24 朝にサラダを【現代恋愛】 犬養芳也 美貴
美貴はサラダを作り始めた。レタスをちぎってボウルの底に敷き、スライスしたたまねぎを上に乗せる。切ったきゅうりとトマトも添えて、最後に粉チーズを振りかける。シーザーサラダだ。
この間、恋人の「犬養芳也」と行った店で、サラダがメインの食事が出てきた。
美貴がその時頼んだのは、トーストと、大きなサラダボウルにたっぷりと入った野菜だった。
肉や魚が出てくるのは珍しくないが、サラダとなるとあまり見たことが無く、こんなチョイスもあるんだな、と美貴は学習した。
そうして、休日の朝。自分でも、作ってみようと思い立ち、すこし時間をかけてサラダを作った。
「おはよう、美貴ちゃん」
犬養芳也が寝ぼけ眼で寝室から出てくる。
「ヨシ君、おはよう! 朝ごはん食べる?」
美貴は上機嫌でトースターにパンをセットした。
「ありがとう」
犬養芳也はテーブル脇の椅子に腰かけた。
「この間行ったランチのお店には敵わないかもしれないけど」
チン、とトースターの音がしたのを聞いて、美貴はこんがりと焼けたパンを取りだす。
木製のテーブルに、ボウルに入ったサラダと、皿に置かれたトースト。その上に目玉焼きも乗せてみた。あとはコップに入った牛乳と、小さな容器にヨーグルト。
「さあ、召し上がれ」
「いただきます」
二人は手を合わせた。もぐもぐと食べ始める。
「いつもはこんなに手間をかけないんだよ! ひとりで食べる朝ごはんなんて、いつもは野菜ジュースとパン一枚くらいなの。朝にちゃんとしたサラダを食べるってことは、時間も手間もかかるから、サラダ記念日って実はけっこう贅沢なんだと思う」
「そっかー。おいしいよ、美貴ちゃん」
「そう言ってくれると、作ったかいがあった!」
美貴はとびきりの笑顔で応えた。




