3 みんな食堂【社会派ヒューマンドラマ】
昭和の時代に建てられたあばら家が、町の隅に建っている。ここがボランティアによる「食堂」に変わったのは最近のことだった。
はじめは、貧困家庭の子どもにあたたかい食事を世話するために作られたものだったが、最近はちょっと客層が違うひとの面倒も見るようになった。
単身で生活するサラリーマンの人たちである。
毎日仕事漬けで料理する時間がとれない、コンビニ飯では三日で飽きる+栄養素が偏る、などなど、あたたかくバランスの取れた食事を求めていたのは子どもだけではなかったのだ。
そこで、ボランティアたちは「みんな食堂」と名前を変えて、良質な栄養バランスのとれた食事を安く提供することにした。
夕方のはじめのころは子どもたちの利用が多く、時間が遅くなるにつれて単身のひとびとが通うようになった。
それで、良かったこともある。
子どもたちの勉強の手伝いを、時間の余裕がある単身者層が行うようになったのだ。
はじめは、小学生の勉強でも大変だった。今の小学生はけっこう難しい内容を教わっている。
仕事を終えた疲れた体で、それについていくだけでも大変だったが、ひとりで仕事終わりの時間を持て余すよりは充実していると、施設を利用する単身者にも好影響が出た。
この「みんな食堂」では、名前の通り、みんなが仲良しになる。
知らない子どもと大人が、近所の顔見知りになるきっかけになった。
子どもは無料、大人は一食だいたい300円。
多少、地域によって値段や方針が異なるところもあるが、寒い夜に、あたたかな食事を食べられるこのボランティアの仕組みは、日本の各地で徐々に広がりを見せているようだった。
「子ども食堂」は全国的な展開をしていますが、ひとりでコンビニご飯を食べている大人も入れてあげて、という思いのもとに、この作品を作りました。