第171話
新しくクランメンバーとしてロックさんを出迎えようと思った俺は、数日後クランメンバーに話を通すのでその日まで宿で暮らしてくださいと言って王都の普通の宿に数日間泊めさせてもらう手続きを行い代金を俺が払った。
「今はちょっとクランメンバーがそれぞれ金策に出掛けていますので、その間に王都に慣れておいてください」
「わ、分かりました。宿の代金や生活費を出していただきありがとうございます」
ロックさんは丁寧に俺にお辞儀をして感謝の言葉を言った。
そして数日後、金策終了日にロックさんと共にクランハウスへとやって来た俺は、皆にロックさんを紹介した。紹介する際に王都にやってきた時に持っていた自作の武器をテーブルに並べて皆に評価してもらうと、十分良い鍛冶師だと判定され皆もロックさんのクランへの参加を認めた。
「よし、取りあえず目標だったメンバーの補充に十分な金も用意できたから、クランとしての活動を始めて行こうと思う」
「やっとだね~、僕楽しみにしてたんだ~」
俺の言葉にアリスがそう答えると、他の面々も同意見の様でワクワクとした感じで俺の言葉を待っていた。
「当初考えていた通り、まずは迷宮の完全攻略をしようと思う。皆は第一・第二の迷宮は攻略済みだよな?」
「うん」
「私達も攻略済みですよ」
「俺も王都に来た際に入ってたパーティーと攻略はしたな」
既に攻略をしていると言ったアリス・ルーネ・ガルドさんに「それじゃ、最後の第三の迷宮だけだね」と言った。
「多分だけど、今回の金策のおかげで皆のレベルも大分上がったと思うから、休暇期間を考慮して迷宮へ行くのは一週間後で良いと思ってるけど、どうかな?」
そう言うと、皆は「賛成」と言ってくれたので金策の疲労を取ってから迷宮へ行く事が決定した。それと、ロックが何処の部屋に住むかの議題になりロック本人の希望通りに鍛冶スペースとして確保していた庭に建てた小屋に一番近い部屋に住む事になった。
そして休暇期間が終わり、クランメンバー総出で第三の迷宮〝ハルヴァン〟へと入って行った。
「やっぱり、クリフ君と一緒だと迷宮の進み具合が断然違うね」
そう言ったのはルーネで、ガルフさんやアリス達も頷いていた。そして、初めて一緒に迷宮に入ったロックさんは「前の方達よりクリフさん達の方が進みが早いです」と言っていた。
その後、俺達は探索の歩みを落とさず戦闘も極力長引かせずに進み、今日だけで20階層を進むことが出来た。
「それじゃ、今日はここらへんで休むとするか」
「はーい」
俺の言葉にアリスが返事をすると、他の面々も持っていた荷物を置いてテントなどの準備を始めた。俺も俺で、食事の準備や魔物が寄ってこない為の壁を作ったりシャワー室を作ったりして、テントの組み立てが終わったメンバーからシャワーに入り、皆それぞれ汗と汚れを綺麗に落とした状態で食事をした。
その際にロックさんが「こんな迷宮の過ごし方したことがありません」と混乱しているとアリスが「クリフ君と居たら常識は大体通じないから慣れないと」と言っていた。
「その言い方はちょっと俺に失礼じゃないか?」
「そうかな? でも本当の事だし、皆もそう思うよね?」
「うん、まあクリフ君と居たらね……」
「俺もアリスと同意見だな」
皆からそう言われた俺は、少しだけ落ち込んだ。それから、監視の役割分担をして順番に寝る事にした。
そしてそんな生活を2週間程続け、俺達は無事に迷宮探索を終える事が出来た。準備には手間取っていたが、攻略は一瞬だった。その訳は準備期間で俺達がそれぞれ成長し、強敵となる魔物が一切居なかったからだ。
「何だかアッサリと終わったね」
「まあ、言っても王都の中にある迷宮だからな、冒険者も結構出入りしてて魔物の数も少なかったんだと思うよ」
「それはあるな、出入りが多い迷宮は魔物の生成が追いつかないって」
迷宮探索を終えた俺達は一度クランハウスへと帰宅し、荷物を分けてリビングにて反省会を行っていた。まあ、反省会以前に簡単すぎてみんな力を出し切れて無い感じではあった。
「取りあえず、王都を離れる前のやる事は終わったし、後は俺の成人を迎えたら旅に出ようと思う」
そう言うと、ガルフさんが「最初は何処に行くんだ?」と聞いて来た。
「最初は、獣人国へ行こうと考えてます。国が違えば、新たな料理に使える物があるかもしれませんので」
「成程な、クリフの料理は俺達も楽しみだしそれには俺は賛成だな」
「私達も賛成だよ」
「僕も賛成~」
「私も賛成します」
獣人国へ行くという提案にクランメンバー全員が賛成してくれたので、取りあえず俺の成人式まではゆっくりと王都の依頼でも受けながら生活する事として、今日の会議は終了し、疲れを癒す目的で皆で里へ行き温泉に入った。




