第158話
山田屋の店に着いた俺達は、店の奥へ入って行った。奥の部屋で待っててと言われケンタさんが奥から木箱を持って来ると、その箱を開けて中にあった容器を取り出し蓋を開けた。
「これは、祖父のレシピに合った1つで【ミソ】という物でスープにして飲んだりするものらしいんですけど、クリフ様。こちら買いますか?」
「はい、買わせてもらいますよ。ケンタさん、味噌はこの箱にある物ですか?」
「はい、まだ商品化には今しばらく掛かりますがいつもお世話になってるクリフ様には一番最初に知らせたいと父達に言って1箱分作ってもらったんです」
それを聞いた俺はケンタさんに味噌の代金を聞き、一箱分のミソを買った俺はアイテムボックスの中に入れた。
「……そう言えば、ケンタさんのお爺さんって今こっちに居るんですか?」
「ええ、まあ居るのは居るんですけど、祖父は研究家で話すより手を動かせと言うタイプで毎日、研究をしていて族長様の所には父を行かせる人なんです」
「成程……」
俺はそこで少し考え、アイテムボックスから紙とペンを取り出し、この世界の言語では無く〝日本語〟で『貴方と話がしたいです』と書きケンタさんに「これを良かったら、お爺さんに渡してくれませんか?」と言って渡した。
「んっ? この文字は何ですか?」
「ああ、気にしないでくださいちょっとした魔法の呪文の様な物で害はありませんから」
「……はい、分かりました。それでは、祖父に渡しておきますね」
「はい、お願いします」
その後、俺は店先でケンタさんと別れると爺ちゃん達が丁度来たので一緒に倉庫まで歩いて行きレドルの杖を使い、家の地下室に転移して帰って来た。爺ちゃんは「婆さんの所へ行ってくる」と言って出て行ったので残った俺とドラグノフ、留守番をしていたゴレ助でトランプをする事になった。
トランプを初めて30分後、メイドさんの一人が俺達が居る部屋の扉をノックして俺が返事をして中に入れると「ドラグノフ様のお知り合いという方が来ているのですが、どうしますか?」と聞かれた。
「ドラグノフの知り合い?」
「んっ? 我のか? 我がここに居る事は、余り知られてない筈なのだがな……まあ、行って見るとするか」
トランプをアイテムボックスの中に入れ、ゴレ助は元の姿に戻り服の胸ポケットの中に入りメイドさんと一緒に上に上がり玄関に向かった。すると、そこには長身の目がキリッとした銀髪の女性が待って居た。
「よう、久しぶりだね。ドラグノフ」
「なッ!」
女性がドラグノフに軽く手を上げて挨拶をすると、後ろに居たドラグノフは驚き逃げようと後ろに走り出そうとした。しかし、いつの間にか家の中に入っていた女性に阻まれドラグノフは逃走に失敗した。
その後、その女性を連れて地下室で話し合う事になりメイドさんには「仕事に戻って良いよ」と言って地下室に移動した。
「まずは、自己紹介をしとこうかね。私は、銀竜のルー。これでもこの世界の竜のなかでは上位だよ。まっ、そこに居るドラグノフには速さ以外全部負けてるんだけどね」
「えっと、俺はクリフです。一応、ドラグノフと契約した主です」
「うむ、それは知っておるぞ何せリグルの孫だからな、この世界のトップ連中は大概知っておるぞ」
天井から吊るされている魔導電球の光が当たり少しキラキラとしている髪をクルクルと指で弄りながら、ルーさんは言った。
「えっ? 俺って、そんなに有名なんですか?」
「うむ、というか私が広めた。〝リグルの孫がドラグノフを使役した〟とな、そしたら瞬く間に噂が広がって、火竜達が笑い転げて火山に落ちたらしい」
「ルーッ! てめぇ、マジで言い触らしたのか?!」
「当り前よ。こんな面白い事広めないでどうするのよ? 〝時の竜王〟にして〝竜のトップ〟であるドラグノフが従魔になっている。こんな面白話広げないのは馬鹿よ」
ルーさんがそう言うと、ドラグノフは机に頭を叩きつけ「あ~、クソッ! 狭間に引き籠るしかないか……」と何やら、ブツブツと言っていた。
「あの、それで何でルーさんは家に来たんですか?」
「んっ? それは、まあドラグノフを揶揄う為だけど……うん、そうね。クリフ君、ちょっとこっちに来てくれるかしら?」
「えっ? はい、分かりました」
ルーさんに呼ばれた俺は椅子から立ち上がり、ルーさんの近くに寄ると頭に手を乗せられると「はい、終わり。ステータス、確認して見て」と言われたので俺はステータスを開き、何か変わったのか? と思いながら見た。
すると、称号欄に【銀龍の加護】と書かれており、鑑定で内容を確認してみると
【銀龍の加護】
銀龍【ルー】の加護
【加護の能力】
・戦闘時、敏捷が2倍になる
・通常時、最大1.5倍敏捷値を上げる事が出来る
と速さを上げる加護を貰っていた。俺は、それを見て考えた。
(俺の今の敏捷値が13801で鬼人化や強化魔法を抜きで考えると、単純に戦闘時だけど25000の敏捷値になるのか……)
「凄い加護ですね」
「私の加護は、速さに関係するものだから上手く使えば相手の先手を取るのも容易だよ。ドラグノフ相手にも私の速さは通用するからね」
「我が本気になれば、ルーの本気の早さにも勝つことは出来るぞ!」
ルーさんに馬鹿にされたような目で見られたドラグノフは椅子から立ち上がるとそう叫んだ。その言葉を聞いたルーさんは「ほう、なら勝負しようじゃないか」と言って何故かルーさんとドラグノフが勝負する事になった。




