第152話
ショーラン王国、三大迷宮の1つ第二のダンジョン【べルーマ】に俺達は数日前から潜っていた。このダンジョンは、第一のダンジョンから階層が更に増えており地下50層にダンジョンボスが居る。
第一のダンジョンをクリアするのに俺達のパーティーが掛かった年月は、数ヵ月も掛からなかったが第二のこのダンジョンに潜り始めて既に1年半が経っていた。
1年半、俺達パーティー3人は各自の担当する分野を磨き今日この日ダンジョン攻略を目指していた。そして、俺達は今ボスがいる1層前の49層で魔物と戦っていた。
「アリス、ミケ。一体、そっちに行った。頼む!」
「分かった。クリフ君!」
「分かりました。クリフ君!」
蛇種の魔物、サーペントが一体俺の横を通り過ぎアリス達の元へ襲い掛かった。しかし、襲い掛かって来たサーペントをアリスの片手剣で吹き飛ばしミケの無詠唱からの繰り出された【ファイアーランス】で焼き尽くした。
「ふぅ、これで終わりだな……アリス、ミケ。この先に安全地帯があるから、そこで休もうか」
「うん、分かったよ」
「はい、そうしましょう」
魔物の死体をアイテムボックスに入れて、俺達は移動した。安全地帯に入った俺達は、アイテムボックスから飲み物を取り出しアリス達に渡して一息ついた。
アリス達と冒険者を初めて、もう直ぐ2年が経つが最初の頃から2人の能力は格段に上がっている。アリスは学園の時から伸びしろがあった剣術・体術といった近接系を極めて行き、ミケは持ち前の索敵能力に合わせ魔法スキルを使って遠距離からの攻撃を今では任せれる様になっていた。
「アリス、さっきサーペントに足噛まれてただろ? 一応、念の為に解毒と回復魔法を掛けておくから見せてくれ」
「うん、ありがとう。クリフ君」
俺が屈んでアリスが俺の方へ足をやり、足に手を当てながら魔法を使った。魔法を掛けた後、暫く3人でボス部屋での役割について話し合った。
第一のダンジョンの時は、自分達で突き進んで何の情報も無く進んで行ったが今回はきちんと情報を集め、確実に攻略する為に色んな人から聞き込みをして来ていた。
「ここのボスは鬼種の【ハイオーガ】が1体だけらしいが、オーガの上位種なだけあって、その体は堅く打撃では無く魔法での攻撃が有効だと聞いた」
「それだと、僕は出番なしかな……魔法は、そんなに得意じゃないし」
「そうだな、アリスは敵の注意を引き付けて欲しい。予め、俺が強化魔法とアリスの【鬼人化】を使ってからボス部屋に入るつもりだが、良いか?」
俺が確認をしながらアリスに言うと「うん、それで良いよ」と笑顔でアリスは了承してくれた。
「アリスが注意を引き付けている間に俺とミケの魔法で攻撃、が今回の作戦だがミケ、MPはまだ大丈夫そうか?」
「はい、まだまだ魔法は打てます」
「そうか、ならこの作戦で行こうか」
その後少し安全地帯で休憩した後、俺達は安全地帯から出発しボス部屋に向かった。そして、ボス部屋に入る前に全員に強化魔法を使い、俺とアリスは【鬼人化】を使って部屋の中に入った。
「グルルルルㇽ―――」
部屋の中には、普通の色のハイオーガが座ってこちらを睨みつけて唸っていた。一瞬の威圧で一歩後ろに下がりかけた俺達だったが、強化魔法と鬼人化で敏捷が上がっているアリスがハイオーガ目掛け駆けた。
「ハァァァ!」
「グルァ!」
背に担いでいた大剣を片手で持ち上げたハイオーガは、アリスの片手剣を簡単に弾き返した。アリスはハイオーガの強烈な力によって体がよろけたが直ぐに体勢を持ち直し、再度ハイオーガへ攻撃を仕掛けた。
「ミケ、アリスが倒れる前に早くやるぞ」
「はい! 魔法は、どうしますか?」
「ミケは得意な火属性、俺はその火属性の威力を上げる為に風魔法で攻撃をする。タイミングは、俺が言うからそれに合わせてくれ」
俺がそう言うと、ミケは「分かりました」と言って火属性魔法を展開した。俺も風魔法を展開し、アリスがハイオーガの注意を引き付けているのを見てタイミングを計った。
「アリス、退け!」
俺の言葉が聞こえたアリスはハイオーガの大剣を体全体で跳ね返し、一瞬の動きで俺達の後ろまで走って戻って来た。そして、ハイオーガがアリスを見失った一瞬に俺は合図を出し、ミケと同時に魔法を放った。
「グルァァァァッ―――」
ハイオーガは、俺とミケの同時魔法攻撃によって巨体を焼き尽くされ炎の勢いが止まらぬまま、焼死した。ハイオーガが死んだのを確認した俺達は、3人共地面に座り深いため息を吐いた。
「やったな……」
「うん、最後は呆気なかったけどあのハイオーガ。本当に強い力だったよ」
「アリスちゃんが囮になってくれたおかげで簡単に攻略で来たね。ありがと、アリスちゃん」
ミケがアリスにそう言うと、アリスが照れたように「アハハ、魔法が得意じゃない僕の仕事をしただけだよ」と笑って言った。その後、俺達はハイオーガの死体をアイテムボックスに入れ、ボス部屋を出て行き上に上がって行った。
新章スタートです。




