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88 民泊冒険者ギルド ~結び 冒険者アミルとナミのパーティ~ 【ローファンタジー】

「冒険者ギルド 〇〇村」の場所は山の中だが、この地域は山と海とが比較的近い。海のそばにも「ギルド支部」があり、地域通貨を使って短期の寝泊りが可能だった。


「オイチャーン! 仕事、ある?」


少年アミルが、ギルドの受付にやって来て尋ねた。ここの受付は、年配の男性だ。


「あるよ! うちでは『海竜のうろこあつめ』ならいつでもやってる。まあ、海岸に流れ着いたゴミ集めなんだが、とにかく人手が必要でね。ひとりじゃなくて、誰かと組んでもらいたい」

「誰かとイッショ?」

「……あそこにいる冒険者はどうだ? ちょうど〇〇村のギルドから、やって来たところらしい」


アミルがギルドの食堂兼居酒屋を見ると、20代半ばくらいの黒髪の女性がいた。先日冒険者になったばかりのナミだ。


「コニチハ!」

「こんにちは」


ナミはニコッと笑った。


「オネエサン、イッショに『海竜のうろこあつめ』やりませんか」

「いいよ! わたしもちょうど、仲間を探していたところ」

「キマッタね。行こう!」

「準備は、ゴミ袋と軍手と、トングと……」


ギルドの受付の男性にそれらを用意してもらい、ふたりはパーティを組んで海岸へと仲良く出て行った。


「冒険者ギルド 〇〇村」の仕組みは急速に日本の中でも、世界の各地でも認知され、急速にあちこちで民泊冒険者ギルド支部が発足しつつある。


まだ新型コロナウイルスの影響は強く、政変の起きたA国からのアミルたちや、都会で仕事を無くしたナミのような避難者たちが冒険者になることが多いが、そのうち冒険者ギルドを渡っていくことを夢見てやって来るひとびとも増えるかもしれない。


それは、都会のように定時やシフトでもって決められた時間に仕事をするやり方とはまったく違うが、それぞれの地域で必要なときにやって来てくれる冒険者が増えることは、決してマイナスにはならないだろう。


荒れた山や海岸の管理、過疎地の住人の安否確認や、買い物代行か移動販売の実施。季節ごとの農林水産業の軽作業による手伝い、電球の取り換えのようなちょっとした困りごとの解決。

ギルド支部からギルド支部へと、渡り歩くプロの冒険者たちが増えれば、この日本ですでに村が消滅して空き家と草ぼうぼうになったところも、ギルド支部として復活をすることがあるのかもしれない。


子どもたちが将来の夢の記入欄に「冒険者」と書く。

頭の固い先生には、そのロマンは分からないかもしれないが、そんな職業が広がって行けば「人生はとりあえず冒険者になればなんとかなる」となって、生きやすくなっていくだろう。

冒険者ギルドや支部の運営者たちはそんな将来を描いて冒険者たちに生活の場を渡しているのかもしれない。

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