第178話
旅に出て数日が経ち、いつもの様に狼達と一緒に朝食を食べた俺達は、移動を開始した。最近は天気も良く、快晴であり道中暇だったので空を飛びながら進んでいると前方で冒険者らしき人物達が魔物から逃げている所を発見した。
「ガルドさん、前の方で冒険者が困っている様子なので助けてきますね。皆をお願いします」
「了解」
前方の状況を伝えて俺は冒険者達の所へと向かった。その冒険者達は、全員が獣人族であり逃げ足は速そうではあったか魔物もウルフ種で足の速い魔物だったせいで逃げ切る事が出来ていない様子だった。
「すみませんが、助けは必要ですか?」
「ッ! た、頼む助けてくれ!」
逃げている冒険者達の中で一番後ろを走っていた獣人族の男から「助けてくれ」と返事を帰って来た俺は、襲ってきているウルフ達を討伐した。ウルフが死んだ事で安全になった冒険者達は倒れる様に地面に横になった。
「ゼ~ゼ~、本当に死ぬかと思った~!」
俺が声を掛けた男が地べたに横になりそう叫んだ。その声に同調するように他の冒険者達も「疲れた」と言っていた。
「っと、その前に助けてくれてありがとう。俺はこのパーティーのリーダー、ヴルグだ」
「俺はクリフです。同業者が困っていたら助けてやるのが筋ですからね。それにしても貴方達は何故こんな所を? ここら辺には街も無いですし、見たところ馬車が近くにある訳でもなさそうですが?」
「ああ、それは俺等が今国に帰っている途中なんだよ。荷物は全部俺がアイテムボックスで持ってるんだよ。馬車を買う金は俺達には無いからな」
そう男が言うと、パーティーの一人が「リーダーが全部食料にして、馬車を買う金が無かっただけだろうが!」と怒鳴っていた。
「国と言う事は、獣人国ですか?」
「ああ、そうなんだよ。港まで行けば後は船に乗るだけだから、港まで頑張って行くかって出発したんだがまさかここら辺の森の魔物がこんだけ強いとは思わなかったよ」
ヴルグは疲れたようにそう言った。その時、丁度皆もこっちに着いたみたいなのでそれぞれが挨拶をし、同じく獣人国を目指している彼等を一緒に乗せて行こうと提案すると皆は「いいよ」と了承してくれた。
「と言う訳で、港まで送りますよ」
「おぉ! 助かる。本当に色々とありがとう!」
「「ありがとう!」」
ヴルグさんとその仲間は俺達に対して深く頭を下げて、荷台に乗った。それから、一緒に荷台の中で色んな話をしていると潮風が吹いている事に気が付き外に出てそらわ飛んでみると、目的地でもあった港町に着いた。
「クリフ達、何処かであったらよろしくな」
「はい、無事に国に帰れるように俺も祈ってますよ」
ヴルグさん達は今日発の船のチケットを持っていたみたいで、それを使って先に獣人国へと向かう船に乗り込んだ。俺達は、チケットを購入していなかったので船着き場で明日出航予定の船のチケットを人数分購入し、今日は宿に泊まる為に宿探しを始めた。
その後、宿探しは直ぐに終わり、港町と言う事で見た事も無い物があるかも知れないという事で皆で市場へと出かけた。
「わっ、クリフ君。あの魚美味しそうだね」
「クリフ君あっちのも凄いよ!」
アリス、ルーネ、そしてルーネと同じくルーシェとアンネも市場に着くと興奮したように色んな物を指さして俺に教えてくれた。獣人国へ行く際にここを使っていたミケと、何度も来た事があるガルドさんは落ち着いていた。それから、俺達は色んな店で珍しい物、美味しそうな物を購入して、旅の疲れも溜まっているので宿に戻った。
「それじゃ、明日の船が出る時間の一時間前までは自由時間にするから、ここで解散だ」
宿に戻って来た俺は、皆にそう言うとアリス達は先程行って来たばかりの市場へ再度行き、ルーシェ達も付いて行った。ガルドさんは、皆の監視役として付いて行くと言ったので宿に残ったのは俺だけとなった。
「ふ~む、皆は今遊んでるけど俺は明日の朝遊ぼうかな……」
俺はそう考えながらベッドに横になり、夕食まで眠る事にした。