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第1話


 17年目の夏、夏休みに入り一週間が過ぎた。俺、(とどろき) 士郎(しろう)には友達と呼べる存在が居ない。部屋に籠り毎日ネトゲをしていた。そして今日、丁度1年前にリリースされ俺が高校に入ってドップリはまっているネトゲの大型アップデート終了情報が流れて来た。


「な、なんじゃ! この、くそカッコいい武器はッ!」


 情報の中に【一周年を記念して、新たにガチャを更新しました。今回の目玉~】と幾つかの武器や防具の名前が書いてあったが、その中でも目を引いたのが【魔剣デュランダル】と名付けられた剣で、俺の好みにドンピシャの見た目だった。「絶対に手に入れてやるぞッ!」と俺は思い、直ぐにシャワーを浴び洗濯されて綺麗になっている服に着替え、財布の中に諭吉さんを5枚入れて家から飛び出した。


「こんな事なら喧嘩なんかでバイト辞めるんじゃなかった。5人であの剣を迎え入れるのは厳しいからな…いや、愛さえあれば来てくれるッ!」


 俺はそんな事を恥ずかしげもなく道端で叫び、早く家に帰りガチャを引くために急いでコンビニへと向かった。家から10分の所にあるコンビニに来た俺はカードとジュース、ポテチを籠の中に入れ「そう言えば、新刊が出てたはずだな」と自分が読んでいるマンガの最新刊を探す為本コーナーに行くと、出入り口の方から発砲音が聞こえた。


「中に居る奴等、全員動くんじゃねえぞ! おい、そこの店員、この袋の中に金を入れろッ!」


 入って来たのはマスクを付け右手に拳銃、左手に袋を持った見るからに強盗のおっさんだった。俺は即座に死角の棚に隠れ様子をうかがっていると、見つかっていた他の客は一か所に集められ店員は強盗の指示に従い金を入れていた。


「おい、もたもたしてんじゃねぇよ!」


「は、はぃぃ!」


 泣きながら金を入れていた店員に強盗は怒り叫ぶと、店員はもっと泣きながら金を入れていた。俺は正義感からかそれとも自分に酔っていたのか、偶々隠れていた棚にあった酒瓶を片手に強盗に気づかれないように真後ろまで近づくと、強盗の頭を酒瓶で殴った。


「がっ!」


 強盗は酒瓶で殴られた事によりフラフラとして棚に倒れた。俺が直ぐに店員に「警察を呼べ」と言うと、店員は泣きながら警察に電話していた。

 その間俺は他の客に怪我が無いのを確認をすると、強盗から拳銃を取りあげようとした、その瞬間、強盗の目が開き俺の心臓がめがけて発砲してきた。


「うっ!」


「ヘ、調子に、乗んなよ若造、さっさと、銃を、取るんだった、な…」


「クソが、ぜってえ手前だけは捕まえてやる…」


 俺はそう言いながら自分の体をなんとか動かし強盗へ圧し掛かった。これでも俺はぽっちゃりさんだからな、おっさん程度押しつぶしてやる。そんな事を思いながら倒れた。最後の記憶は、店員が呼んだ警察官に「君は凄く勇敢な青年だな」と言われた事だった。

★☆★


「……えっと、俺って死にましたよね?」


「うむ、死んだ。そして、この神界へときたのじゃ」


 そう目の前で言ったのは、目が覚めた俺に行き成り「儂は神じゃ」と言った爺さんだ。


「まあ、トラックに轢かれて意識失うよりは、拳銃で撃たれて最後に警察官の顔を見て意識を失いましたから、死んだ事は理解できるのですが」


「うむ、士郎君余り驚かないのう今迄来た者達は「神様ッ!」とか叫んで驚いていたぞ?」


「内心驚いてはいますよ? でも、ほら今の現代ライトノベルの普及で異世界転生物とか良く出回っていて、俺もそう言うのには興味を持っていましたから余り…」


「そう言えば、そうじゃのう。ここ数年間でライトノベルも進化したのは分かるが、それでもじゃよ…」


 と少し落ち込んでいる神様に「俺の心とか読まないんですか? 俺、結構驚いていますよ?」と言うと「顔に出てないから、それ程じゃ無いじゃろう。それに心を読むのは昔は出来たが、今は神界ルールで禁止されておるんじゃよ」と言われた。神界にもルールがあるんだなと、俺はそっちに神様より驚いてしまい、さらに神様は落ち込んでしまった。


「まあ、なんじゃ、そこまで分かっている士郎君なら分かると思うが、士郎君には異世界に転生して貰う」


「異世界ですか、こういう場合って天界に行くとか言わないんですか?」


「ふつうは言うぞ? しかしのう士郎君の場合天界には逆に行けないんじゃよ」


「行けないって俺ってそんな悪い事したことありませんよ? 確かに数日学校を無断で休んだり嫌いなピーマンを残したことはありますが」


「いや、そう言う訳じゃないんじゃよ。士郎君の場合、逆に良い事をしたせいで天界に行けないんじゃ」


「それってどういう事なんですか?」


 爺さんは説明をしてくれた。転生や天界に行く場合、人は生きている内に稼いだ【善行ポイント】(前世ポイント)とも言う生前の行いの良し悪しをポイント化しそれに応じて天界や地獄を選ぶらしい。また、偶にポイントを貯め、転生と言って直ぐに異世界に行く者も居ると聞かされた。


「えっと、じゃあ俺はその【善行ポイント】というのがあり過ぎるせいで、天界も地獄も選べず転生しか選べないんですか?」


「うむ、すまんのうまさかこんな量を生きている内に稼ぐ者が現れるとは思わなかったじゃ」


「でも、神様俺そんなに良い事とかしたことありませんよ? 自分で言うのも変ですが余り人と関わろうとしませんでしたから」


「うむ、確かに士郎君は昨日までは【善行ポイント:260】と言う数値じゃったが、今日だけで数値の上限である10万まで一気に達成してしまったんじゃ」


「今日だけで、ですか?」


 今日した事と言えば強盗を命と引き換えに捕まえたくらいだけど…それだったら、今までにも何人も強盗を捕まえた人が居るからその人達も善行ポイントが上限に達してるんじゃないのか?


「士郎君の顔からして「強盗を捕まえただけ?」と考えているじゃろう。しかしのう、士郎君が捕まえた強盗は後に世界を脅かす犯罪者になる男じゃったんじゃ」


「えっ? って事は、俺って未来を変えたんですか?」


「うむ、時々そういう人間が現れたりはするが、そう言った者達でも、今迄は小さい物事を少し変えたりする程度じゃったんじゃが」


 そう言われた俺は神界に来て初めて盛大に驚いた。だって、自分の行いで未来が改変するなんて思ってもいないことだ。それも世界規模で起こる事を……

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