い、2人は戦場の中で喧嘩をしていた。
「仲間割れなんて、してんじゃねえ! ヘへ、ガキ、お前が回復をしていたのを見てたからな、先にやらせてもらうぜ!」
いつの間にか俺の後ろへと回ってきていた帝国兵に大きな手で俺の頭を捕まえられ持ち上げられた。
「「汚い手で、「孫」「クリフ」に触るなッ!」」
「グェッ!」
喧嘩していた爺ちゃんと父さんは、一瞬にして持っていた片手剣で帝国兵の腕を切り飛ばし、爺ちゃんが俺が落ちる前につかまえてくれ、父さんが両腕を失った帝国兵の胴体へ炎の玉をぶつけて焼き払った。
「……取りあえず、クリフの事はもう良いです。私より、お義父さんの方がクリフの事を知っているのは分かっています。しかし、危なくなったら直ぐにこの場から離脱させます。良いですか?」
「うむ、クリフが危なくなる前に帝国兵なんぞ塵にしてしまうがのう」
「お義父さん、一応レグルス様より帝国兵を何人かは生け捕りにして来いと言われていますので程々にしてくださいね」
「なんじゃ、つまらんのう。折角、楽しくなってきたのに……」
「仕方ありませんよ。それに、今回の【悪魔騒動】に帝国が繋がっているかもしれませんので」
父さんがそう言うと、爺ちゃんは渋々了承し2人は攻めてきている帝国兵の方へと向かって行った。
俺も、着いて行こうとしたら父さんから「クリフは、兵士達の回復役を頼むね?」と『ここから、先は来ちゃだめだぞ』と言う風にも聞こえる様に言ってきたので、大人しく俺は攻めてきている帝国兵の所には行かず、この場で戦っているクールベルト家の兵士達に回復魔法を掛けながら走り回った。
途中、襲い掛かって来た帝国兵士は何故か途中から着いて来ていたクールベルト家の青年の兵士が倒して行った。俺的には、人間を倒しても経験値が入ると思うから自分で倒したかったのだが「クリム様の子供ですから、傷をつけてしまうと私達が叱られますので」と、いつそんな事を話したのか知らないがいつの間にか俺に兵士が付けられていた。
「クルディさん、避けて」
「はい?」
着いて来ている青年兵士、名前は【クルディ・ヴァーナス】さんは後ろから襲い掛かってきていた帝国兵士に気づいていなかったので、俺は後ろを振り向き避ける様に指示し持っていた弓で後頭部を射抜いた。
「あ、ありがとうございます。クリフ様、しかし良くお気づきになりましたね」
「まあ、これでも爺ちゃんに色々と教えて貰ってるからね。気配察知のスキルは持ってないけどある程度の人の動きは山で修行している内に身についたからね。危なくなったら、言うね」
「は、はい。申し訳ありません。自分、まだまだ兵士になったばかりで実力が乏しいので……」
クルディさんは、見た目は2m有り体格も良いのだが、少しの間行動していて分かったのは【片手剣と相性が悪そう】だった。何故、この体格で片手剣を使っているのか分からないが、全く持って合っていなかった。この体格なら、普通〝大剣〟か〝斧〟か〝棍棒〟辺りが使いやすそうなのに……
「ねえ、何でクルディさんは片手剣を使ってるの? その体格なら、大剣とかのが使いやすくないの?」
「……えっと、この事は他の兵士やクリム様に言わないでくださいね? 実は、自分、クールベルト家の兵士になる前から剣という物に触れた事が無いんです。昔は、【斧】を使い魔物を倒したりしていたのですが、生活が厳しくなってしまい。職を探そうとしていた所、クールベルト家の兵士の雇用が、あったので志願したのです。ですが、クールベル家は【剣】を使う兵隊だった事を、志願した後に知りまして、どうしようか悩みましたがこの体格のおかげで大剣を使用し模擬戦に圧勝して入団する事が出来たのですが、入団して1年経ったのですが、全く剣術のスキルが上がらないのです」
うん、クルディさんの話長かったけど短く纏めると『剣が使えないのに、入団志願して体格のおかげで勝って入団したけど技術が上がらない』と言う訳だった。
「う~ん、それなら一度父さんに言ってみたら? 父さんもこの戦でも活躍しているクルディさんを「剣が使えない」からって言って捨てたりしないだろうし」
「で、ですが嘘をついて入団してしまった事実は……」
「人には、間違いを犯す事はあるから大丈夫だよ。僕からも一応言って見るから、クルディさんも落ち着いた時期に父さんに話してみたら?」
そう言うと、クルディさんは少し考えて「そうですね。嘘をつき続ける方がよくないですし」と言っていた。その後、俺とクルディさんは襲ってくる帝国兵を倒しながら、味方の支援を続けた。20分位経って、帝国兵の数が少なくなってきて更に10分位した後、爺ちゃん達が向かった先に煙が起ち、後ろで見ていたクルディさんが「戦が終わりました。クリム様達がやったのでしょう」と言った。
俺は、それを聞いた瞬間、何故か体のあちこちが血は出てないが凄く痛み出し、バタッと地面に倒れた。
「ク、クリフ様!」
最後にクルディさんの慌てた言葉を聞いた後の事は、俺は覚えておらず次に目が覚めた時、そこは戦場ではなかった。
遅れしまい、申し訳ありません。