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7 春のひととき【ヒューマンドラマ】 花実 リッキー(犬)

 春がやってきた。花実はなみは自然公園のみずみずしい空気を、勢いよく吸い込んだ。

 日差しが穏やかに町の自然公園を照らす。

 土は数々の花にいろどられ、華やかだ。

「リッキー、行くよー」

 花実はリードを引いた。若い大型のゴールデンレトリバーが付いてくる。

 散歩だ。この大きな自然公園を、花実もリッキーもこよなく愛している。

 リッキーは足の裏が草でくすぐったいのか、慎重に足を抜き差ししていた。

 海外なら、リードを外してリッキーとボール遊びに興じるのもいいだろうが、ここは日本だ。

 最近、ゴールデンレトリバーに子どもがかみ殺される事件も起きていて、放し飼いにするのは難しかった。

「ごめんね。リッキー。ほんとはうんと遊ばせてあげたいんだけど」

 花実はリッキーを撫でた。

 リッキーは行儀よくお座りして、気持ちよさそうに撫でられていた。

 ゴールデンレトリバーは元々猟犬だ。ひとなつっこいので番犬には不向きだが、ひとに忠実なことと、穏やかな性格であることが盲導犬などにこの犬種が多い要因でもある。

 かつては水鳥を捕まえるために水につかることも多かったため、今でも水遊びが大好きだ。

「そうだ! 川に行こっか」

 花実はパッと表情を明るくした。この自然公園には小さな川がある。夏には子どもたちがはしゃぎ回る絶好の遊び場だ。この季節なら、まだ子どもたちもいないだろう。

「走ろう、リッキー!」

 花実は走り出した。リッキーも並走する。

 水場につくと、息が切れていた。

「行っといで、リッキー!」

 花実はリードを伸ばす。

 リッキーは勢いよく川に飛び込んだ。水しぶきが上がった。

 パシャパシャと元気に泳ぐと、リッキーは川辺に戻ってきた。

 プルプルプル! 体を震わせて水滴をはじく。

「わ、ちょっとリッキー!」

 花実は苦笑した。リッキーのそばにいたので、水がもろに花実にもかかった。

「冷たーい!」

 しかし、春の風はもう暖かく、水滴がかかっても、そう苦にはならなかった。


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