6 プレミアム・フライデー【社会派ヒューマンドラマ】
聞きなれない、新しい言葉が出来た。プレミアム・フライデーという。
最近の働き方改善政策の一環で始まった、月末の金曜日は午後3時に仕事を終えるというものである。
「まったく、いいご身分だよ」
新聞記者の男は、人がごった返す、とある有名企業の社員食堂を見つめ、つぶやいた。
今日は特別にビール一杯100円らしい。にぎやかな歓声が聞こえてくる。
男にはプレミアム・フライデーの「プ」の字も関係ない。
休みたくとも、記事にしなければならないのが自分の仕事だ。
プレミアム・フライデーに限ったことでなく、新聞記事を書くために、いつでも取材OKとなるようにしている。
パシャパシャとカメラの音が響く。
自分と同じ記者たちの取材が隣でも行われているのだ。
(もしも、俺たちも金曜午後3時で終わるようにしたらどうだろうな)
ふっと男が目で笑う。
想像してみた。
ニュースの時間、午後3時になったとたんに、テレビ画面が真っ黒。新聞は夕刊が休み。
コンビニも、ほかの店も、工場も流通も皆、閉店・休業になるところを。
(今のままじゃ恵まれたやつらの特権が増えるだけだ。もしも、そうしてみんな休みになったら、案外、いつもの生活にありがたみが出て、面白いかもしれねえな)
思いついたことをメモにとめる。
プレミアム・フライデーからはじき出されたひとりとして、羨ましそうに記事の対象となるひとびとを見ると、気合を入れなおし、男は取材に向かうのだった。
最近のトレンドワード「プレミアム・フライデー」の話題に乗っかってみました。