第2話
俺は爺さんから聞いた話に驚いて、数分間呆然としていた。意識が戻るとさっきまでとは別の場所へと移っていて、爺さんがお茶を飲んでいた。
「えっ? ここは何処ですか?」
「ここは、儂の部屋じゃよ。あんな辛気くさい場所で話すのもなんだしのう。士郎君が驚いている隙にこの部屋に転移したんじゃ」
確かにさっきの場所は何も無く只々白い世界だったな。ここは畳の間にちゃぶ台と座布団が置かれ、爺さんは座布団に座って俺が立ち直るのを待ってくれていた様だ。
「そうだったんですか、すみません。突然自分が未来を変えたなんて言われたもので……」
「ふぉっふぉっふぉっ、良いよい。士郎君の驚いた顔を見れたからのう。……さてと士郎君、そろそろ異世界に行く準備を始めようかの」
「準備ですか?」
「うむ、まず士郎君には異世界に行くと言う事で、10万ポイントから1万ポイント支払って異世界に行く【運命権】を得てもらうのじゃ」
「1万ですか、分かりました。……あっ、そう言えば俺が行く世界とかってどうなっているんですか?」
「そこも説明するからゆっくり聞くんじゃよ。今払ってもらった1万は【転生できる権利】に対してで、次は【どの世界に】かを選ぶのじゃ。世界は色々あって、文明が発達した士郎君の育った【地球】や、科学だけが発達した【科学世界】、多分士郎君が行きたいであろう【ゲームのようなファンタジー世界】、他にも【文明が発達してない世界】や【女が居ない世界】、【古代の世界】等があるのじゃ」
世界ってそんなにあったんだ。俺は爺さんが言った世界の数に驚き「【ゲームのようなファンタジー世界】でお願いします」とお願いした。
「うむ、その世界に行くには15000善行ポイントが必要じゃが良いかの?」
「はい、お願いします」
「分かった。これで転生する世界の選択は終わりじゃ。次に【今の記憶】を次なる世界に引き継ぐかどうかを決めるのじゃ。引き継ぐなら必要な善行ポイントは5000じゃが」
「もちろん、【今の記憶】有りでお願いします」
異世界に転生するのに今の記憶無しで行くのはちょっとな…それに俺的には憧れても居たしな異世界と言う物に。
「……よし、転生の前段階は終わった。次に士郎君の異世界での【ステータス】を決める」
「【ステータス】、急にファンタジー感が出てきましたね」
「そうじゃな。多分士郎君には大体の事は分かるじゃろ?」
「はい、HPやMP、その他に筋力や魔力と言った数値を見れる物ですよね」
「そうじゃのう、見本的にはこんな感じになっておる。これは士郎君の今のステータスじゃ」
爺さんはそう言って、ホログラムの様な板を俺の前に出現させた。俺はその板をじっくりと見た。
✤
ポイント:70000
名前:轟 士郎
年齢:---
種族:---
身分:---
称号:---
加護:---
適正属性:---
適正武器:---
職業:---
レベル:1
ステータスポイント:---
HP 10/ 10
MP 5/5
持久力:1
精神:1
知能:1
物理攻撃力:1
物理防御力:5
魔法攻撃力:1
魔法防御力:5
敏捷:1
運:---
<スキルステータス>
スキルポイント:---
〖スキル〗
〖ユニークスキル〗
〖固有能力〗
✤
「思った以上に色々と分けられてるんですね。HP以外初期値が1と5しか無いってのも気になりますね」
「そうじゃのう、普通の赤ん坊はランダムで数値を入れられるんじゃが、転生者はこの数値から自分達で設定するように決めてあるんじゃよ。それに今はまだ見てないから分からんかもしれんが、職業も多種存在してるぞ」
「……選ぶのが面倒くさそうですね」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ。確かに転生する者達は早くて1時間、遅いと5時間はステータス設定に掛かっておるからのう」
「うわぁ……」
俺が時間を聞き絶望していると「この苦さえ乗り切れば楽しい世界が待っておるぞ」と言われ少し立ち直り、爺さんの話の続きを聞いた。
「さてと、まずは上から設定しておこう。【名前】は転生を選んだ時点で向こうの親が決めるからそこは諦めるのじゃ」
「はい、確かにこの世界で両親に付けて貰った名前は結構気に入ってますが仕方ないですね」
「そうじゃのう。次に【年齢】じゃがこれも向こうに転生するから0歳からじゃが心配する事は無いぞ。ちゃんと出産時の痛みにより失神する転生者が居るかも知れないと【生まれて一週間後に覚醒する】と神界会議で決めてあるからのう」
「そうか、親のあそこから出てくるわけですから相当な……神様達のご配慮ありがとうございます」
誠心誠意心を込めて感謝をすると爺さんから「よいよい、お主達転生者達は元は世界に尽くした者達じゃから儂達神も相応の対応はするのじゃ」と言った。
「それでじゃ、次からが色々と難しいのじゃ。まず【種族】なのじゃが、士郎君が選んだ世界には普通の人間以外に7つの種族【竜人族・魔人族・獣人族・精霊族・小人族・巨人族】が居るのじゃ」
「あれ? 神様が言ったのは6つの種族ですよ?」
「うむ。このさっき言った種族の中に【精霊族】があったであろう? その中に【森の精霊族:エルフ、鉱山に住み鉄を打つ精霊族:ドワーフ】の2種族が入っておるのじゃ。元々は1つの精霊族じゃったんじゃが森と山に別れ、今では精霊族とはほとんど呼ばれず【エルフ族】【ドワーフ族】と呼ばれておるのじゃ。それと、これとは別に人数が少なく種族として認められておらぬ者達【ダークエルフ族】も極僅かに存在しておるのじゃ。そして、どの種族間でも生命を宿す事は出来る世界じゃから【ハーフ】と言うのも存在しておるのじゃ」
「成程、その中から種族を選ぶんですね」
「うむ、先程見せたステータスの【種族】の場所を押せば、消費するポイントと種族の名前が出てくるからじっくり選ぶんじゃよ」
俺は爺さんからそう言われ、ステータスの【種族】をタップすると、バッと新しいホログラムが目の前に出て来た。