48 いつまでも友だち 【ヒューマンドラマ】 美々花 里実
美々花と里実は、中学二年生。美々花はモデル並みに可愛くて、国、社、数、理、英の五教科の勉強も、スポーツも得意だ。
里実は、容姿も普通だし、勉強もスポーツもあまり得意ではなく、テストやスポーツの成績は、いつも中の下くらいだ。
美々花は里実といつも一緒にいてくれる。とてもありがたく思うけれど、自分の不出来さが誰かから比較されているような気がして、里実は美々花にいつも悪いと思っていた。
いつもの帰り、家も近い美々花と里実は同じ道を歩いて帰る。
今日は、つい里実の本音が出てしまった。学校にふたたび登校できるようになって初めてのテストの返却。美々花は成績優秀なことを各教科の先生に褒められていた。
「美々花ちゃん」
「なに? 里実ちゃん」
「ごめんね? ……私なんかが友だちで」
「なにそれ? 私なんかって」
「だって……五教科ぜんぶ赤点ギリギリなんだもん」
「ちょ……そんなことで悩んでるの? わたしは、里実ちゃんが好きだから一緒にいるんだよ。成績なんか関係ないよ」
「あるよ! 何でもできる美々花ちゃんには、分からないんだよ」
「ええ!? わたしが何でもできるって!? ちょっと待ってよ」
美々花はフウ、とあきれた顔を浮かべてため息をついた。
「里実ちゃん。今日の美術で習った絵、出して」
「え……?」
里実は恐る恐る、勉強用の荷物から、一枚の絵を取りだした。今、課題の風景画だ。
「はあ……いいなあ、里実ちゃんは。こんなにいい絵が描けるんだもん」
「ええ!? た、たいしたことないよ」
「そんなことないよ! 里実ちゃんは絵の才能がある。『わたしなんか』よりずっとね?」
里実の言った言葉を逆に使って、美々花はクスクスと笑いだした。
「そ、そんなふうに思ってくれてたんだ」と里実。
「里実ちゃん、勉強は確かに大切だけどさ、人生ってもっといろんな角度から見た方がいいと思う。世の中にはさ、わたしたちと同い年くらいで、学校に来なくても、ネットでお金を親より稼いでいる子だっているんだよ? あーあ、学校って何のために行くんだろうって思うとき、いつも里実ちゃんのことが浮かぶんだ」
美々花はにっこり笑った。
「わたしは、里実ちゃんとずっと友だちどうしでいたいって思ってるよ?」
「ほんとに……!?」
「うん。ずっと、ずっとねっ」
「……しぃな」
「ん?」
「うれしいな、美々花ちゃん。私も、ずっと友だちでいたい」
里実は勇気を出して、そのことを告げた。
「うん!」
美々花が最高の笑顔で返す。
二人は、長くなった夕方の帰り道を、仲良くゆっくりと歩いていった。