61 クリスマスのひみつ 【童話】 そらた ミコ
「だめよ、ことしのくりすますはおともだちをよべないの」
おかあさんがおこったときのような、それよりはちょっとこまったようなかおをして、ぼくにいった。
きょうはくりすますだ。おきたらちゃんとサンタさんからのぷれぜんとがとどいていた。きっとサンタさんはしんがたころなうぃるすのたいさくもしっかりして、ぼくらこどものところにおおいそがしできてくれたにちがいない。
ミコちゃんは、サンタさんからのぷれぜんと、ちゃんともらえたかな。ぼくはほいくえんでなかよしのミコちゃんとあそびたかったから、ミコちゃんのおうちへいくか、ぼくのうちにミコちゃんにきてもらうかしたかったんだけど。それをおかあさんにそうだんしたら、さっきのことばがかえってきたんだ。
「おかあさんのケチ!」
ぼくは、ぷいとおかあさんにせなかをむけた。ホットカーペットのうえで、サンタさんにもらったばかりのおもちゃであそぶことにした。おもちゃであそんでいたら、ぼくはだんだんとねむくなってきた。
「そらたくん!」
あれ? ぼくのうちのホットカーペットのうえに、いつのまにかミコちゃんがいた。
「あれ、ミコちゃん! いつあそびにきたの」
「いまさっきだよ。ねえそらたくん。きょうはね、てんしさんがとくべつにわたしたちとあそんでくれるんだって」
「てんし!?」
てんしって、せなかにはねがはえて、あたまにわっかがついてるひとのことだよね。おしゃれなクリスマスツリーには、ときどきちいさなおにんぎょうがかざってあるの、ぼくしってるよ。
「ミコちゃんは、きとかそらだけじゃなくて、てんしさんともおともだちなんだ!」
「うん。ほら、てんしさんをよぶよ? てんしさーん!」
ミコちゃんがおおきなこえでいうと、しゃんしゃんしゃん、とどこからかすずのおとがきこえて、ぼくのいえのかべをとおりぬけて、だれものっていないそりをひいたトナカイがやってきた。
そのトナカイは、ふつうじゃなくて、せなかにおおきなおおきなはねがはえていた。
「トナカイだ! てんしさんじゃ、ないよ」
「ううん、そらたくん。てんしさんたちはね、ほんとはいろーんなすがたかたちをしているんだよ。おはなのすがたのてんしさんもいるし、どうぶつさんや、しょくぶつさんのすがたをしたてんしさんもいる。はねとわっかのない、ふつうのひとみたいなてんしさんもいるの」
「へえ! しらなかったよ」
「トナカイのてんしさんは、そらをとべるそりをひいているでしょう。わたしたち、そりに乗れるのよ」
「えっ、ほんとうに!? わーい!」
すごくたのしそうだ! ことしはおうちからそとにでちゃダメ! っていわれることもあって、おうちでつまんないときもあったから、このそりにのってまちのそらをとべたなら、きっとわくわくするよね。
ぼくは、ミコちゃんといっしょにトナカイのてんしさんのうしろにあるそりにのった。
しゃんしゃんしゃん、とすずのおとをたてて、ぼくのおうちのかべをとおりぬけて、そりがしゅっぱつした。
きがついたら、ぼくはホットカーペットのうえにいた。さっきまでいっしょだったミコちゃんも、トナカイのすがたのてんしさんもいなかった。まちのうえをそりでとびまわってたはずなのに、どうしてここにいるんだろう?
「おかあさん、ミコちゃんとてんしさんは?」
「ミコちゃんは、今日はミコちゃんのおうちでしょ?」
「ちがうよ、あそびにきてくれたんだよ!」
ぼくがさっきまでそらをとんでいたのは、うそだったのかな!?
そうしたら、おかあさんのでんわが、なった。
「あ……ミコちゃんからよ、そらた」
「えっ、ほんとに!?」
ぼくはおかあさんからでんわをかりた。
「もしもし、そらたくん? さっきはたのしかったね!」
あっ、やっぱり! ぼくとミコちゃんは、さっきまでトナカイのてんしさんのそりにのってそらをとんでいたんだ!
「……おとなにはひみつだよ、そらたくん」
「うん、やくそくするよ、ミコちゃん」
ぼくはにっこりわらって、でんわのむこうのミコちゃんとゆびきりげんまんをした。
「めりーくりすます、ミコちゃん!」
「メリークリスマス、そらたくん!」




