36 いじめ、やぁーめたっ!【ヒューマンドラマ】
ショウは困っていた。子どもながらに、みんなをまとめるナナコが、ひとりの女の子をグループからはじきだしたのだ。
「ルッちゃんをなかまにいれたらだめだよ、みんな!」
ナナコが威張ってそう告げると、同い年のみんながうなずいた。
「ショウも、ぜったいだからね!?」
ナナコが念を押す。しかし、ショウは頷かなかった。
そうしていると何も知らないルッちゃんが来た。みんなはぷいっとそっぽを向いた。
「あそぼ!」
ルッちゃんが手を振るが、みんなは何の反応も見せない。無視だ。子どものいじめではわりとポピュラーなものだろう。
「……ルッちゃん嫌い!」
ナナコが言うと。
「わたしも」
「うん、きらーい!」
子どもたちの残酷な声が後に続いた。
ショウはそれを見て、黙っていた。目から今にも涙がこぼれそうだ。
「うぇーん!」
泣きだしたのはルッちゃんではなく、ショウだった。
ナナコは当てが外れてびっくりした。泣かせるのはルッちゃんのはずだ。
「ショウ、どうして泣くの!?」
「いじめはいやだよ、こころがいたいもん。やめようよー」
ショウは大泣きを始めた。
「ショウくん!」
「……だよね、やめよー」
「やーめたぁ。つぎはわたしかもしれないっておもったら、わたしもイヤだったんだぁ」
子どもたちは口々にそう言って、改心した。
「ルッちゃん、ごめんね?」
ショウが謝る。
「ショウ! いじめたのはわたしじゃん」
ナナコはそう言ってから、ルッちゃんを見て、ぼそっと言った。
「……ごめん、ルッちゃん」
子どもたちの場に、平穏が戻ってきた。




