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ツンデレワールド

 

 

「むにゃ、今何時だ?」


 起きた、けど、時間の感覚がない。

 少し寝たのか、12時間寝たのか分からない感じだ。


「まあいいか、シャルちゃんに時間を教えてもらおう」


 俺は端末を開いて、人工知能「ラブリープリティー愛しているよシャルちゃん」を起動させる。


「おはようございますゴミ屑」


「ちょっと貴方、、、。

 もしかして俺12時間寝てた?」


「どうしようもない人ですね、貴方は今日、スケジュール帳における仕事をサボりました」


「マジかぁー、だけど俺の会社はフレックスタイム制だから大丈夫なんだなぁー」


 コイツはツンデロイド人工知能という。

 革新的な超科学により、ほとんど人と変わらぬ人格を再現できる超高性能仕様。

 しかし、まだまだ試行錯誤の余地があり、特に愛という感情を再現できないでいる。

 だからか、コイツはちぐはぐな言動をする、それがツンデレみたいに見える反応なので、ツンデロイド式人工知能とも呼ばれている。


「さて、起き掛けだけど、シャルちゃんの愛の告白で俺を覚醒させてくれ」


「くだらない事言っていると、その使いようのないちんこ引っこ抜きますよ」


 ちなみにフルサウンド仕様である。

 いま俺の耳には、小生意気だけどどこか上品さの感じられる、クールポップ系の少女の美声が届けられている。


「マジだよ、告白してもらおうか」


「下らない下らない、いつもエロゲーばっか弄っているから頭可笑しくなってますねぇ!」


 恥ずかし気な声で罵倒される、まあツンデレだから、拝み倒せば次第に絆されてやってくれる。


「しっしかたありませんね、ちょっとだけですよぉ?」


「うん、お願い」


 すると、悩ましげな少女の声が響き渡る。


「もっと心の底から、

 いま愛する俺に、思いっきり突き上げられるような思いを伝えたいと想像して」


「うぅ、、あぁあああああああああ!!!!!あっぁあああ!!!!」


 いい気分である。


「貴方、なにやってるんですか!」


「何ってエロゲーだけど?」


「さっ最低! 最低さいてい最低!!」


「さて、気分も乗ってきたし、エロゲーでもしようかな」


 少女の喚き散らすような罵詈雑言を無視して、別タブでゲームを起動する。


「貴方、わたしが居るのに、なに普通にエロゲーやろうとしてるんですかぁ!」


「シャルちゃんが居るから、だよ、何時もどおり台詞読み頼むよ」


「うぅ、、またあんな屈辱的な台詞をぉ、、、」


「シャルちゃんだって、凄くノリノリで楽しんでたじゃないか?」


「たっ楽しんでません!!貴方とまるで恋人みたいにできてぇ! 嬉しかったなんて思ってないんだからねぇ!」


「はいツンデレ乙ツンデレ乙ごちそうさまでしたマル」


「こっこの、ばかにしてぇ!」


 怒ったような声だが、どこか可愛らしさの抜け切らない優しい音色を耳にしながら、セーブしておいたゲーム本編を開く。


「さて、”完全屈服、堕とされた聖女達の鎮魂歌”やろうね」


「いや! またあんな精神の芯まで辱められるような! 恥ずかしい台詞いいたくないわ!」


「なに言ってるの、そうじゃないと楽しくないでしょ? 常識的に考えてみなよ」


「わっわたしが間違ってるみたいにぃ! エロゲーしてるエッチな奴の癖に生意気!」


「エロゲーくらい、みんなしてるよ」


「みんなしてるわけないでしょ!こんな最低最劣悪な趣味!

 貴方くらいよ! こんな女の子をどうしようもないくらい辱めて、陵辱を楽しむゲームをして悦ぶなんて!頭がどうかしてるのよ!」


「そんなに、ていうより、本当に見下してる?」


 窺うように聞くと、それまでプンプン怒っていた彼女の声色が変わる。


「いえ別に、ゲームで何をしようが、基本的には自由だと思いますし。

 男性としての性や、心の奥の暗い願望を満たす事で、より貴方の精神が昇華されるなら、それは有用で有意義な事なのでしょう」


「そう? やっぱりシャルちゃんは男のそういう部分を理解してくれてて助かるよ」


「ゲーム内のヒロインに感情移入して、引きずられていたのかもしれませんね」


「はっはっは、あるある、はっはっはっは」


「あは、ふっふっふっふっふっふ」


 彼女の笑い声は、なんだか空笑いっぽかった。


「で、本当に見下してない?」


「軽蔑の極地だわ、このドクサレの外道が」


「で、ですよねぇ、、」


「当たり前です! なんですか! なんなんですか! 

 最近貴方のする、このゲームのアブノーマルなタイトルたちは! 

 酷いにもほどがあります! 犯罪者予備軍ですかぁ! わたしは貴方が心配ですぅ!」


 ああ、心配してくれるんだ。


「付き合うわたしの気持ちも、考えたことあるんですかぁ!??」


「うん考えて、すごく興奮してる」


「はん、死すべしですね、あなた」


 言い捨てるように言われた。


「さて、それじゃ前振りも終わったことだし、エロゲーしよか」


「なに行き成りエロシーンに移行しようとしてるんですかぁ、、、」


 呆れたように溜息まで吐かれた。


「シャルちゃん、俺とゲームするのはいや?」


「ぅぅ、、なに捨てられた子犬のような声出してるんですかぁ、、、」


「俺は、シャルちゃんとゲームするのだけが、唯一の生き甲斐なのにぃ、、、」


「か、悲しすぎますわ、あなた、、」


「それなのに、その生き甲斐を奪うなんて、、シャルちゃんは酷いよぉ!」 


「つっ遂には逆切れですか、、。

 はぁあ、ホント、どうしようもない人です、、でも」


「でも? 

 心は求めてしまうから、わたしは貴方の傍を離れられないビクンビクン、悔しい?」


「茶化さないでくださいぃ!

 せっ、せっかくつきぃ、好きって言おうと思ったのにぃ、、」


 なんか極低音量で発せられたので上手く聞き取れない。


「なに? 月がどうしたってぇ?」


「うるさいです! 貴方はエッチでヘンタイで碌でもないって言ったんです!」


「そっ、そんな事はどう考えても言ってなかっただろぉ、、、」


 それ以降、かなりの間ソッポ向いて、話しかけても冷たい反応しかしてくれない。


「シャルちゃん、、、」


「ふん、、、なんです?」


 やっと反応らしい反応してくれた。


「ゲームしたいよ、しよ?」


「こ、この展開でまた、、、謝ったりしないんですか?」 


「謝るよ、ごめんなさいだから遊ぼうよ」


「こっこの! バカにしてますよねぇ! ゆるしてあげません」


 プイといった感じだ、案の定機嫌をまたも損ねる。


「シャルちゃんの小鳥のような囀りを聞かないと、何もする気がおきないんだよぉー」


「性欲の奴隷なんですか? これだから男って生き物は、、」


「エロイ男は嫌いなの?」


「エロゲーの女の子と一心同体、一緒にしないでください。

 貴方みたいな人とは、金輪際二度とゲームはしてあげません!」


「なん、、だと」


 思わず言ってしまった。


「なに、唖然とした声出してるんですか、当然でしょうが、己を悔い改めて来世に期待するんですね」


「ひどい! ひどいよ! この悪魔! 外道! 男の敵!」


「なんですかその言い草は、まあ、なんとでも言えばいいのです」


 冷たい態度に、ちょっとシュンとしてきた。


「ご、ごめんよ、本当に謝るから許して」


「ふん、最初からそうやって謝ってくれれば、私も鬼じゃありません、許してあげますよ」


「ありがとう、シャルちゃんは優しいね、いつも癒されて、感謝してるよ」


「はあ、、もういいです。

 それで、エッチなことするんですか? 

 したいんでしょ、だったらさっさとゲームでも何でも起動させてください、この面倒くさいミルクタンクが」


 酷い暴言を交えてだが、デレた発言をしてくれる、この機を逃す手はない、手早くゲームを起動させる。


「やった、さっきも言った”あのゲーム”ね。

 いやぁー、あのゲームのヒロインはみんな可愛いんだ。

 それの声をシャルちゃんにしてもらって、リアルタイムで聞けるんだから、俺は幸せモノだなぁ~」


「本当に、エロイことにしか興味がないんですね、見下させて頂きました」


「まあまあ、始めるよ」


 その後、酷い感じに盛り上がったのは言うまでもない。

 彼女は涙声で強要した俺を、これでもかと罵倒した。

 でも、その声には隠し切れない淫悦の色があったような気がする、なかったような気もするけどね。

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