第15話
【悪魔】退治が終わった事を外で待って居る執事さんに教え、別室に待っているレグルス前国王と伯爵様、そして後からこの家に着いたアーサー殿下と俺の兄達を執事さんにこの部屋に呼んでもらった。
「バルド殿、【悪魔】は既に居なくなったが憑依されていたこの子は結構疲労が溜っている様じゃから別室に寝かせてやってくれ」
爺ちゃんがそう言うと、現在この家に残っている使用人達が居ないのでレグルス前国王と行動を共にしていた執事さんが、眠っている三女をお姫様抱っこし別室に連れて行った。
「さてと、クリム主は何で魅了なんかにかかったんじゃ? お主も【魅了耐性】を持っていないわけでは無かろう。旅をしていたんじゃから」
「……それが、私でもよく分からないのです。あの方と結婚した後、確かに自分の気持ちはハッキリと覚えていますが、3年前位から段々と自分の意識が保てなくなってたんです」
「ふむ、確か魅了は長時間浴び続けていると効果が高まると聞いた事がある。しかし、そんなになるまで気が付かないとはクリム、何をしていたんだ?」
「……すみません、気を許し過ぎていました。あれ程、義父さんから「身の回りは用心しろ」と言われていたのに」
父さんはそう言うと、もう一度俺と爺ちゃんに頭を下げた。爺ちゃんはそれを見て「もう、よい。過ぎた事じゃ、それよりこれからの事を考えないといけない」と言って部屋に居る者全員を見渡した。
「まず、レグルスよ。今回の事、知っている者はどれ程いるのじゃ?」
「そうだな、【魅了】だと分かっていたのは儂とバルドとアーサー、それとクリムの息子達だな、後の者達はひと時の間だけだったから魅了だと気づかんかったよ」
「成程のう、魅了にかかっていた者はこの国にどのくらいいるんじゃ?」
「それは、私から申し上げます。あの方から魅了された者は、まず子爵家に仕えている兵士達、現国王にも使いましたが、それは自分達の結婚の時に反対させない為でしょう。私もその時に掛けられたのですが耐性があったおかげで大丈夫でしたが、あの魔法を見た瞬間、国が危険だと思い祖父と話をしていました」
アーサー殿下の話を聞いた爺ちゃんは「ふむふむ」と言って顎を撫で、父さんの方を向いた。
「お主は、どうしたい?」
「……確かに魅了を使っていたかもしれませんが、あの子自身には罪は無いと思います」
「ふむ……クリムも儂と同じ考えじゃのう。のう、レグルス儂はあの子を殺すことは出来ないのじゃがお主の考えはどうなんじゃ?」
「リグル、儂も伯爵の娘を殺そうとは思わないが、どうするんだ?」
レグルス前国王は爺ちゃんにそう問いただした。爺ちゃんは今度は2人の少年の向いた。
「お主達、確か自分達はクリムの子では無いと言っておる様じゃが、どうしてじゃ?」
「はい、まず自分の髪を見て貰えれば分かると思いますがクリム様のような赤色でも無いですし、母のような金でもありません。そして、僕達はクリム様のような武術の才能もありません」
少年の髪は、確かに茶髪で俺の父さんとも先程の三女の人の髪色とも似ていなかった。もう1人いる少年の似ている子の方も髪色は茶髪だった。
「成程、なあクリムよ。クリムは、この子達が自分達はクリムの子では無いと言って居るがどうなんじゃ?」
「……この子達も私の子供です。アリエスやエレミア、そしてクリフも私の大切な子供達です」
いつの間にか土下座から普通の体勢で立って居た父さんがそう言った。爺ちゃんは「うむ、そうか」と言って子供たちの頭を撫でた。
「ならば、この子達も儂のかわいい孫じゃ、よろしくのう」
「「は、はい」」
突然、頭を撫でられた2人の少年は驚きながらも返事をした。そこで、無視をされていたレグルス前国王が「リグル、結局何がしたいんか」と大きな声で言った。
「はて、儂はただ孫達と挨拶をしただけじゃ、すぐ怒ると禿げるぞ」
「なッ! 儂はまだ禿げん! それより、これからどうするんだ!」
「どうも、普通の生活に戻るだけじゃよ。幸い、魅了に気づいていた者は少ない。それに、今回の件は別に国を危機に陥れた訳では無かろう?」
「……しかし、リグル様、危機にはならなかったかも知れませんがなる可能性はありました。もし、あの方自身が魅了を使えるとしたら今度こそ危険な目にあうかもしれません」
「心配無用じゃ、あの子には魅了は使えんよ。あれは正真正銘【悪魔】が持っていた力じゃった。儂の鑑定眼できちんと確認したからのう」
爺ちゃんの言葉を聞いたアーサー殿下は、爺ちゃんの出すオーラに気おされそれ以上何も言えなかった。しかし、ここで俺は1つ思った事がある。あの2人の少年は誰の子なのかと言う事だ。
「あの、お爺様……」
「なんじゃ?」
「お爺様は先程、鑑定眼とおっしゃいましたが、私達は本当は誰の子なのでしょうか?」
「やはり、気になるかのう。確かに【悪魔】に憑依され、近くに居るものは魅了されていたようじゃが元の人格がクリム以外の者と親しくなる事を拒んでいたようじゃ」
「それなら、私達は本当にクリム様の息子なのですか?」
「うむ、お主達はクリムの子で間違いないぞ」
爺ちゃんがそう言うと2人の少年は泣き、父さんの元へ走り抱きついた。
(と言う事は、あの少年は俺の兄達になるのか……良く見れば、2人ともイケメンだな何処となく父さんの爽やか成分を受け継いでいるみたいで大きくなったら爽やかイケメンが増えるのか)
俺はそんな考え事をしていると爺ちゃんから小声で「クリフは行かなくてよいのか?」と聞かれたが感動のシーンだから俺は邪魔できないと思って「今は行かないよ」と爺ちゃんに小声で返した。
すみません、遅刻しました!