63 お年玉の使い道 【社会派ヒューマンドラマ】 陽 葉月
陽と葉月は、いつもの公園にいた。年明けにふさわしく、昼間でもピリリととした寒さが体に沁みる。ふたりは防寒の装いをしっかりして、外での話を楽しんでいた。
「明けましておめでとうな、葉月」
「うん、陽も明けましておめでとう」
「お年玉はちゃんともらえたか?」
「うん。といっても、みんなで集まることは今年はなくて、うちは年末のおもちを近所に住んでるおばあちゃんのところでみんながもらうんだけど、そのときにお年玉だけおじさんやおばさんが置いていってくれたんだよ!」
「そうか、良かったな。俺んとこは、大掃除のときに、うっかりゲームにハマっちまってて、母ちゃんをカンカンに怒らせちまってな。危うくお年玉がぜんぶ没収になるとこだったぜ」
「あはは、でもちゃんとくれたんだ」
「ああ。気づいたあとは、ちゃんと掃除を手伝ったからな!」
「あのさ、陽。ぼく、お年玉をすこし、何かに寄付してみようかなって思うんだけど」
葉月は顔を曇らせた。
「どうした? 年明け早々、マジメじゃねえか」
「うん……新聞を読んでたらさ、日本でも、コロナのせいで仕事が無くなって苦しんで居るひとがいるってことを知って。それに、世界でも紛争とか、戦争の終わってないところもだけど、地域の農業がうまくいかなくてただでさえ食料が手に入らないところでは飢きんも起きそうだって。ぼく、こんなふうにのんびりお正月を迎えていていいのかなって」
「まあなあ」
「できるなら、ぜんぶの苦しむひとの力になりたいんだけど、ぼくのお年玉じゃ、ぜんぶ寄付しても無理で」
「確かに、俺らのお年玉じゃあ、まるっと合わせたって、そうした苦しいひとたちの何人を助けられるんだ、って話だよな」
「だから、せめて少しだけでも、って思って。いろんな寄付のしかたがあるし、いろんな支援の活動をしている団体があって、どこに贈ったらいいのか迷ってるんだ」
「葉月が気にしてる、世界の食糧支援なら、このあいだノーベル平和賞を取ったWFP(国際連合世界食糧計画)がいいんじゃね? 寄付っていうと、月額の引き落としにしたり、その都度お金を贈るにしても、記名で名前とか住所とかを明かさなくちゃならない支援方法と、匿名でこっそり贈る方法があるな」
「そうなんだ」
「まだ子どもの俺らでも気楽に出来るのは、匿名でいいんじゃねえか? WFPなら、ファミリーマートのFamiポートの端末で、1000円からの匿名寄付が出来るぞ」
「ありがと! じゃあ、それをやってみるよ、陽」
「あとな、葉月。寄付もすごく大切なことだと思うけど、エシカルなお金の使い方、っていうのをいつも気にかけてるといいかもしれない」
「エシカル?」
「英語で倫理的な、という意味なんだけどな。自分が使うお金が、安いからいいやって使うんじゃなくて、その払ったお金で相手の企業が社会的にどうふるまっているかとか、環境に対してどれくらい配慮しているかとか、気にしたり考えたりしながらお金を使うことを言うんだ。お金だって、寄付みたいに、しっかり調べて役に立つために、喜んでもらえる使い方をしてほしいと思ってるさ」
「そっかあ。もらったお年玉で、何かをきちんと調べて選んで買うってことでも、応援が出来るんだね」
「そういうことだ! もちろん、そのなかに自分が使って楽しいと思えることも含むぜ? 俺は、映画とか本とか美術とか、アート系が好きだからな。お年玉はそっち方面に使おうと思ってる」
「うーん。ぼくは、おいしいものが食べてみたいな。チーズとか、お菓子とか大好きだもん」
「チーズったって、いろんな地域の、いろんな作り方をしてるものがあるからな。ゆっくり、海外のだとか、北海道とか、じっくり調べて買うんだ。お菓子だってそうだぞ」
「うん。お年玉は大切に使うよ、陽!」
話がひと段落ついたふたりは、公園で持ってきたボールを使って遊び始めた。




