第155話
書斎を出た後、爺ちゃんの部屋に行き「父さんと模擬戦するから、審判して」と頼み先に裏庭に移動した父さんの所へ爺ちゃんと一緒に移動した。
「父さん、今回もハンデ有りでやるの?」
「そうだね……うん、今回は無しで行こうか息子の成長した力と全力で戦いたいしね。でも、剣は危ないから素手でやろうか」
「分かった」
父さんのその言葉を聞いた俺は、心からワクワクしだした。一度は、ギルド試験でハンデ有でなんとか勝てた父さんと今回はガチでやり合える。考えただけで楽しみだ。
「ふむ、なら儂は周りに被害が出ぬ様にすればよいかのう」
「うん、お願い爺ちゃん」
「うむ、任せなさい。思う存分、クリムをボコボコにするんじゃぞ」
爺ちゃんが笑って言うと、父さんは苦笑して「さぁ、始めようか」と言って構えた。俺も父さんに合わせて構えると、爺ちゃんの「始め」という掛け声が聞こえた瞬間、俺と父さんは【鬼人化】を使った。
無詠唱で【鬼人化】を使える俺と違って、詠唱をしないといけない父さんとのその数秒間の間に距離を一瞬にして縮めてリーチ差を埋める為、入り腹部へ蹴りを入れた。
「クッ、流石に痛いね。100の壁を越えた者の攻撃は伊達じゃないよ」
「まだまだ、行くよ。父さん!」
「ああ、こっちも準備が出来たよ。さぁ、次は私からだよ」
蹴りを食らった父さんは、一歩後ろに下がって腹を摩ると【鬼人化】使用時に現れる赤いオーラが出ており、父さんは一瞬にして目の前から消えた。
探知魔法を使って探していたら、その一瞬をつかれると考えた俺は今まで鍛え上げた感知能力で後ろへ下がった。そして、俺が動いた瞬間目の前に父さんが上から落ちて来て、俺が避けた事に驚いていた。
しかし、父さんも歴戦の剣士なだけあって驚いた顔を直ぐに戻すと避けた俺に回し蹴りを放った。
「イッ、こんのッ!」
両手でなんとか蹴りを耐えたが余りの衝撃で数m後方へ押された俺は、【強化魔法】を使い敏捷を爆上げ更に風魔法も使い一気に距離を詰めた。
「くらえッ!」
零距離から雷魔法を父さんに放つと、当たる寸前で身を低くし右へ避けた。
「チッ、魔法はバレるか」
「当り前だよ。リサラと義父さんの戦いを今まで見て来たから、無詠唱だろうと魔法を使用される前に避ける事は出来るよ」
「そりゃ、凄いですね。それなら、コレを食らえ!」
そう叫んだ俺は闇魔法で影から数人の俺を作り出し、全ての俺は【鬼人化】+【強化魔法】を使って父さんに殴りかかった。流石の父さんも幻影の俺相手に少し苦戦をしていたが、一体一体確実に倒されていき、幻影の俺は元の陰に戻って行ってしまった。
そして、本体である俺も父さんに腕を掴まれ地面に叩きつけられた。
「そこまでじゃッ!」
爺ちゃんの制止の声が掛かると父さんは俺の腕から手を離し、「大丈夫かい?」と手を差し出した。
「クソッ、まだ父さんには勝てないか」
「いや、でも結構いい線言ってたよ。クリフがもし、ゴーレムを使った持久戦をされたら私の方が倒されていた可能性もあるしね」
「父さんの相手が出来るゴーレムを作るには魔石が必要だよ。真剣勝負なのに道具使うなんて俺はしない」
そう言って、自分に回復魔法を掛けた俺は立ち上がり父さんにも回復魔法を掛けた。父さんは「ありがと」と言うと服に付いた土をはらった。
「う~む、クリフ達の試合を見てたら儂も戦いとなった……のう、クリフ儂とも勝負せんかのう?」
「やだ。爺ちゃん魔法タイプだから、近接勝負を仕掛けても魔法で負けそうだから」
「ぬぅ……仕方ない。ドラグノフに頼んでみるかのう」
爺ちゃんはそう言うと、地下室に居るであろうドラグノフの所へレドルの杖を使って転移した。この距離で転移使うなよと思ったが、それ程に早く動きたいんだろうなと考えた。
「しかし、クリフは本当に強くなったね」
「お世辞で言われても嬉しくないよ。はぁ、何で転生者なのに義父さんに勝てないんだ」
「う~ん、でももう父さんとの力の差もあんまりないし、後少ししたらクリフには勝てないと思うよ」
拗ねた俺に対し父さんはそう言ってくるが、言われている俺からしたら「どこが?」と言いたい。さっきだって、ワザと攻撃を受けたり躱せれる攻撃を避けなかったり気付いていないと思われてる事が悔しい。
俺はその後、模擬戦で汗をかいたので朝風呂をする為に1人で竜の里へ転移して朝から温泉に浸かりに行った。