表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/99

30 母の留守中にカレーを作る【ヒューマンドラマ】 花実

 母さんが外国旅行に出かけた。同年代のお友だちとの、ポルトガル旅だそうだ。


「花実、お父さんとリッキーをよろしくね!」


 そう言って、ニコニコ笑って出て行った。


 ええ……仕事あるし、家事までやるの? 嫌だなあ……。


 わたしはそんなことを考えていたが、いざ母さんが出て行ってしまうと、諦めがついた。


 残された父さんと顔を合わせる。


「花実。父さんも食事くらい作るぞ!」

「本当!?」

「これでも、花実が生まれたころは母さんの代わりに料理くらいやっていたんだ」

「ええ!? それ何年前の話……!?」


 わたしはフウとため息をつく。


「いいよ、ごはんくらい作るって」


 父さんだって、まだ現役のサラリーマンだ。社会人になってまもないわたしより、たくさん仕事を抱えているはず。

 

「花実の料理が食べられるのか? 楽しみだな」


 やば! 自分でハードル上げちゃった!?


 さっそく今日のごはん、どうしよう……。


「じゃあさ、父さんはリッキーの散歩をお願いします」

「任せとけ」


 父さんが外出の支度を始める。


 さて、今日の料理! スマホで適当に調べて作っちゃおうっと。


「行ってくるからな」

「うん。ゆっくりでいいからねー」


 父さんを見送り、わたしはキッチンに立った。


 いきなり煮物系は絶対母さんの味にならないし、作り置きができるものってなると……。


 カレー? シチュー? 鍋?


 いやいや、さすがに鍋はもう暑いよね、と思い直す。


 白菜も、スーパーで高くなってくるころだし。


 カレーか……。


 子どもでも出来そうなメニューになるけど、わたしも仕事があるし、働き方改革が言われてるってことはあるけどまだまだ、全部の日が定時帰りになるなんてことは無い。


 よし。これならスマホのレシピすらいらない。さっそく作ろう!


 冷蔵庫を開ける。


 豚肉、ニンジン、玉ねぎ、じゃがいも。うん、あるある。


 戸棚の奥に使いさしのカレールー。あるある。


 わたしはカレールーの箱に書かれた作り方を見た。



 ・まず具材を一口サイズに切って、鍋に油を少々引き、それぞれに火が通るまで炒める。



 トントントン、と包丁で準備した。ざっと鍋に入れて、ガスコンロのツマミを回す。


 肉や野菜が、いい色になってきた。



 ・水を入れて、煮る。



 時間が空くので、火の番をしながら、スマホでSNSをいじる。何でも写真に上げる人もいるけど、わたしは基本、発信するより見る方の人。


 綺麗に加工されたアーティスティックな写真なんかを見ていると、すごいなあって思う。


 一度、自分でも写真を撮ってSNSに上げたこともあるんだけど、あっと言う間にスマホの使用ギガ数が上限に達しちゃって、やめた。


 毎日、たくさん写真を撮って上げてる人は、どれだけ通信量を使ってるんだろう?


 そんなことを考えていたら、鍋の中の具が煮えた。



・一度火を止めて、ルーを割り入れ、溶かす。


 

 ここからは、スマホを脇に置いて、ゆっくりとお玉を動かす。


 いい匂いがしてくる。



・弱火で少し煮込み、仕上げる。



 ハイ、できました! 初心者でも簡単に出来ておいしく、日持ちもするカレー! 最高だね!



「ただいまー。お、今日はカレーか」


 どことなくうれしそうな父さんの声。


「お帰りー! リッキーの散歩、ありがとう、父さん」


 わたしは二人分のカレーと、リッキーの分のドッグフードを用意した。


 うん。ここ二日三日はこれで何とかなるけど、母さんの旅行は一週間とちょっと。


 料理に、掃除に、洗濯。


 母さんがいないって大変だ。しばらく、いい花嫁修行になりそうだとわたしは思うことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ