第172話
王都の全ての迷宮を攻略した俺達は、王都でのやるべき事は終わったので俺が成人を迎えるまではゆっくりと普通の依頼でも受けながら過ごす事にした。
自由に過ごすと言って数日は、皆迷宮の疲れを取るために休んでいたが既に冒険者として過ごす時間も長くなってきているのでジッとしておけずに直ぐに依頼を受け始めていた。
「クリフ。そっちに一匹いっちまった!」
「了解ッと」
そして俺は今、ガルドさんと二人で3つの迷宮をどんなに早く潜れるか最高タイムを狙って潜りに来ていた。第一の迷宮は、初日に出すことが出来たので今は第二の迷宮のタイムに挑んでいた。
何故、ガルドさんと二人なのかと言うとアリスとミケはルーネ達と一緒に依頼に出ており、ロックさんはガルフさんが鍛えてやると言って連れて行ってるので残った俺とガルドさんでこの遊びをやっていた。
「でも残ったのがガルドさんで良かった気がしますよ。俺の動きにもついてこれてますし」
「ギリッギリな、クリフ。もう少し早さ落とせねぇのか?」
「でも、誰にも抜かれない最高タイムを出しましょうって言った時に乗ったのはガルドさんじゃないですか? 頑張りましょうよ」
「……言わなきゃよかったぜ」
その後もガルドさんは文句を言うが、俺にシッカリと付いてきて第二の迷宮の最高タイムを出すことが出来た。その記録に対してギルドマスターも驚き、これなら抜かれる事はほぼ無いだろうと言われた。
「さてと、それじゃガルドさん第三の迷宮はまた数日後に行きましょうか!」
「……分かったよ。俺も男だ一度言った事は曲げねぇよ!」
ガルドさんは俺の言葉にその様に返答をし、数日後の第三の迷宮を攻略している最中に「男捨ててでもやめときゃよかった」と愚痴を零していた。
そして第三の迷宮の最高タイムを出した俺達は、ギルドマスターから賞状とバッチを貰った。そのバッチは今までに記録を塗り替えた者だけしかもらえておらず、持っている者は数少ないと言われた。
「うう、俺頑張って良かった……」
ガルドさんはそのバッチと賞状を握りしめて涙を流し、ギルドマスターはガルドさんの肩をポンッと叩くと「よくクリフに付いて行けたよ」と褒めていた。賞状等を受け取った後、ガルドさんとは別れて家に帰宅すると姉さん達が「クリフ君。やっと帰って来た~!」と言って抱き着いて来た。
「ふふふ、本当にアリエス達はクリフの事が好きよね」
「「うん!」」
母さんの言葉に姉さん達はそう答えて、俺は姉さん達に抱き着かれたままリビングのソファーまで移動した。そう言えば、姉さん達は学園に通っているが将来何になるのか聞いていなかったと思い抱き着いている姉さん達に「姉さん達って将来何になるの?」と聞いた。
「う~ん、まだ決まってないのよね。私ってほら学園では大人しく振舞ってるけど、落ち着いておくのって無理なのよね。どちらかと言うと体を動かしたい方だから、クリフ君と一緒に冒険者になるって言うのも有りかと思ってるわ」
「私は、今勉強している薬学をクリフ君の為に活かせる様になりたいわ」
アリエス姉さん、エレミア姉さんの順にそう言うと母さんが「あらあら、二人ともクリフの為に頑張ってるのね」と言うと姉さん達は「愛する弟の為」と言った。
「成程、だったら姉さん達も俺のクランに入る? 丁度、前衛にもう一人欲しいと思ってたところだし、薬学の知識は合って損はしないからね」
「「良いの!?」」
「うん。でも、俺が成人したらこの国から出る予定だから母さんたちが良いならだけどね」
俺がそう言うと姉さん達は母さんの所へ行き、許しを受けに行った。俺の予想では「駄目」と言われるだろうなと思っていると、母さんは二つ返事で「良いわよ」と返答した。
「えっ? 良いの」
「うん。だって、アリエス達が行きたいんなら仕方ないでしょ? それにクリフの近くのが何かと安全だと思うからね。アイラも私よりクリフのが適任だと思っているわ」
母さんがそう言うと、許可を得た姉さん達は「卒業後よろしくね。クリフ君」と言って抱き着いて来た。
(ああ、考え無しに言うんじゃなかったな、でも男に二言は無いし……ガルドさんの気持ちが何となくわかった気がする)
俺は心の中でそんな事を思いながら抱き着いてきている姉さん達の頭を撫でて、いつ皆に伝えようかと悩み始めた。




