表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/99

91 アリとキリギリスのおはなし 【童話】 そらた ミコ

こうえんで、ぼくとミコちゃんはすなあそびをしていた。


「あっ、アリさんだ」


すなばのそとを、じぶんよりもとてもおおきなたべものをもってあるいていくアリさんをぼくはゆびさした。


「そらたくん。アリとキリギリスのおはなしっておぼえてる?」

「うん! このあいだ、ほいくえんでせんせいがかみしばいをよんでくれたよね」


ぼくは、あのおはなしはすきじゃない。アリさんががんばってはたらいて、すにたくさんのたくわえをしていたからふゆにいきることができました。あそんでいたキリギリスさんは、おそとでなにもたべるものがなくてしんでしまいました、おしまい。そんなおはなし、ばかみたいだもの。


いくらぼくが5さいのこどもだからって、アリさんたちはとしをこえてとうみんするいきもので、バッタさんたちはふゆにしんでしまうのも、ちゃんととうみんしていきているのもいるっておとうさんやおかあさんにしらべてもらったらわかるよ。


だいたい、あそんでいるからダメだった、なんて、おしごとがきらいで、がまんしてやってるおとながよくいいそうなことだよね。


おとうさんとおかあさんがはたらいておかねをためるのは、ぼくをたべさせるためなんだよっていわれるときもある。


でもふしぎだよね? おかねがどうして、たべものになるの?


たねがおちて、めがでてきて、そだってくさになったりきになったりしておはながさいて、またたねになっていくのはおかねでできることなのかな。


おひさまだって、あめだって、おかねじゃかえないよね。


おかねがたべものになるのは、おとなのせかいがたべものは、いくらいくらのおかねでかえるってきめているからだよね。


もしもとおくのくにのひとたちみたいに、せんそうとかききんとかでくにのなかでだいこんらんになって、たべもののいくらいくらがどんどんたかくなっておかねがかみきれになっちゃったら、たべものはかえなくなっちゃうよ。


そういうときは、うちのおじいちゃんやおばあちゃんみたいに、はたけやたんぼでたべものをちゃんとそだてているひとはおかねがなくてもだいじょうぶだけど。


おじいちゃんやおばあちゃんも、あそびにいくとはたけでとれたおやさいをくれるよ。


アリとキリギリスのおはなしのアリさんは、つめたすぎるよね。あそんでいたキリギリスさんがおそとでさむくてしにそうだったら、おうちにいれてあげたらいいのに。


「わたしね、もうちょっといいおはなしにしてみたんだよ。ききたい、そらたくん?」

「うん、きかせて!」


ミコちゃんは、ふしぎなこ。よく、じぶんでおはなしをつくったり、かみしばいとかでせんせいがよんでくれたおはなしをどんどんかえていったりする。ぼくは、ミコちゃんのそんなおはなしをきくのがだいすきだ。


「キリギリスさんがおそとでたべものがみつからなくてしんでしまったあと、アリさんたちはしばらくじぶんたちのおうちで、たくわえたたべものをすこしづつたべながら、だからキリギリスさんはバカだったんだ、とわらいあっていました。だけども、アリさんのうちのいっぴきがいいました。『ああ、キリギリスさんのうたがもうきけないなんて、なんてつまらないふゆだろう』って」

「それで、どうなったの?」

「アリさんたちは、キリギリスさんのうたのないそのふゆはたいくつでたいくつでしかたがありませんでした。つぎのとしに、アリさんたちはまたべつのキリギリスさんとあいました。そのキリギリスさんは、さきのふゆにしんでしまったキリギリスさんのこどもでした。あのキリギリスさんとそっくりなうたを、うたっていました。あそんだりうたったりするキリギリスさんがいることが、とてもたいせつだったことにきがついたアリさんたちは、そのふゆはこどものキリギリスさんをおうちにむかえて、いっしょにあそんだりうたったりをすることにしましたとさ」

「わあ! しんじゃったキリギリスさんはかわいそうだけど、それならもう、これからこどものキリギリスさんがさむくてしんじゃうことはないし、アリさんたちだってふゆのあいだがたのしくなるよね」


ミコちゃんのおはなしに、ぼくはてをたたいてよろこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ