22 桃と梨【現代恋愛】 美貴
美貴は桃と梨を買ってきた。先日の台風で贈答用の品物が傷ついたので、格安で売っていたからだ。
桃は10個くらいで1000円、梨は10個くらいで500円。安いと喜んで買った。買ったその日に両方ともさっそく皮をむいて食べてみたところ、桃はまだ固くてあまり甘くなかった。梨は、もう十分に熟れていて、ほっぺが落ちそうなくらい甘くておいしかった。
しかし、冷蔵庫に入りきらないので常温で置いておいたら、桃はどんどん柔らかくなり、甘い香りを放つようになった。梨に至っては表皮の一部が黒ずんできた。最近は贅沢なことにデザートとして両方出している。一人暮らしなのにデザートが二つもあると豪勢な気分になる。急いで食べないと悪くなってしまうからではあるが。
桃が本当においしくなった。最初はどの桃が食べごろなのか分からなかったけれど、香りをかぐことで分かるようになってきた。梨は黒ずんだところをできるだけ切って食べている。
数日経って、冷蔵庫が空いたので桃を全部入れた。梨も黒ずんだところがあるものを優先して入れた。これで一安心だ。
それでも食べきれない分は、彼氏の「犬養芳也」や友人を呼んでおすそ分けしよう。美貴はそう考えて、スマホを手に取った。




