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55 中学生の小説家、誕生 【ヒューマンドラマ】 陽 葉月

陽と葉月は、いつもの公園にいた。すこし興奮した様子で、陽は葉月に話し始めた。


「へっ、俺さ、とうとうなろうの作者デビューしたぜ」

「なろう? あの、コミカライズ化とかアニメ化したのが、バンバン出てるスゴイところでしょ」

「昔はそうでもなかったみたいだぜ。なにせ『小説家になろう』だからな。文章を書くのも初めて、ってひとが気軽に集まってワイワイやれるところだったみたいだ」

「へえ……」

「で、俺も小説書いて、一発当たらねえかなって思ってな」

「当たるといいねえ」


葉月は陽にのんびりと優しく微笑んだ。


「だけど、今までただ読むだけだったのが、作る側になるとガラッと世界の見え方が違うんだよな。俺は一流の作家になりたいって思ってる」

「一流かあ。うーん、すごく面白いものを書ければいいってこと?」

「まあな。むちゃくちゃ面白い、って思ってくれるひとがたくさんいれば、いいに越したことはない」

「それだけじゃダメなの?」

「本当に面白い作品ってのはさ。こう、凄みみたいなもんがあるんだよな。二流とか三流だな、って思う作品も、初心者が気軽に作ったもんがたくさんアップされるから、それこそものすごくたくさんあるし、俺だって底辺作家、つまり二流、三流ですらないわけだけど」

「底辺って、自分で言うのは何だか自虐的すぎない?」

「だけど、自分を一流だと思って、まったく面白くないのを書いてるのに自称すんのもみっともないし、そんなやつはほんとは二流、三流だろ? それよりは底辺って言ってるくらいが謙虚なのかもしれないぜ」

「なるほどねぇ」

「少なくとも、俺は今書いている俺の作品を最高だ、って思って書きたい。それで、次の作品もずっと面白いものを書いていきたい。だから、底辺って言って、上を向き続ける」

「うーん。上を向き続けるって、すごく大変そうだけど……陽ならきっとやれるよ」

「ありがとな。……一番最初にさ、読んでほしいと思ったのは葉月、お前なんだよ」

「え! ぼく、陽の作品の読者第一号?」

「……まあ、もうアップしちまったから、アクセス数っていう、誰が読んでくれたかは分からない読者の数はそれなりについてるけど、感想はまだひとつも無いからな。葉月が読んでくれたら心強いぜ」

「いいよ! ぼく陽の小説読むよ。……楽しみだな」

「まあ、感想をなろうで書くことも出来るけど、できりゃあ素直に読んでどうだったか、次に会ったら教えてくれれば助かる」

「うん。デビューおめでと、小説家さん」


葉月のねぎらいの言葉を聞き、陽はうれしそうに笑った。


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