第１４６話
竜の里に転移した俺は、転移場所である倉庫から出て里の中央の方へ移動した。中央の近くは、お店が並んでいて日本の食材が色々と売られていた。
八百屋で玉ねぎとニンジンを買ってアイテムボックスの中に入れ、次の店に移動しようと歩いていると、不思議な名前の店を見つけた。
店名は【山田屋】と書かれていて、何の店か分からなかったが最後に屋とい付いていると言う事は何かのお店なんだろうと思い。その店の中に入った。
店の中には、瓶が並んでいた。瓶の中身は、黒くこの世界では余り見ない様な物が並んでいた。
「いらっしゃい、今日開店した。山田屋へ、ようこそ！」
店の奥から出て来たのは、黒髪黒目の見た目で若いお兄さんだった。
「すみません。この中身って何ですか？」
「はい、こちらは我が山田家に伝わる秘伝のレシピを使い。祖父の代から１００年掛けて、作られた一品。その名は【ショウユ】という物です」
少し期待を持ちつつ聞いた結果、思っていた通りの名前が返って来た俺は「ど、どんな味か舐めさせてもらえますか？」と聞くと「はい、こちらにご用意しております」と店の奥へ通され、小皿に醤油を少し垂らしてもらい舐めた。
味は、醤油そのもので前世の記憶通り味がした。
この里に来た時、族長の家で醤油のかかった豆腐を食べた時に「醤油は何処で手に入りますか？」と聞くと「まだ、製造が追いついていないのでもう暫く出るのは遅れると思います」と言われた時に凄く残念だったが……
「……１本いくらしますか？」
「はい、製造にも少し時間が掛かりますので１本５銀貨になります」
「分かりました。取りあえず、１０本買います」
「ッ！ はい、只今ご準備します」
俺は、この奇跡の出会いに感動しながらアイテムボックスから銀貨を５０枚丁度だし、店主に渡した。そして、店主は奥から木箱を持って来て醤油瓶を１０本その中に入れ「おまたせしました」と渡してくれた。
「ありがとうございます。あの、出来れば名前を教えて貰えますか？ 俺は、クリフと言います」
「私は、山田 ケンタと言います。元は、こことは違う地方に住んで居た部族なんですけど祖父が、その地方では作りたい物が作れないと祖母と父と一緒にこちらに移り住んできたんです」
店名から察していたが、名前が日本人っぽい。こことは違う地方から来たと言う事は、そこは日本人の様な名前の人達が沢山居るのかな？ それともケンタさんの家系だけなのかな？
そんな、疑問を思いつつ俺は醤油瓶が木箱をアイテムボックスの中に入れた。
「あの、これって前に族長の家に渡した事ありますか？」
「はい、完成した物を族長に１つ渡すと「支援は、私からするのでこれの製造を頼みます」と強く言われました」
「ドラゴさん、ナイス……」
俺は心の底からドラゴさんに感謝をし、ケンタさんには「また、使い切ったから来ますね」と言って店を出た。
「いや～、まさかこんな所で醤油と出会えるとは思わなかったな……しかし、本当に名前日本人ぽかったけど何処かに日本の様な地方があるのかな？」
新たな疑問を思いつつ、次の目的地の米屋に着いた。俺は、店の中に入り顔を覚えられた店主に「クリフ君か、今日も買いに来てくれたのかい？」と話しかけられ、俺は数日分の米を買い店主と少し雑談をして店を出た。
店から出た後、暫く歩くとお腹が「ぐ～」と鳴り、昼食を食べて無かった事を思い出した俺は近くの出店で串肉を買い食べながら倉庫へ戻った。別に倉庫以外でも転移は出来るのだが、誰かを巻き込んだりしたら大変なので里では、必ず倉庫で転移する様にしている。
地下室に転移して来た俺は、もう１つの部屋に移動するとドラグノフが部屋の隅で体育座りをして頭を抱えていた。横のテーブルでゴレ助とリバーシーをしていたアーリンに「ドラグノフ、どうしたんだ？」と聞くと「帰って来て、ずっとアレよ」と言った。
「ドラグノフ、大丈夫か～？」
「……クリフ、もし我が居なくなったら時の狭間で死んだと思ってくれ、我は長く行き過ぎた」
「ちょっと、ドラグノフ。本当にどうしたんだよ！」
ドラグノフは溜息を吐き、更に顔を深く沈めた。今のドラグノフには何を言っても無駄みたいだと分かり、俺はアーリンに「もし、ドラグノフが本当に狭間に行きそうになったら止めてくれ」と言って俺は部屋から出て行き、ダンジョンに行く事を先に父さんに伝えておこうと思い地下室から父さんが居るであろう書斎に向かった。
書斎に着き、中にノックすると中から父さんの声が聞こえたので部屋に入りダンジョンの事を伝えた。それから何故か、夕方まで父さんの書類作業を手伝う事になった。
新作を投稿しました。よければそちらも読んでみてください。
名前はまだ無い、異世界転生者の物語：https://ncode.syosetu.com/n8643en/
