第187話
俺とニャトルさんの試合でボロボロになった会場の整備が終わり、第二試合の準備が整ったのでアリエス姉さんとサリアさんが兵士さんに呼ばれて部屋を出て行った。
「ルードさん、サリアさんって強いですか?」
「強いよ。でも、クリフ君のお姉さんも中々の強者だからいい勝負をすると思うな」
サリアさんの実力をルードさんに聞くとそう帰って来たので、俺は姉さんが勝つ事を願いつつ、会場の方へと目線をやった。姉さん達が出て行った十数分後、試合開始の合図が鳴り姉さん達の試合が始まった。
始まって直ぐに姉さんとサリアさんは、互いに剣を持ち突っ込み、激しい剣のぶつかり合いが始まった。互いに剣士と言う事で魔法や【獣化】を使わず、ただただ純粋な実力だけで二人は勝負を続けた。
しかし、四天王と呼ばれているだけありサリアの剣術に押され気味である姉さんであったが、途中から何かが吹っ切れたのか、それまでの動きとは違う動きを始めた。それには、俺も覚えがあり以前、特訓をしている際に姉さんが編み出した剣術の一つなのだが、周りへの妨害もある為に封印した技であった。
「凄いな、クリフ君のお姉さんは、あのサリアに剣術勝負で互角にやりあってるよ」
「えぇ、姉さんも俺と同じく小さい頃から剣術を習ってきてますし、最近だと迷宮に潜ってレベル上げを頑張ってましたからね」
「能力的にもそうだけど、精神的にも凄いよ彼女は、サリアは素で相手に圧を掛ける癖があるんだけど、それを気にせずあそこまでやってるからね」
ルードさんは姉さんの能力面・精神面を褒めると、そこで試合の状況が一変した。先程まで、互角にやり合っていた姉さんだが剣を持つ手が一瞬ズレ、そのズレのせいで生じた隙にサリアさんが剣を振るい、姉さんの剣を場外まで吹き飛ばし、姉さんは負けを認めた。
「剣術同士の戦いは見ごたえがあって楽しかったな」
ガルドさんが姉さん達の戦いに感想を言うと、ルードさんも「確かに、そうだな」と共感していた。
その後、姉さん達の試合では会場に少しヒビが入った程度だったので直ぐに修復が終わり、第三試合のルードさんとガルドさんが部屋を出て行き、会場に向かった。
「まあ、この試合はルードの圧勝だろうな」
会場を見ていると、今まで奥の方でジッとしていた最後の四天王の一人レオルドさんが俺の近くに寄って来てそう言った。
「ガルドさんは手も足も出ないと?」
「ああ、彼奴の強さはお前も知っているだろう? 彼奴は四天王の中でも最強だ。王との模擬選でも何度も勝利をしている。獣人国最強はルードなんだよ」
「そうなんですか……まあ、でも俺の仲間を下に見るのはやめて頂けませんか? ガルドさんだって、強いんですからね」
「そうですよ。それに、ガルドさんは私達の中で冒険者歴も一番長いんだから!」
レオルドさんに対して俺とルーネがそう言い返すのと同時に試合開始の合図が鳴ったので、俺達はパッと会場の方を向いた。そして、そこにはガルドさんとルードさんは互いに素手で殴り合いをしている姿が映し出された。
ガルドさんとルードさんは、体格がほぼ一緒な二人の体術勝負はそれはそれは見ごたえのあるものであった。殴られたら、殴り返し、蹴られたら、蹴り返し……何度も何度もガルドさんとルードさんは互いの体一つで勝負を続け、何十分と戦った結果、ガルドさんは前のめりに倒れ試合は終わった。
「……クリフとルーネと言ったな、先の仲間を侮辱する言葉を謝罪させてほしい。すまなかった。君らの仲間は俺達の最強と一歩も引かず最後まで戦った勇敢で強い戦士だったよ」
「理解して頂けたなら良かったです」
「私も」
ガルドさんの試合の結果は負けたが、その戦いに思う所あったのかレオルドさんはそう謝罪をした。そして、ルーネに対して「最後の試合、私も全力でやらせてもらう」と言い、それから第三試合の片付けが終わり第四試合のルーネとレオルドさんの試合が始まると、試合開始1分で小柄で軽いルーネをレオルドさんは死角から持ち上げ、一瞬にして場外へと飛ばし、試合終了となった。




