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第10話 リサラ視点


 私はエルフの族長の娘としてこの世界に生まれ50年位、里を出ず他のエルフの友達と毎日楽しく過ごしていた。そんなある日、私の父が病気に罹り里では手に入らない薬草で作られる薬が必要だった。父の病気を治すために私は調べ病気を治すための薬草が生えている所を見つけた。その薬草がある場所はこの大陸の王都の近くにある【迷宮(ダンジョン)】の中層に生えていると書かれていた。


 治す手段があると分かった私は直ぐに里を飛び出し王都へ向かった。幸い私は魔法の腕は里の中でもトップで魔導神様の加護で無詠唱が使えた。1人でダンジョンに行くのは厳しいと考えた私は冒険者ギルドへと行きその時偶々パーティーメンバーを募集していたのが未来の旦那であるクリムだった。クリムも又、友人が父と同じ病気で自分が薬草を採ってくると言いパーティーメンバーを募集していた。しかし、クリムの見た目は当時ヒョロヒョロとしていて服装もキラキラしていて見た感じで貴族だと分かる格好をしていて他の冒険者はクリムから遠ざかっていた。私は目的が一緒で前衛タイプのクリムとパーティを組み2人でダンジョンへと向かった。


「クリムさん、前からゴブリンの集団10体来ます」


「はい、リサラさん」


 初対面で互いに「さん」付けで呼び合い中々良いコンビネーションでダンジョンの魔物を倒し階層を下りて行き目的の中層へと辿り着いた。私達は早速目的の薬草を探した。


「クリムさん、ありましたよ!」


「本当ですか!」


 あの時、先に見つけたのは私で薬草があった場所は天井付近に生えていて私では届かなかった。しかし、そこはヒョロヒョロでも当時から能力は高かったクリムはヒョイッとジャンプすると生えている薬草を掴み抜き採った。


「どうぞ、リサラさん」


「ありがとうございます。クリムさん」


 クリムが取ってくれた薬草はアイテムボックスと言う空間魔法のスキルを父からスキル書を貰って覚えていたのでその中に入れた。クリムの分の薬草も品質が薬に影響があるので私が預かる事にした。そして、


「リサラさん、本当にありがとうございました。これで、友も病気に勝てそうです。早速調合屋へ行ってきますね」


 クリムがそう言って去ろうとした時なぜか私はクリムに「あっ、私自分で調合できるんだけど父の分と一緒にクリムさんの分も調合しましょうか」と聞いた。

 クリムはその時、「調合も出来るんですか?! 凄いですね。それじゃ、お願いします」と言い私達は冒険者ギルドの調合室を借り私は薬を調合し、クリムはその間友人の話をしてくれた。その友人は子供の頃から病気に罹りやすく今回は、偶々家に備えられていた筈の薬が切れていて、急遽クリムが薬草を採りに行く事になったと話をしてくれた。


 そして、薬の調合が終わると私達はギルドで別れ、私は急いで父が待って居る里へ帰った。里に帰って来た時、父の病状は結構危ない所まで進んではいたけれど今回作った薬には、このエルフの里に代々守っている【神の泉】の水を使っていたので、直ぐに体調が良くなり2日後には、「寝てた分体が鈍っておるわい」と言って若手の守り人と組み手をしていた。

 【神の泉】の水は神が昔作った物だと伝えられていて、この泉の水の効果それは素晴らしい力があった。だから、私達エルフの里の人間は代々この泉を守り続けている。


 それから、1年余りが過ぎ私はこの里を出ることにした。父とは最後まで喧嘩していたが「私は人間の住む町や獣人が住む国を見てみたい」と言い最初は喧嘩別れの様に飛び出したが後に何処からか私の居場所を見つけ「リサラの好きな様に生きなさい。でも、1年に1度は手紙を5年に一回は里に帰ってきておくれ」と書いてあったので私はその手紙の約束を守り1年に最低1度手紙を書き、5年に1度里に帰る様にした。しかし、1度目の5年間の内に私は想い人であるクリムを連れて里に帰った時は父は大暴れをしていたのは良い思い出である。

 私は、里を出た後もう一度王都へと訪れもしかしたら、もう一度クリムと会えるかなと思いギルドへ行くと、そこには1年前はヒョロヒョロとしていた肉体を鍛え筋肉が浮き出てるクリムが居た。何故こんなに変わっているのに一目でわかったのか当時の私は疑問にも思わなかった。クリムは私を見つけるなり笑いながらこちらへと歩いてきた。


「リサラさん、久しぶりです。あの後、僕の友人の病気も治りその後新たに病気に罹らず元気に過ごしていますよ」


「そうなのですか、良かったです。……クリムさん、随分お体を鍛えましたね。1年前とは比べ物に成りませんよ」


「ハハハ、リサラさんから「ヒョロヒョロしてる」と言われて少し悲しかったのでもし次会う時までにはと毎日鍛錬を欠かさずやっていたんですよ」


「えっ? 口に出てました?」


「ええ、初めてギルドで会った時にボソッとですけど、まあ今思えば当時の僕の体はヒョロヒョロしてましたからね言われて当然ですよ」


 とクリムは笑いながらそう言った。その後、「久しぶりに会ったのでお話をしたいので何処かご飯でも食べながら話しませんか?」と言われクリムの行きつけの食堂へと2人で入りその店の人気メニューである【オーク肉の焼肉セット】というのを注文した。今でも覚えているあの濃い味は私の中では忘れられない食べ物の中の一品だ。

 メニューを注文した後クリムは「あっ」と言い私の方を見た。


「あっ、リサラさんはエルフだから肉って大丈夫でしたか?」


「ええ、栄養になる物は森では木の実や野菜などの育てられるもので賄っていますが時に鹿や鳥なども食べますので平気ですよ」


 昔のエルフは「肉禁止・魚禁止」とどの部族でも決められていたらしいがあるエルフが「そんなの感謝して食ってるなら、肉でも野菜でも変わんない!」と肉・魚食べたいエルフは後に沢山現れ食べたいエルフと食べたく無いエルフで部族が分かれて行ったそうだ。

 そして、私の里の部族は「食材に感謝を」という言葉さえ忘れず食べる前に言えば、肉でも魚でも野菜でもどれを食べても良いというルールであった。それをクリムに話をすると「エルフの中でもそういった争いがあったのですね」と驚かれた。

 私は逆にクリムに注文して貰ったオーク肉の焼肉セットの味に驚いた。肉自体の旨味が最大限出ていてその上にこの食堂の秘蔵のタレで味付けされた肉は今まで食べた食べ物の中で一番おいしかった。


「良かった。リサラさんに喜んでもらえて」


「私もこんなにおいしい物食べさせてもらい嬉しいです」


 2人でそう言いあっていると食堂の大将さんから「クリム様も遂に女が出来たのか、これで儂らも安心じゃ」と笑って言った。それを言われた当の私達は二人顔を真っ赤にして俯いてしまった。確かに私はクリムに好意を抱いているがクリムは私に友人を助けてくれた恩人だと思っているくらいだと私は心の中で言いくるめパッと顔を上げるとクリムが真剣な顔をしていた。


「リサラさん、もしよろしければこの後お時間ありますか?」


 と言われた私は特に用事もないので、「はい、大丈夫ですよ」とクリムに言うと「良かった……」と呟きまた夜ギルドで待ち合わせしましょうと言われた。

 私はクリムが何をしようとしているのか分からず今日宿を取っていた主人に「すみません、用事で出てきますので夜遅くに帰って来るかも知れません」と伝えギルドへと向かった。ギルドに着いた私は入口にクリムが綺麗な服に身を包んでいるのが見えた。


「ごめんなさい、クリムさん遅くなりましたわ」


「いえ、僕が早く来てしまっただけです。それじゃ行きましょう」


 そう言ってクリムは私の手を取り道を歩いて行った。そして、王都の西端にある小さな花園に来た私は周りを見ると綺麗な花が咲き乱れ、街の方は光を照らす魔具によって綺麗な輝きを見せていた。


「リサラさん、急な事ですが私クリム・ファウス・クールベルトは一目見た時からリサラさんの事が好きでした。どうか、私と付き合ってもらえませんか」


 クリムはそう言って私に用意していた指輪を差し出した。私は少し戸惑ったが自分がクリムに好意を寄せていることは知っていたがクリムもまた私に好意を持っていたことが分かり嬉し涙を流した。


「…はい、よろしくお願いしますクリムさん」


「ッ! ありがとうございます!」


 クリムはそう言って、私を抱き寄せてくれた。その後、私はクリムと共に大陸を旅した。時に魔物に脅かされている村を助けたり、時に生贄を差し出さないと破壊すると脅すドラゴンを倒したり、時に獣人に勝負を挑まれたり、私達は色んなことをした。

 そして、その話をいつも王都に戻って来てはクリムの友人で私とも親友になってくれたアイラに話を聞かせたりした。アイラは病気は治っても過度な動きは禁止されていたのでいつも私達の話を聞いては「私も行きたかった~」とぶす~と口の中を膨らませていた。そんな私達3人は互いが好き者同士でアイラもクリムの事が好きで私の事も好き、私もクリムの事も好きだしアイラの事も好きだったので私達2人でクリムに求婚しクリムは苦笑いをしながら私達の手を取ってくれて3人で楽しい家族を作ろうと決めた。


 しかし、その夢も後の大戦でクリムが多大な功績と国からの推薦状を持って王家と少し繋がりがある伯爵家の三女がクリムの妻へと来た。私とアイラは仲良くしようとしたが爵位が上の伯爵家の三女は私達とは仲良くしようとせずベッタリとクリムへとひっ付くようになり、楽しい家族の夢は崩れ落ちた。アイラが子供作って数年後、私にも子供ができクリムと一緒に喜んでいるとアイラは不治の病に罹り亡くなった。残されたアイラの子供のアリエスとエレミラには「今日から私が貴女達のお母さんだから、私の事は「母親」と思ってね。そして、生まれてくる子供にはお姉ちゃんとして立派になってね」と言った。「うん、お母さん、私達頑張る」とまだアイラが亡くなって間もないのに2人の双子の姉妹は強くうなずいた。


(強い心は、アイラ譲りかしら)


 私はそんな事を思いながら2人の少女を抱き寄せ頭を撫でた。少女達も泣きながら私へ抱きついた。


★☆★


 私は今クリフを抱っこし自分の薬指に付けられている指輪を見て昔の事を思い出していた。


「あの頃はクリムとアイラと3人で楽しかったな…でも、クリムもあちらの方とはうまくやってるらしいしこれで良かったのかしら」


 私は腕の中で眠る可愛いクリフを見ながらぽつりとそう呟き「私は私の家族を守る」と自分の中で覚悟を決めてクリフをベッドの上に置きテーラと共に部屋を出て行った。

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