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78 学校の廊下で 【ヒューマンドラマ】 美々花 里実 友佳子

里実さとみはドキッとした。教室の扉の向こう、廊下で美々みみかと誰かが話している。モデル並みに可愛く、オールラウンドガールである美々花とちょっと前までずっと一緒にいたクラスメイトだ。


名前は友佳子ゆかこで、たしか里実と美々花が親友どうしになっていつも一緒にいるようになってからは、ときどきふたりを遠巻きに見ていた。


「……どうして、あんな、いつもオドオドしてるような地味な子がいいの?」


友佳子のことばに、里実はきゅっと心臓がしめつけられるような気がした。


「分かってないなあ、友佳子ちゃん。わたし、友佳子ちゃんのそういうところがヤダって思ってたんだよ」


美々花は、はっきりと友佳子に告げた。


「友佳子ちゃんはさ、わたしがオール5を取って、部活のバスケットボールも強いってところを尊敬して、今までついてきてくれてたんだよね」

「うん。それの、なにがいけないの?」


友佳子の声は、拒絶を示されても変わりがない。


「だったら、わたしがもしケガをしてテストを受けられなくなって0点になったら? バスケットボールの試合も出られなくなったら? 当然、わたしから離れていくでしょ」

「そ、そんなこと」

「ううん。友佳子ちゃんだけじゃなくて。わたしの『努力』だけを見てついてきてくれるひとって、そんなものだから別にいいんだけどさ」


美々花は軽く首を振る。


「里実ちゃんは、そうじゃないっていうの?」


友佳子はきつめな顔で問いかけた。


「うん。わたしは里実ちゃんが大好き」

「絵ばっかり描いているあんな暗い子、美々花にはぜったい似合わないよ」

「あー。そういうことまだ言うなら、友佳子ちゃんはもういいよ」


美々花は怒りをはっきりと顔に出した。


「絶交、ってまでは言わないけど。そんなことを言い続けて、まだ分からない友佳子はバイバイ」


美々花は青ざめた顔の少女を呼び捨てにし、手を軽く振って離れた。


ガラリと扉を開けて教室に入ってきた美々花と、里実の目が合う。


「あっ……美々花ちゃん」

「ふふ、里実ちゃん。聞いてたと思った。だからわたし、爆発しちゃった」


てへへ、と美々花が照れくさそうに笑う。


「友佳子ちゃんに、ちょっと言い過ぎかも」

「ちょっとやそっとじゃ分かんない子は、そう言うしかなかったんだよ。里実ちゃんが聞いてること分かってて、わざとああいうことを言う子なんて、わたし無理無理」

「でも……ありがと、美々花ちゃん」

「ううん。これからも、里実ちゃんとは一緒にいたいもん。あんな子の言葉、まともにしちゃダメだからね、里実ちゃん」

「うん」


ふたりは教室の中で、小さく笑い合った。

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